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日付
2007/10/23

第4回国連研究会から -スーダン情勢と日本の対応(2)

2007年9月11日
於 東京財団



【北岡】  ありがとうございました。実にいろいろな問題があって、国連がこういうところで何ができるのかとか、アフリカの紛争の根源とか、予算制度の問題もあるし、日本が何ができるのか。中国の場合はどうなのかと。いろいろな要素があるんですけれども、我々向こうにいたときからフォローして、ここで何ができるかってやっていたんですけれども、今、その責任の前線におられる小澤さん、日本が何かできる可能性って今どうですかね。
【小澤】  PKO法に限って言えば、参加5原則という厳しい枠組みを課せられておりますので、ダルフールへの要員派遣に限って言うと、手も足も出ないというのが実態です。ダルフールについて、PKO法のもとで何ができるかと言えば、物資協力に限られるということになってしまうでしょうね。ただ、私どもスーダンについて少し勉強を事務局の中でやってきておりますけれども、戦略的に見ると、より重要な問題はスーダンの南北の合意であって、そちらのほうは2011年にブラック・アフリカの国として独立する可能性が相当あると。そこのほうは和平合意が一応きちんとあって、時々ドンパチはありますけれども、日本としてもっと関心を持ってしかるべきではないかということを言っていますが、非常に国内の反応は芳しくありません。
 ダルフール問題を見ていて感じますのは、国際政治の枠組みという観点から見て、今非常に画期的なことが起きているということです。ミア・ファローが4回も5回も現地に行って、スピルバーグにも働きかけて、ナチス礼賛の映画作りの二の舞になってはだめよと言って、これを受けて、スピルバーグが胡錦濤に手紙を書いて、その結果、中国がいるので安保理では何も動かないといわれていた構図というのが変わるんですね。これは非常に国際政治を考えていく上で新しいおもしろい現象が生じているなというふうに思います。
 (現地で働いている)池部君は、以前私のところで研究員をしていた人ですけれども、最近彼が事務局に来て、現地の状況をいろいろと話をしてくれました。20万人が殺害されたということなんですけれども、ここまで事態が推移すると、変な話なんですが、今も殺害がどんどん進んでいるかというと、そうじゃないんですよね。それから和平合意の見通しという点については非常に暗いんですね。そうすると、今国連を中心にやっていることは一体何なんだろうかなと、いろいろ考えさせられる状況ですね。
 リビアが最近非常に力を発揮してきているのは、多くのダルフールに住んでいた、もとはフール人がリビアに脱出しているからで、かつリビアはお金もあって、アフリカの中でリビアとしての指導力を確立していく上でこの問題はいい材料になると思っているんでしょうね。加えて、チャドとリビアは非常にいい関係にありますので、現地の人の話を聞くと、我々気づかない点を随分と知らされると、こういう気がします。
 なお、物資協力ということを考えていく上でもなかなか難しい点があって、かつて私どものほうで南北の問題に協力するためランドクルーザーなどの物資協力をやった経緯がありますけれども、これがきちんと予定していた人たちに渡り、かつ適正に利用されるということを確保するのはなかなかチャレンジングなんですね。そのような類の物資協力をダルフールに行うと、もっと難しいかもしれないというような感じがあって、そういうふうに考えると、法律上できるとしても、果たしてうまく実行できるかという問題もあって、なかなかこの問題は厄介だなというのが率直なところです。
【北岡】  最初のほうに言われた、1年以上前から懸案だった物資協力で、物資の指導とかメンテという格好で日本の人間を出すというのも、これが難しい理由は何ですか。
【小澤】  物資の管理替えだけであれば非常に簡単なんです。国際機関に管理替えして、その国際機関が配布する責を負うことになります。そうじゃなくて、我々が例えば新たに企業に発注して、それを輸送して、現地で対象となる人たちに行き渡るようにしていくという事業をやるとなれば、最後のところがなかなか難しいんです。
 例えば、ダルフールを念頭に置くと、個々の分派した紛争当事者の勢力がいかほどかを判断する基準というのが何台車を持っているか、ということらしいんですね。それだけ車というのは盗まれる土壌にあるのですね。そういうところにわざわざ車を出すんですかと言われると、考えさせられるものがありますよね。では、適切な支援は、物資協力とした場合、他に何なんだろうと考えると悩ましいところがあります。でも、何もしなくていいということではないので、この辺は、外務省側とよくすり合わせを行う必要があります。そもそも外務省はいつ補正予算を求め、そのときは何をやるんでしょうかと聞きたいし、いろいろ調整をして進めないといけないと、こう今思っています。
【北岡】  確かにさっき言われた、今、人が大勢死んでいるかと言うと、そうでもなくて、多分、広いところですから、敵対して合意はできないけれども、戦闘は起こっていないという事態はあり得るんですよね。
【牛尾】  この前、ちみなに外交団が呼ばれて、アジアの大使中心で行って、その報告が来ていますけれども、いや、全然殺し合いはないと。平穏だよねと。この20万人死んでどうのこうのというのはちょっと前の話なんじゃないのと、こういうような認識。
【小澤】  他方、別の視点から見ると、インターネットのグーグルアースを開くと、地球儀を見ていって、ダルフールだけ別なんですね。
【北岡】  そうなんですか。
【小澤】  そこだけ色が違うんですね。じゃあ、見てみるかってどんどんクリックしていくと、旗がいっぱい立っていて、その旗はダルフールの村々の旗なんですけれども、それをクリックしていくと、そこで何年に何人殺されたかということが全部書いてあるんです。こんなプログラムは、グーグルアースの中でダルフールだけなんです。この問題を追っている人たちは、すごい気合を入れているなということを感じるんですね。戦略的に見れば、南北のほうがはるかに重要な問題だけれども、国際政治的に見ると、ダルフールのほうが圧倒的に重要なんですね。来年、TICADでアフリカの首脳が相当数来る中で、一体どうするんだろうと、心配でならないと思っています。
【北岡】  アフリカの人も、ここにすごく注目しているのは、欧米とくにアメリカが騒ぐからなのですか、それともアフリカの人もそう思っているんですか。
【小澤】  ある人に言わせると、スーダンがアフリカの中であまりにも大国なので、そのスーダンにいろいろな国がいろいろな形でちょっかい出すことになってしまうが、スーダンが安定しないとアフリカというのは安定しないんだと、こういうことを言っている人がいるんですね。
