タイプ
レポート
プロジェクト
日付
2011/8/17

全国に広がる地方議会改革-議会基本条例 東京財団モデルから考える-

東京財団研究員
中尾 修



去る7月24日、三重県鈴鹿市議会/すずか倶楽部主催の公開勉強会に中尾修研究員(前北海道栗山町議会事務局長)が招かれ、議会基本条例を中心とする地方議会改革について講演。その後、議員と市民を交え、活発な意見交換が行われました。以下は、中尾研究員の講演概要です。(文責:編集部)

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いま、北海道で一番の観光スポットは旭山動物園です。動物のありのままの姿を見せたのが人気の秘訣です。

徹底的に公開すること。この点は議会改革とも共通していて、議会も住民に対し、普段の活動や議員が議案についてどれだけ悩みながら判断しているかなどを公開することが重要です。こうした情報公開がしっかりできていないと、福島第一原発事故の対応のように、不満も不信もたまるし、のちに問題を抱え込んでしまいます。

これまで、議会は議案提出権や首長提案議案に対する修正権、議案否決、調査権などの権利をほとんど行使せず、住民に向き合おうとしませんでした。そのため、住民も議会のシステムをほとんど理解していませんでした。ところが今日、各地の自治体でどんどん議会改革に取り組んでいます。法政大学の廣瀬克哉教授が主宰する「自治体議会改革フォーラム」の調査によると、60%近くの議会が改革に取り組んでいるといいます。議会基本条例をすでに制定済み、または今年3月までに制定見込みの自治体は200に達しました。自治体全体の1割を超え、2割に向けて増えています。

議会は首長の追認機関でよいのか

地方自治体の首長も議員も主権者である住民の直接選挙で選ばれます。二元代表制による独任制の首長と合議制の議会、抑制と均衡のバランスがとれた制度で両者は民意をめぐり競争します。国の議院内閣制では選んだ国会議員にすべてを任せますから、内閣あるいは政府がうまくいっていないからといっても国民は国会を解散させる権限がありません。他方、自治体では、住民が直接請求権をもって議会を解散、首長・議員を解職できます。また、50分の1以上の署名をもって条例提案もできます。こうしたことからもお判りのとおり、自治体議員というのは住民の代理だということを、頭の中でよく整理しておく必要があります。

住民の声を代弁するのですから、一般質問も代表質問も議員自身の考えだけでやってはいけません。議員の皆さんは、選ばれたからといってあとはすべて任されたという認識は100%間違いです。ただし、地域の経営者として判断せざるを得ない状況が起きてきます。この時初めて受託者として判断することになります。会派で決めるとか、市長はどうするとかではなくて、議案に対して是々非々で臨むというのが議員の根本です。ここを間違ってしまうと、何もかもが初めから違ってきます。

議員は首長提案議案の完成度が高いかどうかを、質疑を通してチェックします。議会は自治体運営に住民の意思を反映し、首長の政策を制御する責務を果たすことが求められています。ところで、皆さんの議会では、ここ数年、議案修正は何件ありましたか? 否決は何件ありましたか? これがまったく無いとしたら、きわめて不自然だと考えたほうがいいですね。これでは単なる首長の追認機関だと言われてしまいます。

そうした役割を放棄した議会に対して、住民が不信感を持つのは当然です。非常に残念なことに、議会が住民から信頼を得ていない状態が全国的に広がっています。議員の皆さんから、現状をなんとか維持したいという気持ちが伝わってくるからです。住民はこれを読み取っていますから、議会に期待していないのです。議会に関心を向けなくなっています。こうなっては自治というものは進化しません。この流れを危惧せざるを得ません。

住民から選ばれた議員の皆さんは、まとまった機関として住民と真摯に向き合うことが必要です。これまでの議会は、一つのかたまりとして住民との意思疎通を図るとか、議論をする姿勢、考えはありませんでした。4年に1回の選挙を経て、それで信託を受けたと考えるスタイルを踏襲してきました。でも、これからは議会の機関(かたまり)として住民と向き合って話し合うことが必要です。

住民には政策決定過程の説明を

全国自治体議会改革フォーラムの調査によると、2010年の議会報告会の実施数は201。その他の方式を含めて、住民と議会の直接対話の場を設けている議会は421に達し、今年は倍増すると言われています。

