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日付
2008/12/26

2008年度第6回国連研究プロジェクト研究会(議事録概要)

2008年度第6回国連研究プロジェクト研究会(議事録概要)
「今期国連総会の議論の特徴」

作成:都築正泰(東京大学大学院法学政治学研究科)



(研究会議事要旨)
○冒頭、三宅・外務省国連政策課首席事務官より「今期国連総会の議論の特徴」について報告。具体的には、今期総会の動向、安保理非常任としての課題、安保理改革の展望、2009年の位置づけについて。

○その後、全体で自由議論。主な論点としては、9月15日総会決議の背景、安保理改革の展望、国連人事の進展と戦略、安保理非常任理事国としての課題、特にソマリア海賊問題やスーダン大統領ICC訴追問題の扱いなど。




1.出席者
北岡伸一(主任研究員)、三宅浩史(外務省国連政策課首席事務官)、池内恵(東京大学先端科学技術センター准教授)、岩沢雄司(東京大学大学院法学政治学研究科教授)、坂根徹(東京大学大学院法学政治学研究科、日本学術振興会特別研究員)、鈴木一人(北海道大学公共政策大学院准教授)、中谷和弘(東京大学大学院法学政治学研究科教授)、蓮生郁代(大阪大学大学院国際公共政策研究科准教授)、潘亮(筑波大学人文社会科学研究科専任講師)、福島安紀子(国際交流基金特別研究員)、片山正一(東京財団研究員)、関山健(東京財団研究員)、都築正泰(東京大学大学院法学政治学研究科)

2.日時・場所: 11月18日18:30~21:00、東京財団A会議室

3.報告者:三宅浩史 氏(外務省国連政策課首席事務官)

4.報告
三宅首席事務官報告:
(1)今期国連総会の動向
・総会の議論は総合的。150を超える議題について、6つの委員会(第一:軍縮および国際平和、第二:経済・財政、第三:社会・人道・文化、第四:政治および脱植民地化、第五:行財政、第六:法務)を設置して議論を行う。
・同時に、会期ごとに議長の興味・関心が反映される面もある。具体的には議長が主催するアドホック会合や非公式会合において。ケリム前議長(マケドニア元外相)の場合、気候変動やMDGs(ミレニアム開発目標)への関心が非常に高く、4月にはテーマ別討論を開催し、それをベースとして9月にはハイレベル会合が行われた。
・今期のデコスト議長(ニカラグア元外相)が9月16日の一般演説初日の演説において掲げたのは「国連の民主化」。具体的な課題としては、飢餓・貧困、燃料・食糧価格の高騰問題。その他には気候変動、水、テロ、核管理・核軍縮、人身売買、人道支援、ジェンダーなど。MDGsの達成を重視し、そもそも問題の根源は不均衡な富の分配にあると主張。「国連の民主化」については、今期ハイレベル対話を3セッション(各5日間)に分けて開催すると表明。第1セッションはブレトン・ウッズ体制の体制改善をテーマに。その意図は、欧米の独善体制の改善。第2セッションとしては、総会の再活性化・強化。明示的に発言していたのは、キューバへの金融措置の撤廃。アメリカはこれを45年間続けているが、毎年国連総会でこの解除を求める決議が出ている。金融措置への反対は184、賛成はアメリカを含めて4。総会において95%の加盟国が反対しているのにもかかわらずこれが無視されていることを問題視。ちなみに日本は反対に投票。
・またデコスト議長は安保理改革に積極的。日本と同床異夢な部分もあるかもしれない。拒否権を問題視しており、これを最も非民主的なものとして批判。
・早速9月20日には総会の再活性化について、セッションではなく議題ナンバー110として議論を開始。しかし実際、デコスト議長が期待するような展開は予想されず、ミクロな議事運営の効率化などに留まるであろう。