【北岡】  スーダンが安定しても、安定するかどうかわからないですけどね。
【小澤】  それはもちろんそうなんです。しかし、大国であることは間違いないですね。石油資源が多いし、スーダン自体は大変に豊かな国になっちゃっていて、ハルツームは一大建設ブームです。
【北岡】  私ばっかりしゃべってあれですけれども、もう一言だけ。中国の政策もひょっとしたら変わるんじゃないかというのは、私は2006年6月に行ったときも若干予感があって、あまり乱暴狼藉をしていると見られたくないというのは、王光亜なんかの態度にもわりあい出ていましたですね。中国の中に特に東アジアのことですが、レスポンシブル・ステイクホールダーになりたいという人もいる。そんなことは気にしないという人もいる。それに国際圧力がかかったときに、もうちょっとバランスが変わっているんだろうという感じはします。
 すみません、じゃあ、皆さん、どなたからでも。中谷先生。
【中谷】  貴重なお話、ありがとうございます。2つほど伺いたいことがあるんですが、1つは、先ほどのUNAMIDに関連して、日本が何できるかということに関してです。私も、今の段階では危ないので、すぐに日本が何かするというのは難しいんだろうと思います。ただ、UNAMIDのマンデートはいろいろあるようで、例えば経済復興のための環境整備への貢献とか、人権尊重促進への貢献とか、法の支配等への支援とか、これらは広い意味での人間の安全保障にかかわる部分だと思うんですけれども、長期的にみれば、これらについては日本として貢献することは十分可能なのかなと思います。TICADその他の会合において長期的な戦略目標みたいなのを何か打ち立てるということは、可能なのかなという気もしますけれども、そのあたりについて教えていただければというのが1点です。
 もう一つは、非軍事的強制措置、経済制裁についてです。2005年の1591決議を中心にして、いわゆるスマートサンクションとして、武器禁輸、金融制裁、有責者の旅行制裁と有責者の個人資産の凍結についてはやっていて、ただ、それよりもっと強い措置をとるべきだという意見が、たしかアメリカ、イギリス政府、それから南アのツツ大司教とか、一部のNGOとかから示され、他方で国連事務総長が、4月ぐらいですか、現段階ではサンクションを強化することは考えるべきではないみたいなことを言っています。どうしてそういうふうに言ったのか、また今の段階で、そのあたりの議論がどういう状況になっているかと教えていただければと思います。
【牛尾】  1番目の点については、TICAD?、G8との観点で何とかしなければ日本がもたないというところまで追い詰められているということです。
 2点目ですけれども、制裁の議論ですが、今はありません。というのは、なぜかというと、おそらくはハイブリッドの受け入れの話に制裁をちらつかせてやっていたというところがあって、受け入れそうだと、実は2段階目のときに受け入れを表明して、展開を考えていたときに、イギリスの態度が若干ぶれたんですね。要するに今一生懸命第2段階をやろうとしているんだから、制裁の話はやめようやという話をアメリカにしていたみたい、の感じです。それで、ハイブリッド受け入れという話になったときも制裁の議論は終わっていますので、とりあえずは制裁の議論というのは受け入れて、ちゃんと年内に展開をしようということでスーダン政府が協力する限りにおいては、これ以上進むことはないんじゃないかな。
 アメリカについてはどうなのかというと、アメリカは単独でも、要するにハイブリッドを受けなければやるよということを言っていましたけれども、現在どうなっているのかというのは不明です。それと、あまり深入りできない事情は、実はテロの話がございまして、裏ではスーダンとアメリカというのは、対テロという意味においては非常に協力をしていて、関係がいいんじゃないかということが近ごろ言われていて、そこはある程度、うわさで情報の世界ですから、我々は検証のしようがないのですけれども、あまりスーダンをアメリカとしてはとことん追い詰める気はない。
【中谷】  今のテロのお話というのは、ソマリアあたりにテロリストが逃げ込んでいるということですか。
【牛尾】  そこら辺、全部見ての話だと思いますけれども。
【中谷】  テロリストがソマリアあたりに逃げ込んでいるということがありそうでしょうけれども、スーダンあたりもかなり逃げ込んでいる可能性は高いのでしょうか。
【牛尾】  わからないですね。よくわからないです、そこら辺は。
【北岡】  でも、一般に制裁やられている国が譲歩しそうなときに制裁強化というのはないと思いますね。中国なんか絶対反対するだろうし。
【牛尾】  ますますエチオピアとエリトリアが仲悪くなると、スーダンというのもまた価値がありますね、アメリカからすると。
【北岡】  どうですか、小澤さん。
【小澤】  一つ話をややこしくしているのは、国際刑事裁判所の訴追があって、すべての名前は明らかにされていませんけれども、間違いなく有力な人たちが訴追対象です。2人明らかになっているんですかね。国に対する制裁の話は別として、政権の中枢にいる人たちが訴追対象ですから、これはこれで力学を複雑にしていると私は思います。
【藤重】  貴重なお話、どうもありがとうございました。幾つか教えていただきたいんですが、まず、ダルフールの紛争は国境を接したチャドや中央アフリカに飛び火しているということなんですけれども、来年のG8やTICADを念頭に置いて何かしなければいけないということなら、チャドや中央アフリカの避難民などに対しての協力などもあり得るかなと思っているんですが、例えば、EUなど部隊を派遣するとか、しているとかという話もありましたけれども、スーダン政府はアフリカ以外の国の介入をあまり喜んでいないという状況だと思うんですけれども、EU部隊の展開ということを考えると、チャドや中央アフリカへの日本のもうちょっと大きなプレゼンスというのはあり得るのかなと思ったんですけれども、お話がちょっとなかったので伺いたいなというのが1つです。
 あと、中国なんですけれども、かなり露骨なアフリカへの進出というのは、アフリカからも、ほかの国々からもちょっとひんしゅくを買っているところで、ちょっと変わりつつあるのかなというお話があったんですけれども、私が見た資料で、7月末の安保理決議で、結局、中国の反対で少し決議案がトーンダウンしたという話をちょっと読んだんですけれども、この辺の事情というのはあまり、私は、結局、中国の肩入れでスーダン政府のほうに有利な方向に国際政治上の力学が動きつつある面もあるのかなと思ったんですけれども、この点はどう評価されているかということです。