首長は住民に理解を得た選挙公約(マニフェスト)をどんどん進めていきたい。けれども、そのマニフェストが議会を拘束することはありませんので、首長提案議案として議会で丁寧に説明して賛同を得なければなりません。これが本当に町あるいは市の経営の方向としていいのかどうかを議員の皆さんとしっかり議論していく。これが地方議会の本質です。

ところが、議会が全体として決めたことを住民に説明するという意識にまで至っていません。これは議会がまとまった機関として首長提案議案を動かしていないからです。首長に対して感情的に批判するのではなくて、議案が本当に信憑性の高いものかどうかをいろいろな角度、いろいろな切り口で検討する。その結果をきっちりと住民に説明しないと、議会はいつも信頼されないのです。議会の役割そのものを正確に住民に伝える必要があるのです。

これは日本人のDNAとも言えると思いますが、今までは“偉い人”が決めたことに従ったほうが間違いないと思っていた面があります。ところが、特に3.11大震災以降、行政や議会にすべてを任せるのではなくて、自らも積極的に行政、議会に関わることが必要だと多くの人々が気づき始めました。これは議会改革を進めるにあたって絶好のタイミングです。

議員の皆さんはこれまで、政治には熱心でしたが政策にはあまり力が入らなかったようです。自分の役職を取ったり取られたり、議員間の人間関係にエネルギーを注いできました。個人活動ばかりで、議会活動をほとんどやっていなかったのではないでしょうか。スポーツでいうとゴルフです。それを「なでしこジャパン」のようなサッカーにして、議論というパスを回して、その結果をゴールにシュートしていただきたい。その過程が見えれば住民は必ず納得します。

議会基本条例に必要な3つの要件

議会運営のルールを定めた現行の会議規則は、住民参加、情報公開、行政評価といった議会本来の役割を明記できない構造になっています。こうした弱点を補うためにも、議会基本条例の制定が必要です。議会は住民への約束というかたちをとらねばならず、また住民から信頼を得るためにも必要です。

そのための必須3要件が、議会がかたまりとして不特定多数の住民と公式に話し合う機会(議会報告会や意見交換会)を確保すること、住民が陳情や請願について議会で見解を述べることができること、そして議員間で討論することです。この3要件は絶対に外せません。これらを条例に取り入れることで、住民との契約、約束、宣言となります。(3要件の詳細は「地方議会改革のための議会基本条例『東京財団モデル』」を参照)。

9月議会で決算審査が行われると思いますが、たとえば事業仕分けを導入してみてはいかがでしょうか。一般会計(議会費)から行う必要はありません。たとえば、今年は予算歳出科目19節の「負担金、補助及び交付金」を仕分ける。国、県、町のすべてを洗い出す。昭和40年くらいにできた、時代的な役割を終えた補助金もあるわけです。そして、次の年は13節の「委託料」を見直す、または事業会計に特化してみる、といったようにメリハリをつけてやることをお勧めします。

今年の着眼点をどこに持って行くかは、一つのかたまりとしての議会として、そして自治体の地域経営者として、皆さんで相談して考えることが大事だと思います。事業仕分けとまではいかないまでも、行政評価を持ち込むのも一つの手でしょう。その前提は、議員の皆さんが首長に対して是々非々の立場に立つということです。議員全員が野党的立場に立たなければなりません。市長与党であってはならないということを強調しておきたいと思います。

ここ数年、議会基本条例はなぜ必要か、どういったものを入れればよいかという質問をよく受けますが、これまでのような住民に見えない議会の内規のようなものではダメです。一般質問は3回までとか、何分以内にとか、住民にとってあまり関心はありません。制度として決定的な効力を持つようにしていくことが大事です。それには条例とすることは適切なのです。

改革、改革と言ってもすぐにはできないということを言う人がいます。しかし、戦後65年経った日本の制度はつぎはぎだらけで、制度疲労を起こしています。一度シャットダウンしなければいけません。すべてを洗い直して、新たな時代の新たな制度として、住民と共に発足していかなければなりません。まずは議員が住民に了解を求めていく。そのためには、自治の主権者、自治の主役は住民だという視点をここで再確認していただきたいと思います。