タイプ
レポート
プロジェクト
日付
2011/12/21

大分県佐伯市議会 議員研修会


去る11月15日、大分県佐伯市議会にて議員研修会が開催され、中尾修研究員(前北海道栗山町議会事務局長)が「全国に広がる地方議会改革 ~議会基本条例から考える」をテーマに、議会報告会の意義や市民参加(モニター制度)の活かし方などについて報告。当日は議員、職員、そして議会モニターの約50名が参加し、地方議会のあり方について活発な意見交換が行われた。中尾研究員の報告と質疑応答の概要は以下のとおり。

なお、佐伯市議会では2009年5月の改革派正副議長の誕生を機に、同年9月に議会改革等調査特別委員会を設置。計21回の委員会や全員協議会での協議・検討、議員研修会や市民との意見交換会の開催などを経て、2010年10月1日に佐伯市議会基本条例を施行。条例の下、これまで計4回の定例会と2011年5月11~13日、11月1、2、4日の計2回にわたり議会報告会を開催している。また、6月の定例会より4つの常任委員会の議案審査から採決に至る模様を各2時間の割合で録画放映。そして現在、15名の個人、26団体に議会モニターを委嘱している。

「全国に広がる地方議会改革 ~議会基本条例から考える~」


東京財団研究員
中尾 修



キーワードは「情報公開」と「市民参加」

議員も首長も選挙で選ばれる。結果、住民は同時に2つの意思を作ってしまう。この2つの意思は、形成されたその時から微妙なズレが生じる。これこそが二元代表制の根幹であって、両者が競争し切磋琢磨して、よりよい自治体経営を目指す。

首長は主に「執行」、議会は「決定」というチェック・アンド・バランス(抑制と均衡)がとれた制度があるにもかかわらず、議会はこれまで首長提案の修正、議員提案、調査権の発動といった権能を行使してこなかった。首長がどういう施策をとろうとも、政策提案や条例、予算に対して是々非々で臨む。そして、議会には与党、野党はないということを確認しないと次へは進めない。

選挙を応援し、人間だから首長に味方したいと思うのが人情だろう。しかし、その条例が本当に住民のためになるのか。議会はその信頼性を質疑というかたちで、いろいろな角度から確認すべきだ。

議員も首長と同じく選挙で選ばれる。当選を果たせば私も人気者だと思うかもしれない。だが、首長と議員とでは役割が異なる。議員は首長のような人気者にはなれない。そこはお互いの仕事の持ち分だからやむを得ない。

2011年1月30日付『北海道新聞』に掲載された岩手県の増田寛也元知事との「二元代表制」に関する対論をご紹介したい。

◎増田寛也 野村総合研究所顧問

名古屋市や大阪府で首長が代表を務める地域政党が誕生しました。しかし首長の言いなりの政党では首長が暴走する危険もあります。議会との対立点を解消するため、選挙で議会構成を変えることは否定はしませんが、主義、主張、政策があいまいなら、首長と議会がなれ合う旧来の談合政治と変わりません。

二元代表制は首長と議会の意見が異なることが前提なので、両者が対立することは健全です。でも、話し合いを尽くすこと、住民生活を人質に取らないことがルールです。対立が解けない場合、住民は4年の任期が終わる時点でどちらの言い分が正しいか判断し、役者を交代させればいい。

◎中尾修 東京財団研究員

首長と議会の対立は、どのマチで起きてもおかしくありません。首長と議会の二元代表制は、それぞれの意見が異なることも想定した制度だからです。議会は、首長の取り組みをチェックし制御することが仕事。二元代表制が健全に機能すれば、首長と議会の対立は起き得るのです。

増田元知事が言うように、異なる意見があって民主主義は成り立つ。首長提案が100%ではない。もっと完成度の高いものはないのか、本当にこれで大丈夫か、と議会がチェックするのは健全である。その上で、議会の仕事とはこういうものだと議会報告会の折々に住民に説明しなければならない。それがないと、議会は首長の追認機関だと思われてしまう。

議員は4年間、住民の代理者を務める。選挙を経て任されたから、あとは自分たちで決めてやればいいというものではない。そのことをもう一度確認していただきたい。住民の意見を御用聞きのように聞けということではない。決定する責任は当然のことながら地域の経営者たる議員にある。ここで大事なのは、民意を反映しているかどうかだ。

佐伯市議会では、これまで議会報告会を2回開催したが、今後は当然ながら参加者は減ってくる。それをあまり気にすることはない。市民と議員の双方向の回路を持っていることが大事だ。

今では多くの議会が議会基本条例を制定し、住民参加に取り組んでいる。残念ながら十分とは言えないが、徐々に中央集権型から地方分権型の自治に変わってきた。2000年頃までの中央集権型にノスタルジックな思いを寄せる議員、あるいは住民がいるかもしれないが、そういう郷愁に浸っている暇はない。

佐伯市では、議会基本条例に「総合計画」「都市計画マスタープラン」「長期総合教育計画」の3つを議決事件に挙げている。出来れば「福祉計画」も入れて欲しかったが、これによって地域経営者として責任を持ちますという議会に変わった。委員会にカメラを入れてオープンにした。これが開かれた議会の姿だ。本会議にカメラを入れたといって胸を張っているところもあるが、こうした中途半端に開かれた議会が多い。


