タイプ
その他
プロジェクト
日付
2010/1/28

「政策懇談会 地方議会の改革 ニセ議会基本条例を斬る II」報告 

概要

2010年1月25日、日本財団ビル2階会議室にて「東京財団政策懇談会 地方議会の改革 ニセ議会基本条例を斬る」を開催いたしました。

全国から約300名の地方議会議員の参加がありました。

冒頭、東京財団会長の加藤秀樹から最近の地方議会を取り巻く環境や事業仕分けの意義と地方議会との関係について基調講演がありました。

続いて、木下敏之上席研究員から政策提言「市民参加と情報公開の仕組みをつくれ 地方議会改革のための議会基本条例『東京財団モデル』」の説明を行いました。引き続き、中尾修研究員より議会基本条例の分析結果について説明があり、福嶋浩彦上席研究員より理念的な背景について補足説明がありました。

当日の配布資料、政策提言「市民参加と情報公開の仕組みをつくれ 地方議会改革のための議会基本条例『東京財団モデル』」はこちらです。

(当日の様子を動画にて配信中です。詳しくはこちら )


木下敏之上席研究員の発言概要

いまだに様々なしがらみに切り込む“改革派”首長の出現を求めている市民が多いが、これからの地方自治は、議会が機関として、住民の意見を吸い上げ運営する時代とならなければなりません。“超人的なスーパーマン”や“水戸黄門”、“カリスマ”の登場をじっと待っていても、自らで街を創り上げる自治の力は強固になりません。

議会基本条例は議会運営のルールを明確し条例で示したものですが、2006年北海道栗山町が全国で初めて制定されて以来、60を超える自治体議会で制定されています。その中には、いくつか首を傾げる“ニセ”があるとの印象を受けて、研究を始めました。2009年3月末時点で制定された48の市町村議会の基本条例をベースに比較分析し、「東京財団モデル」として3つの必須条件を作成しました。そして、その条件を11月末時点で制定している68市町村議会の基本条例に当てはめて分析しました。条例の文言だけの分析ではなく、アンケートや電話ヒアリング、現地に出向いてのインタビューも実施いたしました。結果を一覧表に分かりやすくするために、◎・○・△と空欄で表記しております。研究会メンバー4名で侃々諤々の議論の結果です。厳しいとのご意見もありましょうし、逆に甘いとのご批判もあると思います。 

事業仕分けは全国的に有名になりましたが、鳩山内閣で実施する前から40くらいの自治体が既に実施しています。いくつかは定着していると言っても過言でない自治体もあります。この事業仕分けの手法が予算・決算のプロセスに定着すると、議会の存在意義をこれまで以上に問われることが予想されます。行政サービスを受けている市民や補助金を受けているNPOの代表者が、その使い勝手や効果を的確に指摘します。首長や行政はその意見に機敏に対応します。議会が主体的、積極的に住民と向き合わず、住民の意見を吸い上げる仕組みを構築しないと、市民の議会への不満、不信は増すことになります。


中尾修研究員の発言概要

分析結果をご覧いただくと厳しい評価と受け止められる議員がいるでしょうが、「地方議会の改革プロジェクト」の基本的な考え方、スタンスは、議会基本条例の広がりに期待しています。来年の統一地方選挙までには、200近い議会が議会基本条例を制定すると予想しています。地方議会改革のひとつのツールであり、きっかけとなっています。

今回の調査で改めて明らかになったことは、制定にこぎ着けた議会では、背景に危機感の共有が議員間にあったと考えております。議会不要論が一般市民から平然と突き付けられ、これまでの議会活動、議員活動の多くが否定され、ショックを受けた議員が少なくありません。

議会基本条例の制定に取り組むことは、地方自治法に明記されていない、地方独自の自治の発想が議会に及んできたと認識できます。これは積極的に応援していきたいと考えております。ただ、栗山町や三重県の議会基本条例のように、いわゆるフルセットの条例を制定しても適切な運営が実行できるとは限りません。フルセット議会基本条例とは、最高規範性、議決決定事件の追加、政策提言に関する資料要求、付属機関の設置が明記されている条例です。

現在、フルセットモデルではなく、市民との連携に特化した議会基本条例も見られます。これも歓迎しています。会津若松市議会がその代表的なモデルです。議会の政策サイクルの一環として市民との対話を組み込んでいます。市民との交流が盛んですから、今、最も勢いのある議会のひとつといえます。中核都市では大分市議会が活発です。市街に議員がのぼり旗を持って立って、ポケットティッシュを市民に配布して議会報告会の告知をしている姿には感銘しました。正に“チーム大分市議会”を体現した活動です。


