タイプ
その他
日付
2007/11/28

第3弾「焼畑のカブ」(3/5)


2.どうやって作られているのか(焼畑について)



山北町の山熊田では、21軒の集落が協力し合い、ひとつの畑に火入れする。
まずは七月中旬、杉などを伐採し、下草を刈り、地ごしらえする。この日ばかりは、町に働きに出ている息子たちも戻って手伝い、延べ30人ほどで一週間ほどかけて整地する。地元の人によれば、これが一番の大仕事だという。

地域によっては、火入れは春だが、ここではお盆の暑い盛りだ。よく燃えるには、雨の少ないこの時期が最適だという。8月12日、見学に訪れた山焼きは、想像を絶する迫力だった。山北町では、数年前から「焼畑ツアー」を企画し、地元に宿泊し、焼畑体験を始めている。2007年、火入れしたのは、40アールほどの急斜面、前日にも草刈りする。特に森との境は、火が燃え移らないように丁寧に刈る。炎天下の草刈りは汗だくだが、これを物ともせず、地元の人は涼しげな表情。しかも、この地域では、夕刻から夜にかけて行うので、燃えさかる炎の美しさを存分に味わうことができる。
夕刻、「山ノ神」に「どうかお守りください」と祈り、お神酒をいただく。高知県では「這って逃げるものは這って逃げ、飛んで逃げるものは飛んで行け」という蛇や虫に無事に逃げろという祈りの言葉も残っているそうだ。

最初は高いところから、燃えやすい杉の枝を使い、下方へと燃やしていく。そのうち炎は一気に勢いを増し、7~8メートルにも達して逆巻く。そばに寄るだけで汗が滝のように流れるが、ベテランたちは動じない。中には20キロもの水袋を背負い、飛んだ火の粉を消してまわる人もいる。そうして畑の隅々までしっかり燃え、いい灰ができるように、炎を見守りながら、山を下っていく。

翌朝、種蒔きは、まだ地表が熱いうちに行う。地面のあちらこちらから煙がのぼっている。種の発芽というと、水に浸すイメージが強いが、灰の熱が種の発芽を促すそうだ。そしてカリウムなど灰の成分が、成長を促し、おいしいカブが育つ。かなり密に撒いても大丈夫だ。10月、収穫の頃に戻ると、たくさんのカブが、地表に半分、姿をのぞかせるようにして実っていた。よく燃え、いい灰ができた土壌には、色よく、大きなカブが犇くようになり、焼けていない土壌や日陰には、小さなカブが少しだけだった。

その収穫も、若者の手が欲しいところ。腰に下げた稲藁の手籠(てご)にカブをいっぱいに摘め、山から下ろすのは一苦労だ。山熊田では、種採りをしている温海地区から毎年、種を分けてもらい、収穫したカブは、その日のうちに7人の加工グループが一気に漬け込む。

現在、一度も途絶えることなく続けてきた山熊田の焼畑を支えているのは、70代を中心とするベテラン層。「みんな70才以上ばっかりやから、わしらがやめたら、もう誰もやらんのやないかな」とぼやく一方で、あまりの暑さによろける軟弱な私に「あんたも、三回、通ったら山焼きできるようになるよ」と励ますのだった。