「かたまり」としての議会のあり方

首長は自分の考えるまちづくりを打ち出すことで多くの票を集める。任期中に足跡を残したいと考えるのは当然である。一方の議会は、それが本当に住民のためになるのかを考え、いろいろ指摘する。こうした議会制民主主義における議会の役割を、議員は住民にきっちり説明しているのか。それが十分でないから、議員の数が多いとか、報酬が高いとか言われてきた。そろそろ切り返す時ではないだろうか。これだけの仕事をしているから必要なんだと、どうして言い返せないのか。意思決定機関としてこれだけの人数が必要なんだと、住民に納得していただくよう頑張らないといけない。議会報告会を開催する理由はそこにある。それをきちっと制度化するために議会基本条例がある。

東京財団では、議会基本条例の制定にむけた3つの条件を提案している。(1)議会報告会の開催、(2)請願・陳情者の意見陳述、(3)議員間の自由討議である。佐伯市議会の議会基本条例にはこの3条件が取り入れられている。前回ここに来てお話したのは決して無駄ではなかった。

ここで、3月16日付『信濃毎日新聞』に掲載された私のインタビュー記事「議会基本条例、候補も問われる」の一部を紹介したい。

◎議会基本条例 候補も問われる

「そもそも少なからぬ地方議員は、地元の古くからの名士であったり自営業者であったりと、ある意味で人生の“成功者”。地をはうように生きる人たちの気持ちを理解しろ、ということに無理がある。陳情や請願の真意をくみ取るにも限界がある。サラリーマンや主婦らが参加できるような仕組みを整えることで立候補しやすくなり、少しずつ議会は変わる」

― そうした改革の先にどんな議会があるのだろうか。

「これまでの地方議員はどちらかといえば個人技に頼ってきた。地域や特定の組織の利害を代弁していればよかった時もあった。ドンのように影響力のある議員が執行機関側とやり合い、決断させる時代もあった。しかし、限られた予算の中で選択と集中を厳格にしなければ自治体が成り立たない。政策決定もよく論議しなければ住民は納得しない。議員一人一人のディベート(討議)の力を高める必要があり、そうした意味でこれからの議会は集団技の議会となる。それは首長与党、首長野党といった会派的な意味ではない。一人一人がどう考えるのかを語り、合意形成するという意味での集団技だ」

議会基本条例が出来るまでは、議員活動はあっても議会活動はなかった。個々の議員が、主権者の思いというよりも、自分を支持してくれた選挙民の思いを執行に伝えていた。これはどこまで行っても個人技だ。一般質問でその利益代表のような質問をするところがあった。その条例は市民生活にどういった影響があるのかとか、10年後の人口はどのように変化しているのかとか、これからのまちはどう変貌するのかといった、長期的なビジョンを念頭に置きながら首長と政策議論をする。今後はそうした「かたまり」としての議会のあり方が問われてくる。

議会の住民参加度、公開度、運営度などを評価する『日本経済新聞』の全国市区議会改革度調査によると、1位は京都府の京丹後市、2位は三重県の伊賀市、そして3位は長野県の松本市の順だった。これは2010年2月中旬から3月上旬にかけて全国784市・23区を対象に調査を行ったものだが、佐伯市は421位。この調査は2年に1回ということで、佐伯市は議会基本条例を制定し、議会報告会も2度開催したから、次回は順位がもっと上がるだろう。ただし、他の自治体もどんどん改革をすすめているので、歩みを止めたら順位が下がることも十分ありえる。

このように議会を評価するのはマスコミだったり、オンブズマンだったり、他の市町村の議会や市民だったり、あるいは東京財団のようなシンクタンクだったりするわけで、1市だけで完結するということはなくなった。評価が当たり前の時代になった。競争社会のど真ん中に突入した。中央からちょっと遠いからといって、見過ごされることは絶対にない。


市民参加をどう活かすか?

行政は企画、予算編成、執行、評価という一連の流れを行政行為として行う。これはかなりの強権で、行政権が肥大化してしまった。片方で議会はずっと遠慮してきた。というよりも、名誉職に甘んじてきた。今は分権社会だから、自分たちの地域は自分たちで守り、どう生き抜くかを考える。これがこれからの議会の生きる道であり、それによって住民に信頼され、必要とされる。

住民に必要とされるための議会に変わりますと宣言したのが議会基本条例だ。これでわれわれはこのまちを将来にわたって責任を負うという、そのぐらいの気魄と勢いで市民の前に登場していただきたい。議決における責任を取っていただきたい。

今日は議会モニターの方が大勢参加されている。これは素晴らしいことだが、議員はあなた方を議会の応援団、または議会の下部機関、付属機関と思っているかもしれない。あるいはモニターの方々がそう思っているかもしれない。そうだとすると、考え方を変えていただきたい。モニター制度を国でいうところの会計検査院的な役割だと位置づけていただきたい。市民と議会の温度差が違うことはままある。首長と違って、議会は予算編成権を持っていない。執行の権限もない。だから市民の要望にはすぐ返答できない。モニターから見るとまどろっこしいし、何で? と思う部分がいっぱいある。

