タイプ
その他
日付
2008/2/5

第8弾「在来大豆」(3/5)


3.大豆作りを始めた町の豆腐屋さん




『トージバ』は、2年前、自分たちで作った千葉の小糸在来を、彼らが参加するイベントで豆腐にして販売したいと考えた。そこで、国産大豆にこだわっていた池袋の豆腐屋『大桃豆腐』の大桃伸夫さんに頼んで、作ってもらうことにした。
 
これが縁で、触発された大桃さんも、2年前から小糸在来など気に入った在来大豆を、千葉県や茨城県の農家にお願いしてまで、作ってもらうようになった。これに協力している練馬の豆問屋『山口物産』の山口博さんによれば、アメリカから約500万トンの大豆が輸入されている。その多くは、大豆粕などの家畜の餌や、食用の8割はサラダ油やドレッシング、菓子類の大豆レシチンなどの大豆油である。これに対して国内で生産されるわずかな大豆、約17~18万トンのうち、半分近くは豆腐になっているという。

国産大豆の未来は、町の豆腐屋さんの背にかかっていると言っても過言ではない。そして近頃、大豆の品種にも目を向ける若い豆腐屋が現れ始めている。山口さんによれば、「改良品種は、どうも甘みはあるけど香りがないとか、収量が多いけど味はもうひとつという感じなのに、在来種は、ほとんど豆の甘みも香も両方あって、それぞれ違う。」しかし、それだけに、おいしい豆腐にするには、豆腐屋の技と目が必要になる。

仕事は、朝4時に始まる。前日に大豆を洗い、昼夜、水につけていた大豆をグラインダーで挽き、圧力釜で煮る。豆を煮るとぶくぶく泡がでるので、多くの豆腐屋はこれを嫌い、シリコン樹脂などの消泡剤を使う。しかし、大桃さんは、客の要望もあり、「最近、レンタルした軟水機の効果で泡はそれほど立たない」と一切、薬品を使わない。このとき、普通の店では滅多に触らない圧力窯を頻繁に開けては、櫂と呼ばれる木の道具でよく混ぜる。「少し濃かったな」と呟きながら、今度は水を加える。在来大豆は、豆の甘みがあり、香りも豊かだが、豆によって性格が大いに違う。おいしい豆腐を作る職人は、その個性をつかみ、最大限にその魅力を引き出すための微調整が必要になる。ベルトコンベアーを使う量産メーカーには不可能である。大豆の声を訊くというスローさが、味の違いだ。「東京都だけで960軒残っているという豆腐屋も、月に4~5軒の割で潰れているそうなんだよ。」そういう大桃さんは、そんな町の豆腐屋が、何とか面白い大豆で差別化をはかって、できるだけ生き残ってくれたらと願っている。そして、2年前から『トージバ』の活動に刺激を受け、茨城県の有機農家に、山口さんや『黒澤豆腐』など仲間の豆腐屋といっしょに、耕作の難しい畑を借り、お客さんと大豆と味噌作りを始めた。

「おいしい豆腐をつくりたい一心で行き着いた国産大豆、それに在来種だけど、農家に通い出してからは、やっぱり国産大豆を使わなきゃとますます思う」。
 大豆を真ん中にして都市と農村をつなぐ小さな活動が、互いに刺激し合いながら、しかし、確実に広がっていこうとしている。