タイプ
レポート
プロジェクト
日付
2012/6/18

単身急増社会の衝撃

5月14日、藤森克彦 みずほ情報総研 主席研究員より「単身急増社会の衝撃」と題する報告を受け,その後メンバーで議論を行った。

1.単身世帯増加の推移と動向

 80年代から、人口に占める単身世帯の割合は増加しており、2010年国勢調査の結果によると、単身世帯の人口は1678万人、人口比で13.1%になる。この数字を、2005年国勢調査に基づく将来推計と比べると、2015年の予測値とほぼ同じであり、単身世帯の増加傾向は5年分加速しているといえる。2030年の全世帯に占める単身世帯割合は37%になると予想されており、家族の存在を前提とした現在の社会保障のあり方に大きな影響を与えうる問題である。
単身世帯の増加要因としては、人口の増減による量的な要因と、配偶関係(未婚・離別・死別)や別居などの質的な要因も大きく、世代や性別でその影響も異なる。1985年から2005年までの変化を年齢別にみると、30代~50代の、特に男性で未婚割合が大きく上昇している他、50代~60代における離別割合の上昇や70代以降の子どもとの同居率の低下が単身世帯の数を引き上げている。

2.単身世帯の今後の動向

 年齢階層別人口に占める単身者の割合の動向を1985年・2005年・2030年(将来推計)で比較してみると、性別・年齢階層で増減は大きく異なる。特に、動向の変化が大きいのは男性で、1985年・2005年においては年齢階層が上がるにつれて単身者の割合も減少していたが、2030年においては、少子化の影響もあり、50代・60代の単身者割合が20%以上と、他の階層よりも高くなる。一言で単身者の増加といっても、その中身も変化していくことに注意が必要である。この動向の要因として大きいのは未婚者の増加である。65歳以上人口に占める単身者数・未婚者数の割合は、2005年から2030年の間に男女ともに増加するが、特に男性の未婚者数の増加とそれに伴う単身者の増加が顕著である。

3.単身世帯の増加が社会にもたらす影響と対応

 単身世帯の増加が社会にもたらす影響として、(1)貧困層の増大、(2)介護需要の高まり、(3)社会的に孤立する人の増加があげられる。(1)については、20~30代の非正規雇用者が増えているが、男性・非正規雇用者が結婚する割合は非常に低く、かつそそも正規雇用でない人の老後の年収は非常に低くなること、がその理由である。(2)は、要介護者の介護は主に子によって行われてきたが、未婚者の増加によってこれが期待できなくなること、(3)は海外に比べてNPOなどが充実しておらず、人間関係の家族への依存度が大きい日本社会のあり方に起因する。
こうした変化への対応として、(1)生活保護受給割合の増加や、貯蓄インセンティブを組み込んだ年金制度、介護施設の増加などの「社会保障の強化」、(2)長期的な財政負担の軽減にもなる、職業紹介や職業訓練などの「トランポリン型社会保障」の構築、(3)NPO法人の活動強化などの、「地域コミュニティのつながりの強化」、が必要と考える。

議論


・2010年の段階で、世帯類型で一番高い割合を占めるのは単身世帯。
・今後の未婚率の割合の変化について、男女で違いが出るのは、生涯未婚率(50歳時点)が、男性のほうが女性より高いためである。この理由として、再婚率は男性のほうが高いこと、男性のほうが女性より多く生まれること、男性は年下の女性と結婚することが多いこと、があげられる。
・高齢者の貧困率は、2007年時点で、男性38.3%、女性52.3%と非常に高い。ただし、高齢者の所得格差は大きいため、今後も高まっていくかどうかは不明。また、貧困線は全世帯所得の中央値から計算されていることに注意が必要。
・基礎年金や資力調査付き給付を先進諸国で比較すると、日本の給付水準は他国とそんなに変わっていない。
・社会支出の対GDP比を国際比較でみると低いと出ているが、これは現場の実感とは合わないのではないか。統計上、地方自治体による医療費の自己負担一部助成などは、カウントされていない。
・医療・年金については、国際比較で平均以上。そのパフォーマンスが低いということは、富裕層にお金が回っているということ。社会保障がセーフティーネットになっていないということであり、この点の改革が必要。
・高齢化率を加味して公的年金支出割合(対GDP比)をみると、日本は回帰直線よりも低い水準になっており、平均以上とは言えないのでは。
・社会保障における受益と負担に、再分配政策が入り込み、非常に分かりにくくなっている。
・イギリス・デンマーク・スウェーデン・オランダなど、高齢者の医療費は無料となっており、その安心感は非常に大きいと感じる。その他、高齢者住宅の充実など、高齢社会における社会保障のあり方には改善の余地が大きいと思う。
・家族機能の変化を、誰がどう担っていくのか。事業者や地域が選択肢にあがるが、まずこの方向性についてコンセンサスを得た上で、どう支援していくか、という議論が必要なのでは。

文責:東京財団研究員 中本淳