福嶋浩彦上席研究員の発言概要

国の政治制度と地方の政治制度の違いを正確に理解しないと、議会基本条例についても深い理解や運営はできません。国会議員と地方議会議員は性格が異なります。国会議員は国民の代表です。日本国憲法第43条には、「両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する。」と国民の代表であることが明記されています。さらに、第51条では、「両議院の議員は、議院で行った演説、討論又は表決について、院外で責任を問はれない。」と国会議員に対し国会内での発言や議決について責任を追及できないとしています。すなわち、国会議員は、国民の代表者として任期中に自らの信念で発言や議決を行うことができるし、それで責任を追及されることはありあません。衆議院の解散権は内閣総理大臣にしか与えられていません。一方の地方議会の議員は異なります。市民は、住んでいる地方自治体の議会の解散請求ができ、有権者の過半数で解散できます。同様に、特定の議員の解職請求を行うことができます。地方議会の議員は責任を問われる存在です。まったく異なる制度で政治が運営されています。

地方の政治制度は“直接民主制をベースとした間接民主制”です。市民は直接権力行使できます。ですから、地方議会の議員は“市民の代表者”というよりは、“市民全体の公共的な意思の代行者”が適切な表現ではないでしょうか。地方議会の議員には、市民の合意をつくって、それに基づいて行動する責任があります。この点をよく認識して選挙で選ばれた議員としてリーダーシップを発揮しないといけません。地方自治体や地域の将来についての選択肢を提示し、その中から自らベストと思うものを主張し、議員や市民と一緒になり合意づくりに努力しなければなりません。必ず市民と対話しなければならない仕組みになっています。市民との対話なくして、議会での議決はないのです。地方の政治制度は市民参加を前提としています。ミニ国会、ミニ国会議員ではないことは認識してください。

地方自治体の議会は意思決定機関です。チェック機関ともいわれます。何に対してのチェックかと言えば、議会の議決、議会が決定したことをチェックする機関です。首長や行政の活動を単純にチェックするのではありません。議会が決定した事項を決定したとおりに執行しているかをチェックするのです。

議会は合議体でもあります。合議制で決定しますから、議論は当然です。その議論は市民から見える形で、わかる形で行われなければなりません。議会の構成員である議員が議論するツールとしての議会基本条例を活用してください。

総務省などで多様な自治制度を検討している報道がありました。本来の地方自治の理念から考えると、全国一律の制度は奇妙です。多様な制度があって当然です。しかし、現行の二元代表制下で市民と向き合うことができない議会が、議会中心主義の制度で上手くいくとは思えません。主権者である市民の権限強化に結びつく地方自治制度の改正でなければなりません。市民が議会としっかりと結びつくことが自治の基本です。


総括コメント:赤川

 一般市民の大きな期待を背負って当選し、いくつかの改革に着手した改革派首長の問題点のひとつに市民との距離が挙げられます。終日、役所で行政幹部からの報告だけを受けていると市民生活の実態が見えなくなり、斬新だった感覚が鈍ってきます。行政職員は優秀であればあるほど悪意なく常識的な報告や説明をするものです。行政のトップである首長がそれを鵜呑みにすると誤った自治体運営をする危険があります。この危機感は多くの首長が認識しており、積極的に市民との対話に取り組んでいます。住民対話集会やタウンミーティング、市政報告会などはその代表です。しかし、どんなに首長が積極的にとりくんでも時間的、物理的には限界があります。

一方、議会には十数人、数十人の議員がいます。マンパワーを発揮して市民の意見や関心を拾い上げることが可能です。ただ、議員の支持者や後援者だけと意見交換していても十分でありません。同様の考えをもった市民だけが集まると、その主張は強固になることはあっても、合意形成には阻害要因となりえます。多様な意見が存在している事実を現実と受け止め、市全体、市民全体を見据えた考察が求められます。そのためには、議員個人や会派主催の対話集会では十分な役割は果たせません。議会が意思決定機関として市民と向き合う会を開催する必要があります。

議会報告会の開催は、議員個人の資質とも関連します。議員には自らの支持者ではない市民と対話、説明、説得する能力が問われ始めます。持論を主張するだけではなく、合意に向けて建設的に議論する力が必須となります。そのような議員が多く集まり、忌憚なく議論する場が本来の議会の姿です。さらに申し上げると、地方議員には、政治家としての“良質な非常識”が期待されるのではないでしょうか。行政職員の法令解釈だけで満足し、それを前提とした形式的な議論はしない。地方議員は前例に染まった行政とはまったく違った切り口や考え方を提示することが期待されています。そのような議論は市民から見ていて楽しく、議会への信頼感を増加させます。それは自治体の独自性を発揮するうえでも重要となります。

(文責:赤川貴大)





「地方議会の改革 ニセ議会基本条例を斬る」動画レポート

※この動画は2010年1月25日に実施された実施された東京財団政策懇談会より一部抜粋してお届けしています。

[1]木下敏之上席研究員 (10:48)
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[3]中尾修研究員 (09:34)
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[2]福嶋浩彦上席研究員 (15:26)
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