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東京財団ワシントンセミナー報告:日本の政権交代と日米同盟の行方(3)

March 4, 2010

3.鳩山政権の現状

渡部恒雄・上席研究員兼外交安保問題担当政策研究ディレクター


山口昇・防衛大学教授をプロジェクトリーダーとする東京財団安全保障研究プロジェクトでは、2008年10月の 「新しい日本の安全保障戦略 ― 多層協調的安全保障戦略」 につづき、民主党政権発足後間もない2009年10月、政策提言 「日本の安全保障~鳩山新政権への10の提言」 を発表した。渡部恒雄・上席研究員は民主党への10の提言を導入に、政治資金疑惑で揺れる鳩山政権の外交政策の見通しを語った。
英語講演の再録動画は こちら

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東京財団が民主党政権に向けて出した10の提言の第1にはこうある。「在日米軍再編合意については、沖縄における米軍基地の固定化を招かぬように、県外移設にこだわらずに柔軟に対応すべきだ」。現状を考えれば「だから言ったでしょ」と言いたい状況だが、民主党発足からまだ4カ月、今後どうなるかは分からない。
今日は二つのポイントについて話したい。ひとつは「鳩山首相の普天間問題に対する答えはなにか?」そして「政治資金疑惑に揺れる鳩山首相、小沢幹事長の今後」である。

政治資金疑惑は鳩山首相関係と小沢幹事長絡みの二つある。昨夜、小沢氏の元秘書が逮捕されたというニュースが入ってきた。これは小沢氏本人のみならず、鳩山首相や民主党にとって大変なトラブルとなろう。小沢幹事長が辞任することになれば、かつての田中角栄元総理がやったような闇将軍のような存在になる可能性はある。いずれにしても、来年度予算編成のタイミングと検察の資金疑惑をめぐる動きは無縁ではないと見られている。
鳩山総理の問題は、母親からの資金提供が問題となっている。その資金提供が法律上の適正な手続きを取っていなかったということで、こちらは贈収賄ということではなく、追徴金も払ったので小沢問題よりは小さくて済む見通しだ。

むしろ問題は、こうした状況下にある鳩山首相のリーダーシップである。今日本では3つのKが取りざたされている。ひとつは「基地」、「経済政策」、「カネ」。幹事長が疑惑の渦中にあるから民主党にとってもトラブルの元ではあるのだが、しかしこれは逆に鳩山首相にとって、本当のリーダーシップを手中にするチャンスでもある。12月末の世論調査によれば、首相の支持率は低下しているものの、民主党そのものへの支持率は依然高く8割くらいである。自民党の支持率はまだ2割程度だから、今後のやり方によっては鳩山首相がリーダーシップを取ることができよう。

基地問題について。まずは日米関係の基礎的データを見てみよう。日本人は米国をどう見ているか。内閣府が行った10月の 「外交に関する世論調査」 によれば、米国に「親しみを感じる」が29.0%、「どちらかというと親しみを感じる」が44.2%となっており、実に7割が米国を肯定的に見ているのである。一方中国に対してはどうか。中国に対しては、「親しみを感じる」が7.0%、「どちらかというと親しみを感じる」が24.8%、合計31.8%であった。この違いを踏まえておきたい。

鳩山総理の支持率低下は、世論が首相のリーダーシップに対して不満と疑問を持ち始めたからだろう。民主党政権が主客逆転状況にあることに辟易しているのだ。「主客」の「客」とはだれか?連立相手の社民党と国民新党である。社民党は7議席、国民新党は3議席しかない。民主党は300議席以上を占めているのに、なぜ少数与党に振り回されているのかとの不満が出ている。普天間問題を5月に決着させるには、この状況も計算にいれなくてはならない。

次へ続く→ 4.会場との討論:深読みし過ぎたか

    • 元東京財団上席研究員・笹川平和財団特任研究員
    • 渡部 恒雄
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