タイプ
その他
日付
2008/2/19

第9弾「麹」(5/5)


5.人物ファイル


石黒八郎さん


昭和25年富山県生まれ。石黒種麹店社長。富山県内に100軒あるという麹屋の組合組織・富山県麹協同組合の理事長も兼任。用途の広い「麹」をさまざまに造り分け、使いわける職人技は、先代であった父から、そして、六十三年の長きにわたって石黒種麹店の番頭を務める水口栄悦さんから習得。「一口に麹といっても、その性質はさまざまです。私どもの味噌には、短毛で早く胞子がつき、たんぱく質分解酵素の強い麹を使い、かぶら寿司や甘酒用には、長毛で糖化力の強い麹を使います」。
麹が美容と健康にいい、ということは、こどもの頃から身体で感じ取っていた、という。「亡くなった父は、八十三歳の時でも肌は白くてシミひとつなく艶々としており、髪もふさふさでした。
長い歳月、ずっと麹に触れていた、というのがよかったんでしょうね」
夏には、夏バテ防止策としての甘酒の飲用を薦める。猛暑のさなかに甘酒を買い求める人たちが店頭に並ぶ様子は、福光新町の夏の風物詩ともなっている。




嶋光国さん


昭和45年富山県生まれ。成政酒造杜氏。東京での学生時代に日本酒の魅力に目覚め、寿司屋での住み込みアルバイト中に国内のさまざまな美酒との出会いをはたす。大学卒業後、世界中を旅するバックパッカー生活を経て、10年前から酒造りの世界へ。3年前に杜氏に就任。「旅をする身も、酒造りをする身も、気持ちとしては変わっていません。高速回転するコマは、回転していても同じ場所に立っている、その言葉のとおりだと思います」
酒造りは、能登流の前杜氏・松谷政治さんから習得。昔から「一麹、二もと、三造り」と言われるように米麹は、日本酒造りの要ともなる作業だが、嶋さんは、種麹の選択よりも、現場での麹造りの作業のほうに重きを置く。
「どんな麹菌を選ぶかといったことよりも、我々人間が行う
後々の仕事が与える要素のほうが酒造りにおいては重要なのではないかと思います。まずは、どんな蒸し米をつくるか、そのあとにどんな作業を重ねていくか、といったさまざまな細かな操作のほうが大切になってくるものと考えています。麹造りが『身につく』、というのは、頭で考えることではなくて、麹の状態を見た時に条件反射的に身体が動く、といった状態になることでしょうか」 

   


米山弘さん


新潟県生まれ。若鶴酒造杜氏。酒造歴は四十六年目、勤務は三十四年の長きにわたる越後流の杜氏。昨年平成19年に黄綬褒賞を受賞。冬期は蔵に泊まりこんでの酒造りに従事し、春から秋にかけては、自宅のある新潟県で米作りを行う。米を作り、米を見極め、米と米麹で酒を醸す「米の達人」である。米麹を作る際に大切なのは、まず、麹菌が繁殖しやすいような、外硬内軟の蒸し米を作ること。蒸し上がった米の状態を見るためには、毎朝、蒸したての米を手でのした「ひねり餅」を作り、触感、食感、視覚といった五感を使って、日ごとに微妙に異なる蒸しあがりをチェック。蒸しの状態を確認してから、麹室(こうじむろ)に移動し、蒸し米に麹菌を振る。

「酒造りで大切なのは、安定した酒質を守ることですから、使用する種麹を頻繁に変えたりはしません。うちの蔵では、酒の香りの元となる成分が出やすいもの、それから順調に醗酵をすすめていける安定した性質のものとの2種類を選んで使用しています。種麹にも、いろいろなカタログがありますが、実際には使いはじめてみなければ、その性質は把握できません。麹の選択よりは、麹菌が繁殖しやすいような良い蒸し米にしあげること、環境を整えることが大切になってきます。」

   



取材・文:藤田千恵子
撮影:菊地和男