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政策研究に科学と競争を――東京財団政策研究所が目指すもの

March 26, 2018

東京財団政策研究所設立準備室

世界に通じる日本唯一の政策シンクタンクへ

東京財団は昨年、創立20周年を迎えた。この間、研究に基づいた政策提言を数多く発出し、社会科学研究や政策に影響を与えてきた。東京財団は日本の主要な政策シンクタンクの一つとして国内外に認知されるようになったと自負している。

創立20周年を機に、私たちは創立時の野心的な目標に再び立ち返ることとした。それは、世界の主要な政策シンクタンクと肩を並べる存在となるという目標だ。そのために私たちは、2018年3月に東京財団を全面的に改組し、東京財団政策研究所となりこの目標達成のための再スタートを切ることとした。

新研究所設立の背景

成熟した民主主義国家である日本になぜ、本格的な政策シンクタンクが育たないのか。それが東京財団設立時の問題意識であり、今回の再スタートの動機でもある。

日本で政策シンクタンクが発展してこなかった理由は、需要面と供給面に大きく分けることができる。需要面では、自民党の一党優位性が長く続く中、自民党政権と一体化した官僚機構が「日本唯一の政策シンクタンク」として、民間ベースの政策シンクタンクを圧倒してきた。「優秀かつ、ただで使える」(ある自民党議員)巨大な官僚機構の存在が、政策シンクタンクへの需要を抑制してきた。

供給面では、資金調達の厳しさによる制約がある。米国のような寄付文化、寄付への税制優遇措置が弱いため、日本のシンクタンクは資金調達に苦しみ、政府や企業からの資金に頼った運営を続けてきた。バブル崩壊後には、資金面での制約はさらに強まった。「独立的な立場から政府と異なる選択肢を提示する」という本来の機能を果たすことのできる政策シンクタンクは少ない。

状況は変化しつつある。日本は、他の国に先駆けて、少子高齢化、中国台頭、地方衰退、脱原発などの大きな政策課題に直面している。いわゆる「課題先進国」(小宮山宏氏)である。国会やメディアなどの場において、日本の将来のあり方について、世界を先取りした政策論争が活発になされなければいけない。野党が迷走を続け、官邸に権力が集中する日本政治の現状において、国民に政策の選択肢を提示する機関として、政策シンクタンクが果たしうる潜在的な役割は大きくなっている。

他方、長期の経済低迷が続いた中、資金面での制約は以前にも増して厳しい。大半のシンクタンクは、政府からの委託や、企業からの援助に頼った運営を続けている。独立的な立場で、政策の代案を提示できるシンクタンクはいまだ少ない。

こうした日本の現況を背景に新研究所は、世界の主要シンクタンクに伍する研究機関となるべく、設立される。日本財団の支援の下、規模を大幅に拡大し、質の高い政策研究をベースに、政府への代案を提示する。

「課題先進国」であることは、日本にとっては試練であると同時に機会でもある。世界に先駆けて重要な政策課題を解決していくことで、東京財団政策研究所は、日本だけでなく世界でも大きな存在感を持つシンクタンクとなることを目指している。

東京財団政策研究所の5つの特長

上記目標を達成するために、新研究所は以下の特長を備える。

第一に、多様で優れた人材を国内外から確保する。政策シンクタンクは、政策立案機関と大学などの研究機関とのほぼ中間に位置する存在である。したがって、高度な社会科学の研究能力と政策形成・立案能力の2つについて、一方に強みを持ちつつも双方の能力を併せ持つ優秀な人材の確保に努める。こうした人材のプールを海外にも広げるために、研究部門においては英語を準公用語化する。

第二に、独立的かつ強固な財政基盤を確保する。東京財団はすでに日本の政策シンクタンクの中でトップクラスの規模である。その上、基金の運用でほぼすべての活動資金をまかなっているため、他のシンクタンクに比べ、研究の自由度と独立性は今でも突出している。新研究所では規模をさらに拡大し、研究の質・量双方で世界に通じる独立的な政策シンクタンクとなる。

第三に、研究テーマとしては、日本の重要課題に重点を置く。これは日本に閉じこもったシンクタンクになることを意味しない。「課題先進国」の日本が直面する問題は、いずれ他国に波及していくからだ。「課題先進国」の政策シンクタンクとして、世界に先駆けた政策研究を行うことで、日本だけでなく世界の政策形成過程でも存在感を持つシンクタンクとなる。

第四に、質の高い政策研究を行う。日本では長らく、官僚機構が「唯一最大の政策シンクタンク」として政策の市場を独占し、政策シンクタンクなどが育たなかった。理論やデータや現場の情報などに基づき優れた政策案を競い合う「政策の市場」は機能していない。新研究所では、各種の定量・定性データを整備・収集・解析する「政策データラボ」を置き、質の高い政策研究の実施を支援する。社会実験、ラボ実験、サーベイ調査、ビッグデータ解析などを実施するための体制も整備していく。

第五に、政策への影響力を確保する。東京財団政策研究所は、政策について考える ”think tank” だけでなく、政策を実現するために行動する “do tank” でもなければならない。政界、官界など政策過程への働きかけと同時に、最先端のネット技術などを活用し、メディアや世論などへの浸透も積極的に図る。国際会議、国際共同研究の実施などを通じ、海外にも積極的に発信する。

時代を先駆け世界に影響を与える

東京財団は20年前に、日本で初めての独立的民間シンクタンクを目指して設立された。その考え方は時代を先取りしており、東京財団の人材はその後、日本の政策形成に影響を与えてきた。しかし20年が経ち、時代の流れに追い越された部分もある。

東京財団政策研究所の設立は、再び時代を先取りする存在になろうとする試みである。日本が直面する難題に世界に先駆けて取り組み、日本だけでなく世界に影響を与える政策シンクタンクとなることをわれわれは目指している。

(文責:常務理事 加藤創太

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