 あともう一つ、日本の対応なんですけれども、アフガンなどは日本はDDRなどある程度やっていますけれども、日本のダルフールに対する貢献策としてDDRの話がなかったんですけれども、これがないのは、とりあえず和平がまだ成立していないという状況であるのかどうかということと、和平合意が成立する見通しはあまり明るくないということだったんですけれども、仮に成立した暁には、そういった方向に動いていく可能性があるのかどうか。この3点をお教えいただければと思います。
【牛尾】  チャドと中央アフリカの話は、まさに日本ができる余地があると。正直言うと、フランスに言われて、この指とまれと言われましてね。要はこれは拡大するものだという認識は持っていて、これはワンセットでやらなきゃいけないなと思っていたので、拡大コンタクトグループでは、具体的にチャドと中央アフリカに難民・国内避難民対策で10億円ぐらいですか、食料と緊急援助をやることを決めました。引き続きこれについてはやるつもりなので、2弾目、3弾目はございます。
 2つ目、EUの話ですが、私の頭の中で何とか貢献できればよいなと考えている段階です。
 3点目のDDR、中国の話か。中国は、とは言うものの、中国も最初は国連の話については、要は押しつけるべきではないということを言っていましたので、そういう意味では、中国の当初のスタンスからすれば、結局は国際社会が望むハイブリッドまで持っていったので、ある程度は中国も妥協し出したのかなと。
【藤重】  合意ができたこと自体はよかったと。
【牛尾】  だと思いますけどね。あとDDRの話ですが、これはあちこちでやっていって、当然、和平ができた後はワンパターンのごとくDDRは進むと思います。
【北岡】  どうですか、池内さん。
【池内】  中近東一課からアフリカ一課に移った、ということで、晴れてアラブから手が離れたということで安心しているんですけれども、実際問題として、スーダンの特に北部についてはアラブの、特にエジプトが元来の権利を主張しているような状態であったわけです。歴史的には。それがどんどんアフリカのほうに統合されていく方向は明らかであって、アラブ側からの、特にアラブ連盟などの関与もかなり形式的で、ほとんど実態的な影響は及ぼしていないなというのが実感でございます。
 アフリカの現地の感覚から言えば、これはよくある紛争であって、よくある騒動であって、それがある人たちがこれは虐殺だと騒いで、それを国際メディアが大きくして、白人のお金持ちがやってくると問題になるんだという、そういう一般的な受け止め方は定着しているようです。これは同じようなことが、アラブ側にもいえるようです。それに加えて、屈折した感情として、元来がアラブのものであるという支配者意識をアフリカに対して持っている。そこに手を突っ込まれているという意識があるわけですね。そのせいなのでしょうか、アラブ側、特に昨年の夏までの段階では、虐殺といいますか、人など死んでいないという報道が圧倒的で、よくある陰謀論みたいなもので受け止められていた。イラクに次いで、レバノンに次いで、スーダンにもまた手が突っ込まれたという、受け止め方で、アラブ側の社会の意識を悪い方向に行かせる一つの大きな要因にはなっていたと思っております。
 ただ、アフリカの周辺諸国と連動した込み入った問題である、そういう込み入ったところまで含めたアラブ側の深い理解と関与というのは、どうもあまりないんじゃないかというのが、遠くから見ているとそういう印象です。むしろ現場でアラブ側がどういう関与をしているのかというところを感じられるところがあったら、ぜひ教えていただきたいと思います。これが質問という意味で1点目です。
 それ以外の、逆に、私は中国の関与ということから言いますと、素人考えで見てみますと、中国が受け入れろと強く言うと受け入れたという印象が非常に強くて、そうしますと、この問題への対応を通じて中国のビヘイビアを変えさせるとかいう以前に、中国はここまで影響力があるのかと。欧米、アメリカがあれだけがんがん言っても何年間も受け入れなかったものを、中国が乗り出した瞬間に、次の週ぐらいには受け入れているわけですから、国連とAUの合同ミッションですね。このすさまじい影響力というのはちょっと、中国脅威論ではないですけれども、むしろここまで来ているのかという実感をいたしました。 中近東一課からアフリカ一課に移った、ということで、晴れてアラブから手が離れたということで安心しているんですけれども、実際問題として、スーダンの特に北部についてはアラブの、特にエジプトが元来の権利を主張しているような状態であったわけです。歴史的には。それがどんどんアフリカのほうに統合されていく方向は明らかであって、アラブ側からの、特にアラブ連盟などの関与もかなり形式的で、ほとんど実態的な影響は及ぼしていないなというのが実感でございます。
 アフリカの現地の感覚から言えば、これはよくある紛争であって、よくある騒動であって、それがある人たちがこれは虐殺だと騒いで、それを国際メディアが大きくして、白人のお金持ちがやってくると問題になるんだという、そういう一般的な受け止め方は定着しているようです。これは同じようなことが、アラブ側にもいえるようです。それに加えて、屈折した感情として、元来がアラブのものであるという支配者意識をアフリカに対して持っている。そこに手を突っ込まれているという意識があるわけですね。そのせいなのでしょうか、アラブ側、特に昨年の夏までの段階では、虐殺といいますか、人など死んでいないという報道が圧倒的で、よくある陰謀論みたいなもので受け止められていた。イラクに次いで、レバノンに次いで、スーダンにもまた手が突っ込まれたという、受け止め方で、アラブ側の社会の意識を悪い方向に行かせる一つの大きな要因にはなっていたと思っております。
 ただ、アフリカの周辺諸国と連動した込み入った問題である、そういう込み入ったところまで含めたアラブ側の深い理解と関与というのは、どうもあまりないんじゃないかというのが、遠くから見ているとそういう印象です。むしろ現場でアラブ側がどういう関与をしているのかというところを感じられるところがあったら、ぜひ教えていただきたいと思います。これが質問という意味で1点目です。
 それ以外の、逆に、私は中国の関与ということから言いますと、素人考えで見てみますと、中国が受け入れろと強く言うと受け入れたという印象が非常に強くて、そうしますと、この問題への対応を通じて中国のビヘイビアを変えさせるとかいう以前に、中国はここまで影響力があるのかと。欧米、アメリカがあれだけがんがん言っても何年間も受け入れなかったものを、中国が乗り出した瞬間に、次の週ぐらいには受け入れているわけですから、国連とAUの合同ミッションですね。このすさまじい影響力というのはちょっと、中国脅威論ではないですけれども、むしろここまで来ているのかという実感をいたしました。
【牛尾】  私の認識もまさに同じです、正直言うと。個人的に、これ役所としてシュアされるかどうかはわかりませんけれども、私の印象はそこまで中国というのは影響力があるんだなと思いましたね。