だが、それが民主主義の大切なところであって、一歩立ち止まって考えるという重要なところでもある。モニター制度を活かすのは、議長をはじめ議員の英断だ。佐伯市議会では、どこからでも口を出してくれということのようだから、ここの民主度は高いところにある。住民自治を進化させようという意思が強く働いている。

だからといって、モニターが100言ったものが100採用されることはない。そう思っているなら、後でガッカリする。そうではなくて、議会という機関が真剣に議論する場を見ていただきたい。着実に一歩一歩進んでいるかどうかをチェックしていただきたい。佐伯市をどうするかということを、主権者一人ひとりに考えていただきたい。そうは言っても、日々忙しくて時間のない方にはやっぱり無理ということで、モニター制度があるわけだから、しっかりと参加していただきたい。

今年9月から第30次地方制度調査会に臨時委員として参加している。その会長を務める西尾勝先生の9月15日付『毎日新聞』に掲載されたオピニオンをここでご紹介したい。議会への住民参加が必要だということを述べておられる。

◎「住民参加へ地方議会も変革を」

「住民参加の第一歩として、地方議会のあり方も根本的に論じることになる。首長ら理事者側から出てくる議案や条例案、予算案がほとんど修正なく通り『議会は仕事をしているのか』が疑問視されている。議会自らの改革の動きもまだ十分と言えない」

「議員の顔ぶれをもう少し住民代表らしい構成に変えたい。女性があまりに少なく高齢者が多く、職業別では24時間地元にいる人に占められている。多様な人材を参入させるには選挙制度に加え、夜間議会の開会、会期などあり方を考え直す必要がある」

今後、議会は市民に信頼されるように舵を切っていくことが重要で、そのためには成功体験だけで説得してもダメ。子育て中の奥様方や就活中の若者たちを対象に議会報告会の特別バージョンを開いて、腹蔵のないところを聞くといった工夫が必要だ。

もう一つ重要なことは本来議会がやるべきこと、つまり生活弱者と思われる方々の声を拾うことである。にもかかわらず、要介護度ランクの基準さえも知らない議員がいるのが現状だ。文化センターが新しくなるとか、道路が新しくオープンするといったことは確かに華々しいが、生活弱者の思い、住民の日々の生活をしっかり拾う議会こそが、議会改革の行き着く先だ。


質疑応答

Q1 佐伯市の議員は現在29名だが、その中で合意形成をどのように図ればよいのか?

中尾 議員間の自由討議を通して合意形成するのが議会という機関の真骨頂だが、その重要性を考えていただきたい。市長が出した議案に対して、市民にどういった影響があるのかを全体で調査、検討していく。その結果、共通認識ができて合意形成がなされる。ここでは市民の立場に立つという、その1点で議論する必要がある。それが議会の合議体として求められるものだと覚悟していただきたい。

Q2 立派な議会基本条例ができたが、そこに魂を入れるにはどうすればよいのか?

中尾 市民が行政、議会を鍛えるのが大事だ。相互でキャッチボールをやっていただきたい。今のモニター制度というのはそういうことではないか。

Q3 自治法では、議会事務局の職員は議長がこれを指名できるとなっているが、現実はそうではない。職員は今まで積み上げた専門的知見をこれから生かせるというときに交代しなければならない。予算の問題もあるが、事務局の職員は議会が独自で採用すべきなのか、あるいは大分県の14市議会による広域連合での採用ということも考えられる。

中尾 独自にしろ、共同採用にしろ、どこかでそれをやらないと前に進まない。基本的には広域よりも独自採用の道を探れと言いたい。但し、将来にわたってどのくらい担保できるか、つまり議長の任期の問題もあって、ハードルがかなり高いのが現実だ。

Q4 議会の会派について、どのように考えればよいのか?

中尾 地方議会に会派は要らない。市民は会派で議員を選んでいない。会派がない議会もかなりある。身内の論理だけで対立するのは市民にとって不幸だ。地方自治法には、政務調査費の項目に関するところに「会派」という2文字が出てくるだけで、会派を構成して議会活動しろなんてどこにも書かれていない。早期に会派を解散し、全員で市民と向き合うことをお勧めする。

Q5 議会モニターに参加した感想だが、本会議で議案に反対の意見は多く出るものの、賛成の場合はほとんど意見を述べない議員がいる。もっと活発な議論を展開してほしい。

中尾 議員は、結果賛成なんだから議論しなくていいと考える。これは良くない。自分の意思、見解を述べるのが議員の役目だ。議会では異論を認め合う文化を作らなければいけない。そして、議員は自信を持って市民に報告する。議会報告会などで市民の皆さんは議会とキャッチボールしていただきたい。一歩でも二歩でも市民と議会の距離が短くなれば、信頼される自治へと進む。強い権力だけで物事が決まっていくのではなくて、決定の過程が見えることで自治が進化する。そのためにも、将来の自分のためだけでなく、次の世代にどうつなぐかという視点が大事だ。