税と社会保障の一体化の研究―タックスカード(納税者番号)―(2008)

実施年度

2008年

研究目的

納税者番号制度の導入には、次のようなメリットがある。
第1に、税務行政の高度化、効率化を通じた適正・公平な課税の実現である。所得税の確定申告や還付申告が急増し、金融取引が複雑化・高度化する中で、税務当局がコンピューターを活用し効率的に税務執行することは、徴税コストを引き下げ国民(納税者)利益として還元される。また、納税者にけん制効果を与えるので、タックス・コンプライアンスの向上につながり、より適正・公平な課税が期待される。

第2に、金融税制を簡素・効率的にする必要があるが、納税者番号があれば、利子・配当・株式譲渡益といった金融所得の一体化が適正・効率的に行われる。この場合、広く国民に付番する「納税者番号制度」でなく、金融所得に限っての番号で十分ともいえる。

このように、番号の導入はさまざまなメリットがあり、また、番号を活用しつつITの成果を税務行政に生かし、適正・公平な課税の実現を図るということは、近代国家にとってきわめて重要なことである。また、基礎年金番号や住民基本台帳ネットワークシステムという、生涯変わらぬ番号が個人に割り当てられており、社会保障番号導入の具体的作業も政府部内で行われて、番号の整備は進みつつある。にもかかわらず、納税者番号に限っては、導入に向けての機運の盛り上がりは見られない。

その理由としては、プライバシーの問題、導入に伴うコストの問題等々があるが、なんのために番号を導入するのか、その意義・メリットがはっきりしないことも導入議論を盛り上がらせない大きな要因となっている。

そこで、番号を導入することにより、税制にどのようなメリットが生じるのかという観点から、議論の現状を整理しつつ、具体的な課題を検証するとともに、導入に向けての具体的戦略を考えてみたい。

研究目標

番号制度は、納税者の利便に役立つ新たな税制の導入を可能とするという点について具体的な提言をしたい。

たとえば、カナダで導入されている、消費税の逆進性対策としての、低所得者への必要消費にかかる消費税相当額の税額控除(GST控除制度)や、米国・英国等で導入されている税と社会保障の一体化を図る勤労税額控除制度(Earned Income Tax Credit EITC)、金融所得一体化のための番号制度等における納税者番号の必要性と課題を検討する。

「税と社会保障の一体化研究-納税者番号制度-」メンバーリスト (敬称略:五十音順)

  • 阿部泰久(日本経団連経済第二本部長)
  • 井伊雅子(一橋大学大学院国際・公共政策大学院教授)
  • 上村敏之(関西学院大学経済学部准教授)
  • 酒井克彦(国士舘大学法学部教授)
  • 菅野幹雄(日本経済新聞金融部兼経済部次長)
  • 酒井克彦(国士舘大学法学部教授)
  • 鈴木正朝(新潟大学大学院実務法学研究科 教授)
  • 砂原庸介(日本学術振興会 特別研究員)
  • 森信茂樹(東京財団 上席研究員、中央大学法科大学院教授)※主査
  • 柳瀬唯夫(経済産業省経済産業政策局企業行動課長)※オブザーバー