タイプ
レポート
プロジェクト
日付
2013/12/11

延岡市議会 議員研修会

全国に広がる地方議会改革 ― 地方自治法と議会基本条例から考える


宮崎県延岡市議会では、4月1日に議会基本条例を施行しましたが、その制定を前に中尾修研究員(前北海道栗山町議会事務局長)は同市議会に招かれ、条例の意義について報告するとともに、議員との意見交換を通してその役割や重要性などをあらためて確認しました。当日の中尾研究員の報告と質疑応答の一部は以下の概要のとおり。


条例は、議会不信を払拭する起死回生策

議会も行政と同じように、いろいろ悩みながら問題に取り組んでいる。その事実を積極的に公表していかなければならない。ところが、議員はこれまで自らの議会活動を市民に見せる努力を払わなかった。市民もその活動にほとんど関心がなかった。こうして議会と市民の距離が広がった。起死回生の策である議会基本条例を成功させなければ、議会はますます必要ないと言われ、議員定数や報酬も半分でよいということになる。議員は市民の前に立ち、条例の本筋を話してこれを乗り切るしかない。

議会はこれまで遠慮していたのか、あるいは名誉職に甘んじていたのか、二元代表制の下でのチェック・アンド・バランスという、議会本来の権限を健全に行使してこなかった。そこを是正して、議会は機関として活動し、かたまりとして市民の前に登場するのが議会基本条例の本旨である。民意を汲み取るのは、執行部よりも選ばれた議員のほうが得意技だということを市民に確認してもらうためのものだ。

市民、議会にとって使い勝手のよい条例に

憲法第94条に「地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる」とあるが、実は議会基本条例の根拠となる地方自治法上の規定はない。第29次地方制度調査会の答申で、「近年、それぞれの議会において、議会の活動理念とともに、審議の活性化や住民参加等を規定した議会基本条例を制定するなど、従来の運用の見直しに向けた動きが見られるところであり、引き続きこのような自主的な取組が進められることが期待される」と表現された。2006年5月に北海道・栗山町が議会基本条例を全国で初めて制定した際、総務省から「どのような条例を制定したのか」との照会があったが、それから3年の時を経て認知された。

議会運営の根幹である会議規則には、情報公開、市民参加、行政評価、議会評価といった時代の要請は明確に含まれていない。だからこそ、議会はこう変わる、こういう行為を行うということを市民に約束して宣言する。今までの反省を踏まえて、議会版マニフェストとして議会基本条例を市民に説明する。ここで重要なのは条例行為であって、そうでなければ市民が条例の改廃権に直接関与できない。制定した後にこの条例は使い勝手が悪いということならば、市民は有権者の50分の1の署名をもって直接請求権を行使できる。ここが重要なところであって、これが会議規則では決してできない。条例どおりに議会を運営していないと、それを根拠に解散の請求までできる。実際にはないにしても、法律的にはそういうことが可能である。

まず、何よりも市民にとって使い勝手のよい条例かどうかが評価の分かれ目である。そして、議会にとっても使い勝手がよいかどうか、住民自治、地域民主主義を一歩でも前進できるかどうかが問われる。今まで関心を持っていなかった市民に、議会活動を理解して、どうぞ口出ししてくださいということだ。

条例の理念を次期議員に引き継ぐには

2012年の3月時点で、議会基本条例を制定した議会は全国で300を超えた(13年11月現在は450以上)。議会改革への取り組みが大きなうねりとなって動いているといえよう。東京財団は2010年に議会基本条例の3つの必須要件として、(1)議会報告会を年1回以上行うこと、(2)請願・陳情者が議会で意見を言えるようにすること、(3)議員間の自由討論を行うことを定めた。この3つを条例に取り入れている議会は全体の8割以上を占める。情報公開を徹底して、住民が議会活動に参加することが議会改革の大前提である。

延岡市議会の議会基本条例は、この3要件すべてが網羅されているが、ところどころに少しぼやかしておいたほうがよいだろうという力が働いていないだろうか。あと1、2期で現在の議員の顔ぶれの半数が変わったとして、果たしてこの条例の理念が次に伝わるのか。条例は成立した時点から後退していく。後退させないために、しばりをしっかりしたところまでもっていって次にバトンを渡す必要がある。

議会改革特別委員会を継続して、市民モニター制度も取り入れて条例が生きるようにしていただきたい。他の議会の先進モデルと摺合せをしたりして、足したり、検証したりして、より完成度の高い条例にして次期議員に引き継ぐ。そのためには管理職ではなく説明資料を作る係長級の執行側の職員と、議会基本条例について一度話し合う機会があってもよい。それと、ぜひご自身の奥さんやご家族に議会基本条例を説明していただきたい。市民に説明する前に、自分の家族にわかってもらえるかどうかを確認していただきたい。


質疑応答


― 次にバトンを渡す新人議員に対して、議会基本条例の解説書が必要ではないか。

中尾 いろいろな解説が付いたとしても、やはり最後は自分の解釈を優先するのではないか。だから条例にきちっと書き込むしかない。法令と条例は対等だと思っていただくしかない。条例にあるものを守らなければ条例違反であって、それがグレーゾーンだと自由解釈の幅が出てくる。

条例の文言を「…するよう努める」といった努力目標ではなくて、「…しなければならない」といった意味合いを持つ表現にする。北海道・福島町の議会基本条例は、すべてが「…する」といった断定の文言になっている。なおかつ、最後に「条項の規定を一層明確にするため、受動的・間接的な表現を能動的なものとする」と記している。

より一層完成度を高め、次の議員がなるほどと思うような条例にするには、特別委員会を継続し、市民と専門的知見を交えて意見のすり合わせを行っていただきたい。


― 市民は、議員がかなり広範な権限を持っていると思っている。しかし、議員個人の活動はないということをいかに市民に説明して議会活動を行えばよいのか。

中尾 召集の告示があって議会が開会してはじめて議員の行動が公式になる。それぞれの地区での活動は準公式の活動である。そこで、ぜひとも通年会期制を検討項目に挙げていただきたい。2012年の地方自治法改正で認められた通年会期制のもともとの発想は、議員の顔ぶれを女性やサラリーマン層といったもう少し住民代表らしい構成に変えたいということだ。


― 区長会やマスコミなどを通じて議会報告会への参加を市民に呼びかけたものの、出席率が低いところがあった。打開策はあるのか。

中尾 議会が出かけて報告会を開催するという発想ではなくて、区長会とか町内会との共同開催というかたちを試みてはいかがか。栗山町では、議長と議会運営委員長が年一回の自治会長・町内会長会議に出て、議会報告会を説明し共同開催をお願いしている。だから、報告会の各会場では、自治会長や町会長が冒頭挨拶している。こうした主権者が自覚するような仕組みこそが民主主義、地方自治の進化である。

会場は、議員と市民が相対するスクール形式ではなくて、ロの字や車座といったレイアウトのほうがよい。そして、報告会は公式行事として本会議で議会運営委員長が結果を報告して、議案と一緒に編綴されて永久保存されるかたちにしていかないとダメだ。

私は、運動会のお弁当にバナナがあると嬉しかった「バナナ世代」だから、バブル期を経験した40代や30代の「キウイ世代」とは価値観がまるで異なる。そうした「バナナ世代」の議員というのは、どうしても投票に出かける60代以上の施策に重きを置いてしまう。多様な民意をつかむためにも、今の報酬を維持して、若い人でも議員になれるようにしていかないといけない。その下地づくりとして、議会基本条例を市民の使い勝手のよいものに育て上げていただきたい。