【小澤】  若干異論を述べたいと思います。確かに中国の顔を立てて受け入れると言ったんですけれども、受け入れるというのは、本心から言っているかというと、私は全然そうは思わないんですね。今度のハイブリッド・ミッションについても、今展開しているAMISに加え、残りのすべてはアフリカだということを主張しています。AUのコナレさんもそれに説得されてしまい、全部アフリカでいいと言っているわけです。潘基文さんは昨日までダルフールに行っていましたけれども、「いやいや、アフリカはもちろんありがたいんだけれども、それだけでは足りないでしょう」と発言しています。当たり前ですよね。アフリカだけでやったら、そもそも輸送能力がないので成り立ちようがないですね。まあ、そういう具合にスーダンはしたたかなんです。
【牛尾】  スーダンはね。
【小澤】  そういうことをもって中国のすさまじい影響力が発揮されたというふうに評価するか、それとも、そこはお互いツーカーで、難しいところを少し乗り越えて、次の局面でまたやりたいことをやると考えていると評価するかですね。中国はどんどん武器を輸出しているので、紛争の終着に向けてまっしぐらなのではないでしょうか。私は相当ひどいことが行われて入ると思います。
【北岡】  やっぱり安保理で拒否権を持っている国が反対と言わなくなったら、それは通ります、決議はね。だから、その情勢を見て、中国が国際社会の圧力の前で公然と立ちはだかるのは損だと思って、そこからはおりると。しかし、事実上の影響力は残すというふうに非常にしたたかに行動してきたと思います。
 私は2006年6月に行ったんです。その前後に技術ミッションを派遣したんですが、そのときの受け入れる、受け入れないも、ほんとうのアラブ流のしたたかな交渉でさんざん粘って、ちょっとずつ譲歩して時間稼いで。だから、今回のメインリー・アフリカンのUNPKOというのを考えていたんですね。それはどんどんオールモースト・アフリカンになってきて、これは非常に能力低いんですよ、おそらく。役に立たない。現地にこれまでアフリカでAUが出している部隊がダルフールにいたんですけれども、現地のキャンプの人に聞くと、全然役に立たない。何も助けてくれないと。いるだけだということをよく言っていましたね。だから独自の基準で行動をすることはあまりないし、だからどんどん時間を稼いでやっと強力な手を打ったときには、政府イニシアチブで事態が沈静化しているということになるんじゃないかなという気がしますけどね。中国のどぎつい進出も何か合弁会社とか非難されにくい形にシフトしてきているという印象ですね。
【北岡(夫人)】  すみません、きょうオブザーバーの素人が素人の質問をさせていただいて非常に恐縮なんですけれども、今のアフリカにおける中国の影響力ということに、私、個人的にも非常に興味があるんですけれども、もう少しイギリス、フランスというか、ヨーロッパの勢力と中国の勢力との争いとか、その辺のことを、今勢力がどのようになっているのか教えていただきたんですけれど。
【牛尾】  公式には、イギリスもフランスも何を言っているかというと、日本もみんなそうなんですけれども、援助のボリュームを考えたら、中国、新興ドナーがアフリカに来ることについては排除できないだろうと。建前の上では賛成であると。歓迎するよと言いつつ、じゃあ、裏では何を言っているかというと、ちゃんと援助のルールを守ってやろうよねと。すなわち、何か物をつくるときに全部タイドで、中国の企業が来て、全部中国人を中国から持ってきて、資材も持ってきて、物をつくったら、そのまま置いていって終わりみたいなのはだめだよねと。要するに援助をやるからには技術移転もしなきゃいけないし、雇用もつくらなきゃいけないよねというような話を、日本も含めてみんなしているんですが、その背景というのは、フランスが特に、どうなのか、フランスの事例をよく聞くので、イギリスなんかはどう思っているのかよくわからないですけれども、自分のテリトリーにフランスが入ってきたときは激しくやっています。
 というのは、アフリカで現地企業と言われるのはフランス人がやっているところが多いものですから、そういうような感じ、表はそうですけれども、裏は相当排除しようみたいなことはやっている。そうは言うものの、ルールを守ってと言っても、背に腹はかえられない事情がございますので、要するにフランスが言うようなことがどれだけ通用するのかなというのはあるんじゃないかなという気がしますけども。
【北岡(夫)】  ありがとうございます。
【滝崎】  今の話で、具体的なデータというのは確かにないんだろうと思いますけれども、よく象徴的に言われる話というのが幾つかあって、例えば、スーダンの関係で、何でアメリカがすごくスーダン、特に南部の話に興味を持っているか。1つは南部のほうはキリスト教徒が多いわけですね。キリスト教徒が人道的にひどい目に遭っている。だからこれは無視することはできないということを言われていたという経緯もあるし、それからスーダンをほっとくと、どんどん中国が入っていって、さっきも石油の利権の話とかありましたけれども、みんな中国に石油の利権を取られてしまうかもしれない。それだったら何らかの形でアメリカは政府を挙げて関与していったほうがいいんじゃないかという発想があったというふうに言われている。それで、数の問題でどのぐらいの今影響力かというのはわからないですけどね。
 もう一つ象徴的な例は、今年の夏にガーナでアフリカ連合のサミットがあったんですね。その時に、一番のメインの会議場というのは中国の援助でばーんと建ててやったという結構立派な会議場だったらしいんです。 象徴的な例なんですけれども、そういう目立つところをぼーんぼーんとやっているので何となく、何となくというか、本当にそうなのかもしれないですけれども、中国の影響力というのがすごく目立ってきているということなのかもしれないですね。
【牛尾】  つい最近もそうなんですけれども、昔からそういう傾向がございまして、この前、シエラレオネという国に行ったんですけど、もう1970年代につくったスタジアムがまだ残っているんですね。中国の援助は、まさに滝崎課長がおっしゃったような感じの援助は昔からやっていたんだろうと思いますけど、つい最近、特にそういう傾向がありますよね。ただ、中国も注意しないといけないのは、このごろは、ようわかったと。言い出したのは、水は大切だよね、あるいは病院は大切だよねと言って、そっちのほうにも手を伸ばしているんです。だから象徴的な案件だけを取り上げて、中国の援助はそれだけですと言うと、我々の認識は外れてきていて、日本が従来やっているようなところまで来ているということだと思います。
【北岡】  最近、武器輸出の国連への登録の中国はレポートを出したと思うんですけれども、こういうのは載っているんですか?
