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名古屋市議会基本条例制定研究会にて講演

March 18, 2010

概要

2010年2月22日、名古屋市会の議会基本条例制定研究会(座長:吉田隆一議長)の招きで、福嶋浩彦上席研究員と中尾修研究員、赤川で議会基本条例「東京財団モデル」について講演を行いました。これまで3名の学識経験者からのヒアリングとは異なり、政策シンクタンクの運営実態調査をベースにした講演は議員の関心を集めました。

まず、中尾修研究員から北海道栗山町で議会基本条例を制定した背景や経緯、現在の取り組みについて説明しました。その後、福嶋浩彦上席研究員から、国政と地方政治の制度的な違い、すなわち地方議会議員と国会議員の違いと地方自治体の意思決定機関である地方議会の役割を切り口に議会基本条例の必要性を説明しました。また、市民参加の重要性は市民の多数決で自治体運営を行うことを意味するのではなく、市長と議会はそれぞれの権限と責任において決めていくことの重要性も説明しました。その後、議員との意見交換が行われました。

中尾研究員発言概要

地方議会改革が全国的な注目を集めています。一般住民の議会や議員に対するイメージは、「4年に一度の選挙のときは色々な問題について語るが、その他の期間はほとんど姿を見せない」という批判的なものが多いです。これをどのように具体的に変えていくか。一般住民からの厳しい視線に応えるには、一つしかありません。議会がひとつの“カタマリ”として住民の前に登場することに尽きます。議会が自治を担う機関として住民の前に登場する。個々の議員がそれぞれ民意をつかみ、それらの民意を議員が議員だけで調整する、というような議会運営では通用しません。

議会は自らに都合の悪いこともディスクロージャーして説明しなければなりません。議会が住民の前に登場すると、住民からは議員報酬や政務調査費、議会開会日数、質疑内容、日常的な要望など多岐に及ぶ意見がでます。この住民からの意見や要望に一つひとつ丁寧に説明しなければ、信頼は回復できません。糾弾集会に化すことを危惧する声がありますが、心配無用ではないでしょうか。ひとりの政治家としての魅力は、首長さんより議員の方がある自治体が少なくありません。一部の市民にとって、二元代表制の制度が十分に理解されていないため、初回の議会報告会などでは意見や議論が混乱することが予想されます。しかし、自治の仕組みを説明すると議会や議員の役割の重要性が実感でき、議会への期待が高まります。

福嶋上席研究員発言概要

自治は市民の意識基づいて運営されることが求められています。これは常に住民アンケート調査を実施し、その結果どおりに実行することを意味することではありません。自治体運営には、リーダーシップが必要です。すごく重要な要素です。方向性を示したり、手法を示したり、課題を示したりすること、そしてそれに取り組むことでの市全体、市民全員の利益を訴える人物が必要です。さらに、その人物は市民の合意をつくることに力を注がなければなりません。自治体のリーダーは、市民の意思と全くことなる判断や決断をした場合、市民から直接責任を追及される立場にいます。自治体のリーダーは、市民の解職請求権に基づいて失職する可能性があります。市民の意識を適宜適切に踏まえたリーダーシップを発揮することが求められています。すなわち、市民と向かい合うことが前提でのリーダーシップです。

一方、国会議員は、仮に自身の信念だけでものごとを決定し実行しても、議員個人が責任を負う制度の中に存在していません。国会議員は国会内の発言や討議、評決の責任を国家外から問われないことが憲法51条に明記されています。この点が地方自治体の運営と国政の大きな違いのひとつです。この違いを理解し実践しなければ議会基本条例をはじめとする自治の制度のレベルが高まりません。他にもいくつか自治体運営と国政の違いはありますが、リーダーの責任のあり方について理解しなければ、地方議会、地方議会議員のあり方を正しく見直すことはできません。

<文責:赤川貴大>

    • 元東京財団研究員・政策プロデューサー
    • 赤川 貴大
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