(2)安保理非常任理事国としての課題
・安保理は総会とは異なり実務的で各論的。国連憲章にあるとおり、国際の平和と安全の維持が議論の中心で、主に地域紛争を扱っている。
・先月の非常任理事国改選選挙において、アジア枠1について日本はイランと争っていたが無事当選(158対32)。来年1月1日より2年間非常任理事国を務める。
・安保理で「求められる日本の貢献」としては次の4点。(1)テロとの戦い(アフガニスタン)、(2)核不拡散、(3)ソマリア沖海賊問題、(4)アフリカのスーダン・ダルフール和平問題。ちなみに、日本が非常任に当選した直後のインタビューで高須国連大使も上記4点を日本が優先する課題として挙げた。また、アフガニスタン、東ティモールについてはリード国を務めたいと表明。
・(1)アフガニスタン。言うまでもなく国際社会の最重要課題であり、アフガンを再びテロの拠点としないために、各国が犠牲を出しながらも協力して取り組んでいる状況。外務省としては、インド洋の補給支援活動と人道的復興支援を「車の両輪」として重視。前者については、文民派遣を検討しているが、治安が悪化しておりなかなか困難。後者については、海上補給支援活動の継続が重要で、参議院での補給支援法の成立が急務。
・(2)不拡散。具体的な課題としては、IAEA追加議定書の普遍化、保証措置の強化、輸出管理レジームの維持強化。輸出管理レジームとは、ワッセナー・アレンジメント、MTCR、ミサイル技術管理レジームなどを通じた大量破壊兵器、ミサイル等々の資器材・技術の拡散防止が課題。また、PSIや日本が主催するアジア不拡散協議など新たな試みもある。2004年以降、国連安保理においては非国家主体への大量破壊兵器・拡散防止を決議。北朝鮮とイランに対する制裁等の措置を求める決議も出ている。さらにIAEA事務局長選挙も重要。日本からは天野之弥ウィーン代表部大使が立候補。来年3月の理事会までに候補者が1人に絞られなければ、6月の理事会で投票プロセスへ。任期は来年12月から4年間。現状では対抗馬として南アフリカのミンティIAEA理事が立候補しており、なかなか厳しい状況。
・(3)海賊問題。マラッカ海峡の海賊が減少している一方で、最近アフリカのアデン湾、ケニアで海賊襲撃が急増している。実際4月には日本企業の船舶にも被害が出ている。日本はもとより世界全体にとって海賊は大きな脅威であり、また国連海洋法条約は公海上の海賊行為を各国が取り締まることを認めている。このような背景より、今年6月2日、安保理で1816決議が採択。これは、憲章7章下で、6ヶ月間、ソマリア暫定政府に協力する諸国が同国領海内で実力行使を含む必要な措置をとることを認めたもの。その期限は12月2日であり、現在この決議の延長について安保理で議論が行われている。1816決議採択の過程で慎重な立場をとっていたのはインドネシア。マラッカ海峡の海賊にはインドネシア人が多いと言われている。また沿岸国の主権を制限する措置が世界的に拡大することをインドネシア政府は懸念。決議に基づく措置がソマリア沖に限定されること、また既存の国際法に全く影響がないことを決議に明記するように強く要求。来年1月、日本はインドネシアと入れ替わって安保理に入る。しかし日本では、公海上で海賊行為を取り締まる国内法令がない。最近の頻発する海賊事案を踏まえ、現行法制下で如何なる対応ができるか、あるいは新たな海賊法制の整備に関し、関係省庁間で鋭意検討を行っているところ。
・(4)ダルフール和平。現在、安保理において争点になっているのは、ICCによるバシール・スーダン大統領逮捕状請求の是非。2005年3月、安保理はダルフールの事態をICC検察官に付託(1593決議)。その後、07年2月、オカンポ首席検察官が被疑者2名を確定し、4月にICCの予審審判部が逮捕状を発布。これに対してスーダン政府は協力を拒否。さらに今年7月、オカンポ首席事務官は集団殺害犯罪でバシール大統領の逮捕状を予審審査部に請求。現在、予審審査部が検討中。このような訴追の動きに対して、安保理内部で中国やロシア、それからアフリカ諸国が強く反発。7月のUNAMID延長決議の際、ICCローマ規定16条に基づく「捜査また訴追の延期」の適用を主張。バシール大統領自身は逮捕状が発布されれば、PKOを全部排除すると表明。日本は最近UNMISに司令部要員2名を派遣。また来年2月には安保理で日本は議長国を務めることになるが、この問題でどのような姿勢をとるべきかは重大な政策判断となろう。