 この間、北京の会議に行ったら、軍事の透明性の話をしたら、中国は透明化しつつあると言って、こういうのを出している。日本もやったらどうか。日本は武器輸出なんかしていないんだと言って、あんたそんなことも知らないのかと言ったことがあるんですけどね。この中国のレポートは何年間もずっとサボっていて、久しぶりにそのようなものを出したということなんですけどね。
 今は、私、本にも書きましたけれども、チャドは最近中国と国交を結びましたが、その前、チャドが台湾と結んでいたころは、チャドの首都陥落寸前までいったときの反乱軍は中国製の武器で武装していたというニュースでチャドの大統領が激怒したなんて言っていたんですけどね。写真をいっぱいもらって、確かにあるんです。日本製の車もありますけどね。これは別に我々あげたわけじゃない。小澤さんがおっしゃっていたあれですよね。向こうの軍閥みたいなやつは日本の車を何台持っているというのは、資産目録みたいなものですよね。アフガニスタンで軍閥に会ったときに、だあっと行列で走るんですよ、日本車を連ねて。
 さっき出ましたけれども、今、貧しいですけれども、日本は南部に協力はできるんじゃないかなという気はしますけどね、むしろ。
【小澤】  関心持つべきなんですよ。
【北岡】  やっぱりだめなんですか。
【牛尾】  いや、関心を持ってやろうとしているんですが、一つ問題なのは日本の援助の制度なんです。要は二国間援助は中央政府からやらないと本格的には出ないので、北から援助要請が出てこないとだめなんですよね。そこがすごいネックで、そうすると、中央政府相手だと草の根しか出ないみたいな形になっちゃうので、どういう手があるのかわかりませんけれども、何か考えなきゃいけないなと。
【北岡】  ちょっ誇張された話ですけれども、南部は舗装道路が何キロしかないと言われているんですよね。
【牛尾】  その舗装道路は日本がやった道路なんです。あとは白ナイルのところに、ジューバーというところで船着場、JICAがやって、ほかの国が出てきて何か目立つ案件をやっているかというと、何もないんですよ。要するに口ばっかりで、実はされていないので、何もやっていなくて、やっぱり日本の援助が一番目立っているという感じで、こういう感じであれば、どんどんつぎ込んでいっても、得はすることはあっても損することはないと思います。
【北岡】  南部は比較的目立っていますね。教育とかね。
【池内】 ちょっとお聞きしにくいような気もするんですけれども、例えば、グーグルアースで、ダルフールの問題が世界の大問題であると宣伝されるとか、欧米のいわゆる上層の市民社会と言ったらなんですけれども、そこら辺の興味がスーダン問題にかけて非常に高いわけですね。世界的な影響力、発信力を持った人たちが中心になっていて、それに対する反発はもちろん現地ではある。反発する以前に、かけ離れた世界なんですけれども。欧米で関心を喚起する側では、その中心にやっぱりクリスチャンの団体がある。アメリカのある種のファンダメンタリスト的な人たちが入っているということは、特に現地では非常に強く言われるわけですね。アラブ側では非常にこれを問題にしている。それは実感としてどうなんですか。
【牛尾】  これは確かにジュバへ行くと、わけのわからない教会のマークがあったりして、これはよくあれなんですけれども、西アフリカへ行くと特にそうですけれども、エバンゲリアンが多いですよね。今、増えていて、それと同じようなマークの教会は見ました。当然入っているんだろうなという感じはします。
【北岡】  どんなキリスト教なんですかね。
【牛尾】  よくわからないですけどね。特に今一番問題なのは西アフリカですよね。特にコートジボアールなんかは、それが完全に政治の裏にくっついちゃっているような感じになっているものですから。
【池内】  例えば、南が独立したときに、アメリカの宗教団体がスーダンの南部政府徒深い関係を持つ、資金とか人脈で南部の政府と強く結びつくということはあり得るんでしょうか。
【牛尾】  よくわからないですけどね。検証のしようがないのでよくわかりませんけれども、あり得るんじゃないでしょうかね。そういう国がありますのでね。西アフリカのコートジボアールなんかはそういう国ですから、はっきり言うと。
【小澤】  難しいのは、要するに南部地域の北部に油田があるんです。それで今は一応利益配分の取り決めが和平合意に含まれているのでいいんですけれども、ほんとうに独立した後、パイプラインは北のほうに行くんですよね。一体どういうふうにしてきちんと整理できるのか。何ともよくわからないんです。
【北岡】  今は北のほうは全く毒されています。反対勢力は存在空間はほとんどありません。
【藤重】  もう一つ伺ってよろしいでしょうか。不勉強でちょっとよくわからなかったんですけれども、南北の紛争というのは一応2005年ですか、今終わったということと、でも今、続行中のダルフールの紛争というのは、この2つがどういうふうに関連性があるのかってちょっと。
【牛尾】  もう一度。
【藤重】  南北の紛争は終わったと、完全に過去のことと考えてしまっていいのか。
【牛尾】  一応一区切りついたと。
【藤重】  まだ、どこで境界線を引くというのが決まっていないという話、石油の問題もあると。一応終息した上で、完全に終息していない南北の対立と、ダルフール紛争とどういうふうに関係しているかというのがちょっとよくわからなかったんですけれども。
【小澤】  基本的には別ですよね。
【牛尾】  別ですけど、起こるときは、要するにそこに間接的な要因があったと。要するに兵力張りつけの話ですよね。
【藤重】  じゃあ、この南北、例えば国境確定ですとか、石油埋蔵の分配の問題がダルフールに何か影響を与えるということは、特に今のところはなさそうな感じ。
【牛尾】  どうですかね。よくわからないですね、それも。
【北岡】  一応別だと思います。それは黒人対アラブという図式は南北でははっきりしているけれども、ダルフールでも多少はありますよね。だけど、大きい国のちょっと別のところだし、直接には関係ないですね。
【藤重】  わかりました。
【牛尾】  ただ、嫌な話があって、今、和平交渉に参加しないヌールという派閥は、非常に南の政府とは昔からいいという話。
【藤重】  南の政府。
【牛尾】  要するに南ですね。その関連がどうなのかというのはよくわかりませんけれども、何かのたびに、どういう文脈かわからないですけれども、よく出てきます。
【北岡】  でも、ちょっと離れていますよね。南のほうは、むしろもっと南部との国境線でいろいろ危ういんですよ。ウガンダから反乱軍が入ってきたりね。フールというのはダルフールの南のほうですか、どっちかというと。
【牛尾】  そうですね。
【北岡】  じゃあ、わりあい近いんですね。さっき小澤さんのリビアに行っているのは何人とおっしゃいました?
