タイプ
その他
日付
2008/8/19

第21弾「海塩」(3/5)


3.どこに残っているのか


 


■清らかな海水を求めて粟国島へ
 南大東島、石垣島、西表島、与那国島などへ渡り、塩づくりに最適な環境を探した小渡さん。それまで塩の実験・研究を続けていた沖縄本島の読谷村では、農薬や海の汚染が心配され始めていた。100%海水からつくる塩は、きれいな海が大前提である。
 小渡さんが粟国島に移り住んだ当時は、沖縄の人にさえあまり知られていない島だったという。機上から島を眺めた小渡さんは、降り立つ前に直感的にここだ、と感じた。
 自然製塩法のためには、太陽と風が必須だ。粟国島には高い山がなく、太陽熱や風力に恵まれている。また、粟国島の主な産業は粟国産サトウキビを使った黒糖。ほかに工業がないことも魅力だった。さらに畑が少ないため、農薬の問題も回避できると思われた。人口が850人と少ないことは、生活廃水も少ないことを意味している。海水を分析した結果、予想どおり清らかな海であることが判明した。知名度の低かった小さな島だからこそ、塩づくりには理想的な環境が残されていたのだ。

 最近は、豊かな自然を利用して昔ながらの揚げ浜式塩田をつくり、食育の一貫として塩づくり体験も始めた。ここでできた塩でさまざまな食材を調理することによって、子どもたちが食の大切さを感じてくれたなら。塩づくりで培った知識が役立てば、と小渡さんはいう。





■珊瑚礁の海に囲まれた野甫島

 

野甫島には、方言で原っぱや崖を意味する「はんたもう」と呼ばれる場所がある。中秋の名月などに、地元の人々が集まって歌い踊るという集落の中心だ。目の前には、どこまでも青く透き通った海が広がる。理想の塩づくりの地を探し、北海道から沖縄までの日本各地、さらにはカリブ海の島など海外までまわった松宮さんは、最終的にこの場所に立って野甫島に決めたのだという。

 野甫島が属する伊平屋村の宝は、なんといっても手つかずの自然だ。約30mともいわれる驚異の透明度を誇る海には、白化現象も見られるとはいえ見事な珊瑚礁が広がる。絶好のダイビングスポットであり、美しいビーチも点在するが、観光客の姿はさほど見られない。伊平屋村は、沖縄最北端に位置する。本島のフェリー乗り場がある運天港は、那覇から沖縄自動車道を使って約1時間半。そこから1日2便のフェリーで約80分の船旅でようやく到着する。決していいとはいえないアクセスが、観光客が少ない理由のひとつだろう。「もっとたくさんの人が島を訪れてほしいと思う一方、観光客が増えると日焼け止めなどで海が汚れてしまう。ジレンマですね」と松宮さんは笑う。

 発電所やゴミ焼却場がないこともこの地を選んだ理由だった。また、伊平屋村の海はカルシウムやミネラルが豊富で、舐めてみてもふわっとしたまろやかな味わいがすることでも知られている。
 さらに、松宮さんの塩づくりは太陽と風がパートナー。海水を濃縮する立体塩田で水分を蒸発させるのは、太陽熱によるものが2~3割、風の力が7~8割だという。太陽光が少ない秋から冬にかけて、阿波岳から吹いてくる乾いた風も好都合だった。

 野甫島の人口は約120人、伊平屋村全体で1400人余り。漁業と農業を主幹産業とし、モズクや伊平屋村内産「てるしの米」などが知られる。「塩夢寿美」もまた、美しい自然が残る伊平屋を象徴する名物としてすっかり定着している。