タイプ
レポート
プロジェクト
日付
2010/8/19

地方議会の改革-2010年大阪夏の陣-

文責:東京財団研究員 中尾 修


加熱する議会改革議論
敵地大阪に乗り込んで三重県議会改革推進シンポジウムが8月2日開催された。全国から94議会565人の参加があった。

民主党が掲げる「地域主権」改革の実現に向け、地方議会の仕組みに対する議論が活発になってきた。現行の地方自治制度では首長と議会がそれぞれ住民の直接選挙で選ばれる「二元代表制」、機関対立主義と呼ばれ、ほぼ同等の権限を持っている。

しかし、地方議会の多くはこれまでその権限である提案権、修正権、調査権、議案の否決等を行使せず、首長提案を追認する形で審議が形骸化している実態にある。

議会無用論も以前より強く、危機感を持った地方議会は「議会基本条例」(2006年北海道栗山町で誕生)の制定により本格的な改革に乗り出したところだ。

そのような中、2010年1月に発足した「地方行財政検討会議」では議員を在職のまま行政側の要職(副知事、副市長、部長職)に起用できる「議会内閣制」の検討に入っている。その提案者が橋下徹大阪府知事であり、改革を進めている地方議会との間で大きな争点となるのは当然であろう。

今回のシンポジウムは地方自治法の抜本改正が進められる中で、議会の位置づけがどうなるべきか、熱い討論が交わされた。

議会も自治体運営に責任を
「議会内閣制」を求める橋下徹知事の主張の骨子は下記の通りである。
今の地方議会は、住民の信頼を得ていない。その原因は議会が責任を負っていないためだ。議決の責任を負わない機関(議会)がいくら改革をとなえても、信頼を得られるわけがない。議員は選挙で選ばれた地方自治体の経営者である。民間企業で言えば執行役員に近い存在だ。地方自治体をマネージメントすることが、地方議会議員の重要な仕事である。そのためには、地方議会議員が行政の中に入って、朝から晩まで仕事をしてもらいたい。特に予算編成にたずさわってもらいたい。なぜならば、行政の中に入って初めて莫大な仕事の全容がわかる。その上でチェック機能を発揮すべきだ。現状の二元代表制では、有権者に対し議員はいやなこと、出来ないことをはっきり言えない実態にある。予算全体に責任を負う制度、大阪府でいえば3,300本以上のものに対し、強制的に予算編成責任を議会に持ってもらうことが必要。また自治体のガバナンスの仕組みが全国均一ではなく、選択制がよい。

また、議会が予算編成に責任を負うのであれば、議会が上に立ってもらい、議会が主体となり執行部を選び、そこに執行責任者として首長が入る制度でも良いのではないか。

改革は進行中である
これに対して、三重県議会の三谷哲央議長の反論は次の通りである。
これまで議会が主権者の期待に十分に応えていないとの反省から、全国各地で内発的に自律した議会改革が進んでいる。主権者である住民の期待に応えられるよう努めている。議会が住民との関係を明確に定めた議会基本条例が、全国で110本を超え、改革は着実に進んでいる。この流れがより活発になることを期待していた中で、政府から「議会内閣制」の話が突然出てきて驚いている。

議会が議員の身分を保持しつつ行政執行側の副知事・副市長や主要部局長に就任する議会内閣制の導入には理解に苦しむ。首長の指揮指導命令下に入ると、議会に本来求められている機能が発揮できない。そして、首長途議会の間に身分上の上下関係が発生することになり、二元代表制の制度としての理念の視点からも疑問が残る。独立した組織としての議会あってこその議会制民主主義である。議会に予算編成権を付与する改革も検討すべきである。そもそも首長の役割は、議会が決めたことを執行することである。それが執行部の意味である。

議会改革は、二元代表制が想定している首長と議会の緊張関係を明確にする大きな流れになっている。この動きを見逃してはならない。

所見- 二元代表制の可能性を追求せよ
橋下知事の主張の根底にある不信は、予算編成等議決の結果に対し責任を負わない地方議会の実態である。議決に責任をどう持つか。現行法では議会は予算編成権も執行権を持ち得ていない。仮に自治法の改正により議会が予算編成権を得たとして、現状のままで可能であろうか。どのような制度設計が必要であるか。

橋下知事の鋭い提案に対し三谷議長が現行法制度の中で応酬でき、互角以上に戦えたのは三重県議会の改革が進み、議会基本条例という武器を持っていたからにほかならない。議会が機関として一体となり、かたまりとして執行部と対峠する。本来、地方議会のあるべき姿とし変貌しているからであった。他府県議会や市町村議会が同様の挑戦に対応出来たであるかと考えた時、失礼ながら甚だ疑問が残る。ここに三重県議会のプライドと自信がうかがえる。それは敵地大阪に乗り込んで、三重県議会が主催しシンポジウムを開催したことである。

さて、橋下知事が言う予算編成に議会が責任を負えという議論に対しては、地方議会は三谷議長が提唱したように予算編成権限を求めるべきと思う。この橋下知事の挑戦的な発言は、彼個人の主張ではなく、大多数の首長の見解を代表したものであることは間違いない。議会は地域経営者の一翼としての責任を追うことができるのか試されている。予算書を解読できず、長期行政計画に関与できないでは地域経営者の資格はない。まず、議会は総合計画の検証から取りかかることが現実的な対応である。いきなり一足飛びに予算編成とは難しい面が多い。長期行政計画とりわけ総合計画(基本構想、基本計画)を議決事件のひとつに加え、地域経営に乗り出すべきである。自治体の人口の推移、形態の変化、財政の推移などの基礎データをしっかり踏まえて、議員間で討論する必要がある。地域経営者として、首長・住民と共通認識を持つことが最も重要である。自治体の将来に向け、建設的な議論を繰り広げると、当然、個別利害は排除されていく。そうしなければ、住民からの信頼は勝ち得ない。議会無用論に拍車をかけることになる。

自治体運営に住民がいかに関与できるか。地方議会の改革とは、首長と議会の関係だけの問題はなく、自治体経営の仕組みに主権者たる住民が組み込まれているかが重要であり、結局その結果は住民一人ひとりに戻っていく。

最後に橋下知事が当日放った新たな提案「議会が主体となり執行部を選ぶ…」については慎重に見極めていきたい。