【小澤】  フール人。もともとダルフールというのは、ダルエスサラームと一緒で、フール人の住みかという意味ですから。
【牛尾】  フールカントリーですから。
【北岡】  どれぐらいいるんでしたっけね。人数。
【小澤】  リビアには相当入っている。70万だか何だか。
【北岡】  これ、見たとおり、後で引いた線ですからね。定規で引いた線だから。
【小澤】  しかし、ダルフールはスルタン国だったんです。驚きましたけど、独立していたんですね。
【北岡】  エジプトとの国境、歴史の背景を見たら、何かエジプトからだんだん攻め上ったり、行ったり来たりしているんですね、この辺ね。だから一緒にダルフールへ行ったときのロシア人の大使が、アラブ人から言えば、黒人を襲撃するのは、これは伝統的に昔からやっていることなんだ。何で今ごろ非難されるんだと彼らの多くは思っているに違いないと。
【牛尾】  これはスーダン政府の説明なんです。
【北岡】  だからこの件の一つの特徴だと、ロシアは前面に立っていないとかですね。むしろわりあい静かですね。関係ないところは知らんというのは、はっきりしていますね。
【鶴岡】  自分たちもやっていたから。
【北岡】  スーダンを守ろうということはしないでしょう。
【岩澤】  7月にジュネーブで開かれた自由権規約委員会でスーダンの人権状況に関する国家報告書が審査されました。3時間のコマを2コマ使う予定でしたが、結局、延長して3コマ使って審議しました。ジュネーブ駐在国連大使が冒頭発言をして、あとはほとんど本国の次官ぐらいの人を代表とする10人ぐらいの代表団が回答を行いました。審議自体は淡々と進みました。審議の後で委員会が総括所見というものを出します。その国の人権状況についての懸念事項や勧告を含んだものです。その際に問題となったのは、国際刑事裁判所と協力することを求めるかどうかでした。人権侵害をした人をきちんと処罰することだけを求めるか、国際刑事裁判所と協力するという文言を入れるかです。結局は、国際刑事裁判所と協力することを求めることになりました。
安全保障理事会は、ダルフール問題を国際刑事裁判所に付託することにしたわけです。国際刑事裁判所がどの程度活発に訴追を行うかわかりませんが、国際刑事裁判所の動向は和平の動きに対して波乱要因になるのでしょうか。
【小澤】  それは間違いなくハルツーム政府の関与でダルフールの問題というのは生じているんですよね。訴追のほうはなかなか進まないと思いますけれども、仮に進むと、政権基盤にも影響を与える話になって、一体これは、ダルフールの和平合意をつくるということとの絡みでどういうふうになるんだろうと考えさせられます。私には最後こうなるというのが何も見えないんですよね。みんなで格好つけているという感じがするんです。これもやっている、あれもやっていると。だけど、現実に現場ではこれといって何も行われていないと。
【中谷】  国際刑事裁判の場合、現在進行中の紛争について、現政権の指導者が有責者であるというのを、それを現時点において裁判するというのは非常に難しいんだろうという感じがしますよね。これは証拠の収集の問題も含めてですけれども、独裁者が政権から追われて政権が転換した場合には、有責者の責任を追及するのはやりやすいですし、ストーリーとしてうまくいくんでしょうけれど、まさにオン・ゴーイングの紛争としてまだ問題のある政権が権力を握っている場合には、責任追及は難しいですね。
【北岡】  大体共通の了解として、不処罰禁止と言うんですけれども、不処罰禁止でどうやって平和を実現できるのか私はよくわからんのですけどね。当面、棚上げにしないと平和なんかできないんじゃないかと。
【鶴岡】  僕はそれ知らなかったですけれども、まさにこのスーダンでPKOをこれから出そうかというようなことを言っているときに、国際刑事裁判所を登場させなければいけない理由がどこにあるのかと。国際法の斬新性と明らかに矛盾しているわけですね。まだ権限とか、実績とか、評価とか、そういうものが全然確立していないものを未解決の紛争に適用しようというのは、これは法じゃなくて政治になっちゃっているわけですね。国際刑事裁判所はこれから法として確立させなきゃいけないのを、もともとの特にヨーロッパのいろいろな団体の意欲、意図というのは、政治的な道具として立てようとしていたのを法という衣をかぶせたところがあったので、いろいろそれをまさしく法的な機関に直すように随分努力したわけですけれども、今は僕は法的な機関として運用することはもちろん可能だと思いますよ。
 だけど、それは翻っていうと、実は、例えばフランスのような国は、そのときに刑事裁判所への付託については、安保理前置主義ということを主張したんですね。安保理が付託を認めた紛争についてのみ刑事裁判所は管轄権を持つことができると。これもきわめて政治的な発想だったわけです。それだと法の支配の議論ではなくて、大国が認めたものだけが国際的な裁きの対象になっていくという好ましくない状況になるから、それは排除したら、そうしたら代表的大国であるところの米中露は入っていないわけですね。そうすると、そこの部分についても半端なところがあるんだけれども、逆の政治的な傾向を持っている意見がまだ強力に残っていて、つくり上げたところで、今度はそっちの慣行というか、先例をどんどん組み立てちゃっているわけです。僕はそれはほんとうに好ましいかどうかというのはきわめて疑問だと思うんですね。
 もう一つに、国際裁判のほうが望ましいんだという、これもあまり根拠のない信仰があって、例えば、ポル・ポトの問題についてのカンボジアであるとか、東ティモールについての国際的な裁きを先行する議論とか、そういう国内でやらせることが本来必要なところに国際が入っていってやることがより好ましいんだという、必ずしも十分僕も今詳しく申し上げていなので、ちょっと大ざっぱなんですけれども、雰囲気としてはそういうのがあるんですね。特にこれを強く持っているのはジュネーブの人権団体なんです。
 それで、ニューヨークの政治局にもジュネーブの人権団体がジュネーブの国連本部との関係で出してくる報告については、基本的には手を入れないんですよね。それに手を入れることによって、人権の総本山はジュネーブだということになっているので、ヨーロッパ的な人権のいろいろな団体がある中で、事務局はそういう人たちとも相談しながら、人権の砦を守っているんだというところにアメリカ的なというか、ニューヨーク的な政治の議論でもって介入することを国連事務局は非常に躊躇しますね。お互いの権限をなるべくさわらないという国連の伝統もありますけど。そうすると、ブレーキがかからないと、そっちの大国が入っていないような場の議論というのは、どんどんヨーロッパ人権団体的議論が主流になっちゃうんです。僕はちょっとそこははてなという気がしますけどね。岩澤委員は独立ですから、もちろんご判断は結構なんですけどね。
【小澤】  2005年の2月、3月だったですね。安保理はスーダンのICC付託問題で、2ヶ月間、そればっかりやっていたんです。いやーと思っていましたけれども、そもそもICCに付託されているのが、あとはウガンダの「神の抵抗軍」だけですよね。
【岩澤】  中央アフリカがあります。
【小澤】  なるほど。何かオン・ゴーイングのものだけが付託されていて、もちろん管轄権は新しいものにしかないので仕方ありませんが、あまりさい先いいとは言いがたいですよね。
【北岡】  3月の月末に11時50分ぐらい、夜中に決めたんですよね。月末で、ブラジルが議長国で、次の議長国は中国だと。中国だと真剣にやらない可能性があるというので、どうしても。月末に議長国が終わってご苦労様というエンド・オブ・ザ・マンス・プレジデンシー・パーティーというのがあるんですね。レセプション。それでダウンタウンへ行って、かなりブラジルは頑張って立派なレストランでおいしいごちそうを出してくれたんですけれども、そこでごちそうを食べてからもう一遍戻って、最後に採決したのを覚えていますけど。しかも、さらに言えば、日本は何でこんな、日本はお金を出さなくちゃいかんわけです、相当なね。我々はいつも怒っていました。ICTRね。
【鶴岡】  ICCができたので、もうICTRも何もやらなくて済んでよかったなと思ったら、日本は今度入るので、どっちへいっても費用負担については逃げられない。
【北岡】  幾らぐらいになるんですか?
【小澤】  22%ですね。
【北岡】  実額でどれぐらいですかね。
【中谷】  20億ぐらいでしょうか。
【小澤】  30億とか言っていた。
【鶴岡】  30億、一会計年度。
【小澤】  大きいですよ。
【鶴岡】  30億円というのは、2,000人の人間を南部スーダンで展開しているWFPの本部経費に、日本が出している本部経費を上回りますね。それは日本が22%のICCを見ているというのは、当然アメリカは入っていなくて、上限まで引っ張られているからということなんですけど。
【北岡】  非条理な世界ですね、ほんとに。
【小澤】  んー、何かちょっとね。複雑な心境ですね。やっているのがウガンダとスーダンと中央アフリカ。
【北岡】  ここで処罰されても、死刑にはならないわけですよね。
【鶴岡】  当然でしょう。ヨーロッパが許しませんよ、そんなことは。
【北岡】  現地の法感覚とはすごくずれがありますよね。
【鶴岡】  だけど、強いて一ついい面があるとすればということで言えば、仮にスーダンが自分の権限で裁判をすれば、それはやっぱり国際的にも一事不再理が成立しますから、そこで裁かれた人は国際刑事裁判所に訴追されないで済むわけです。それをあくまでもやらないで頑張っちゃうと、それは安保理決議で強制手段云々ということにいくわけですけどね。スーダンが今はそういうデモクラシーの剣みたいなのがぶら下がっているという認識のもとに、まだそこまで行っていませんけれども、安保理決議で予告みたいなのが出れば、それが実際に強制力を持って執行される次の決議が採択されるまでの間に、今からすぐじゃなくても何年か後に、自国の中で当時のことを振り返った上でしっかりした刑事裁判をやれば、それで行かないで済むということはもちろんできるわけですね。それからもともとスーダンは、今入っているのかな、ICCに。おそらく入っていないでしょう。
【北岡】  入ってないです。
【鶴岡】  だからそれはもともとICCの付託をみんなでただやれやれと言ったって、条約上はスーダンには何の義務も出てこないわけです。それはもっと7章の手続を踏まえないとできないわけですから。そういう点でいうと道義的な問題提起ということだと思うんですね。
【小澤】  安保理決議による強制付託なんだ。
【鶴岡】  それは普通はやらないわけです。
【小澤】  やっちゃったんだ、2005年の3月に。
【鶴岡】  だから普通はやらないことをあえてやるかという、ハードルが幾つかあって、あれは僕はちょっと理解できないんだ。
【小澤】  だから2カ月議論したんだ。
【鶴岡】  国際刑事裁判所を安保理決議の実施機関にするというのは、もともとICCの位置づけとして適当かどうかということは、本来もう少し議論しておくべきだったと思いますけどね。
【小澤】  2カ月間、そればっかり議論したんだ。かなり画期的なことが行われたんですね。
【鶴岡】  まさしくそうです。
【北岡】  でも、アメリカだと普通はノーというやつを、これはやりたいから目をつぶって棄権したんですよね。
【小澤】  そう。
【鶴岡】  だけどね、P5で過半数が入っていない裁判所に付託するということをP5が決めると。ちょっとどう考えても世の中の道義に反しますよね、これは。自分もそうなったら受け入れますということがあれば、それは正義だと言えるかもしれないけど。
【北岡】  通常そういうことをやるのがアメリカだけなんですけど、ここではもっと、3つもいるわけです。3つね。
【鶴岡】  3つね。
【北岡】  ダルフールのPKOは今どれぐらい人がいるんですか。2万6,000になるのはいつごろでしょうか。
【牛尾】  年内に、国連の目標としては要するに。
【北岡】  年内にここまでいくの?
【牛尾】  僕はあり得ないような気がしますけど。
【北岡】  無理だろうと思います。
【滝崎】  現在、多くの分野で必要数を超える派遣の意図の表明がなされているとのこと。そういう国には国連が技術ミッションか何か出して、ちゃんと適格性があるかというのを判断するというのをやっています。
【牛尾】  ただ、これは事前に言われていたのは、どんなに早くやっても来年の春かなとか何とか。
【北岡】  これは幾らかかるの?
【牛尾】  調べていない。
【滝崎】  それもさっきICCの話が出たので、ちょっと皆さんに、あまり大きい声では言いたくないんですけれども、言わないと隠していたと言われるので言っておこうかなと思ったんですけど、今、最大年間25億ドルと言われているんですね。
【北岡】  そうですね。大体1万人で10億ドルですから。
【滝崎】  そうすると、日本は16.6%、大体500億円ぐらいになる。今、日本のPKOに出している分担金というのは年間1,000億円なんです(滝崎注:2006年は多少減り、6億6,695万ドル)。だからそれの約半分に相当するぐらいの額がぼーんと出ていくことになる。
【小澤】  ただ、事はそう簡単じゃないんですよね。1万1,000と言っても、AMISが今7,000ぐらいですか。足すと相当な数になるが、欧州が参加しないと動けない。欧州の参加について、コナレとバシールは、これはアフリカでやりますと言っているわけですよね。それが現状です。国連のほうでも、どんなに早くても来年春。おそらくもっと遅いだろうというふうに踏んでいるんだと思います。
【鶴岡】  本来は、ヨーロッパを嫌がるというのは、当然、旧宗主国の問題と宗教的な問題と、文化的なところがどのぐらいあるかは別として、そういう抵抗感をアフリカの人が一般的に持つということは何ら不思議はないわけです。じゃあ、アメリカはどうかと。支配の過去を持っていないアメリカというのは、今はアラブとの関係とか、途上国との関係、一般的に言って非常に抵抗があると。ほんとうはそういうときには、日本が入るのが一番アフリカ側からすれば脅威感がない。しかも、非常に壁というか、違和感を持たないで済むという点では人種的、民族的には受け入れられやすいんですけれども、残念ながら、日本にはその能力がないと。そうすると、世界の中でいろいろな課題を各国がそれぞれ自分の能力の、あるいは得意分野でもって担い合うことによって、全体の平和とか繁栄を維持するという観点からすれば、本来、日本でなければ果たせない任務というのがそこにおのずからあるにもかかわらず、そこを自己制約的に対応するということによって不作為による世界平和の破壊につながっているおそれがある。
【北岡】  これ、しかし、インドはだめですか。
【鶴岡】  いや、インドはどうかな。
【滝崎】  インドも確か出すとかいう表明はしていましたよ。
【牛尾】  インド、パキスタン。
【鶴岡】  それは常連だもの。
【北岡】  イスラム系は問題ないですか。パキスタンならいいのかな。
【滝崎】  あとマレーシア、インドネシアというのが表明したような気がしましたけどね。
【北岡】  この辺は大体国家ビジネスになってきていますからね。
【鶴岡】  イスラムの系統もあるからな。
【牛尾】  あと、ヨーロッパはノルウェーとか。
【滝崎】  ノルウェーとかあそこら辺が意図は表明して、何人とか言って出しています。
【北岡】  インパキなら骨格になり得ますけど、アフリカだけだと、とてもね。
【鶴岡】  最近マレーシアは非常に熱心なんですね。KLのそばにPKOセンターもあるし、マレーシアは参謀を出せるんです。参謀を持っているんです、そういうところへ派遣するような。これはアセアンの中でもお互いやっていますね。マレーシアとタイあたりはそういう技術を十分持っていますね。英語もマレーシアの場合はよくできると。
【小澤】  ハイブリッドというのは、アフリカ人のSRSGで、アフリカ人の軍司令官なんですね。指名された軍司令官がルワンダの人ですが、この人はNGOから虐殺にかかわったという指摘を受けてしまい、国連は困っちゃって、一たん名前を出したけれども、調査しますと言って、そういう過程を経ていくんですね。だから事は簡単じゃないです。確かに潘基文さん、非常に動き回って少しずつ進んでいるというイメージをつくっているけれども、私から見ると、基本はまだ動いていない。
【北岡】  AMISのヘッドクオーターで幹部と話しましたけれども、全然違います。欧米系のコマンダーとか、参謀の事務処理能力とか何かと。
【小澤】  部隊を派遣する側の心理から言うと、アフリカの司令官のもとには出したくないですよね。
【北岡】  さっきの二重払いというのはひどいですね。お金を出しているのを、行っていないからまた払えというのはちょっと。
【牛尾】  だから給料を払ってないから、ルワンダとかセネガルとか怒っちゃって引き上げるぞって騒いでいて、でも、みんなEUとか金積んでいるよね。どうして流れないんだみたいな。AUの行政