(3)安保理改革の展望
・日本では安保理改革のモメンタムは2005年秋以降失われたかという論調があるが、実際には現在も議論は続いている。そのなかで画期的であったのは9月15日の総会の決定。ここで事実上安保理改革の議論の場をOEWG(作業部会)から総会(非公式本会議)に移す決定がなされた。具体的には2月28日までに非公式本会議を開催することを決定。これによって政府間交渉の結果、総会の3分の2の支持が得られれば安保理改革を決定することが可能になった。
・この決定はケリム前議長の強いリーダー・シップによるもの。OEWGでの議論は14日まで続いていたが、ケリム議長のなかば腕力で無投票採決、コンセンサスで採択。結論としては、コンセンサス・グループ(UFC)など改革反対派とOEWGでの議論はもう十分し尽くしたと考える改革推進派の主張を両論併記。すなわち、今後ともOEWGでの議論を継続し、作業部会議長は来年2月1日までに協議の結果を非公式本会議に報告。また同時に、今期総会の会期中、2月28日までに政府間交渉を非公式本会議で開始する。反対派の理解では、OEWGでの議論が終了しない限り、非公式本会議は開始されないとなるが、実際にはそれに関係なく、2月28日までに非公式本会議が開始される。
・デコスト現議長は、10月10日の書簡で、OEWGを11月11日、政府間交渉を開始する非公式本会議を11月21日に開催すると通知。関係諸国は皆驚いたわけであるが、11日のOEWGは継続審議となり、21日の非公式本会議は延期。今後の日程はアフガニスタン常駐代表のタリン副議長から連絡が来ることになっている。

(4)2009年の位置づけ
・来年は安保理改革など変革の年になる一方で、不透明な要素が数点挙げられる。具体的には、アメリカのオバマ次期政権の陣容・動向。また気候変動問題への対応。12月にはCOP14がポーランドで開催。外務省としては途上国間の「差異のある責任」を主張していきたい。金融サミットを通じた世界経済システムの再構築も重要。また、G8サミット拡大をめぐる議論への注視も必要。3月の英仏サミット共同宣言で、G13への拡大と国連安保理を「中間案」の形で拡大することを提言。この流れのなかで安保理改革に向けたモメンタムを高めていきたい。

5.議論
(1)9月15日総会決議の背景、安保理改革実現の可能性
(補足報告)
北岡  ケリム総会議長はマケドニア出身。東欧の人は体制変革の経験があり、やる気になれば体制は変革できるという意識を持っている。東京財団で昨年7月にケリム氏を招き懇談した際、気候変動を最も重要なテーマと位置づけ、また安保理改革にも意欲的であった。結局、今回の総会決議が示すように、議長の強い決意次第で物事は進展する。
 前期総会の最終日、ケリム氏は、決議案の採択を阻止したい一部の加盟国に対して、投票を行うと強い姿勢を示した。投票になれば彼らは少数で負けるわけで、結局、一部の文言を修正した上でコンセンサスで採択された。
なぜ今回このように決議を採択できたのか。その背景には次の2点あった。まず一つは、大半の加盟国はOEWGでの議論はもう十分し尽くした、いい加減にそろそろ決めるべきではないかと考えていた。もう一つは、安保理改革反対派の飛車角的存在であるイタリアとパキスタン両大使が直前に交代していた。イタリアではなぜこの時期に大使を交代したのかと批判があるようだ。
 今回11月の討議で進展がみられなかったのはやむを得ない。決議には2月末までに政府間交渉を開始するとあり、今回は明らかにデコスト現議長の勇み足。もうしばらくは議論をするべきだと言う立場が大勢になるのは必然的。
 G8拡大、そして安保理拡大も合わせて実現される可能性はある。サルコジ仏大統領も両方を拡大するべきだと総会一般演説で発言している。国際政治における重大な決定は主要国間の合意でなされることが多い。オバマ米次期政権も主要国間協調を重視。安保理拡大の幅が21、22であればアメリカが反対する理由はない。また中国は、今年5月の胡主席訪日の際の共同声明で、国連における日本の役割の拡大を重視すると表明。さらに、G77やNAMから賛成に回る加盟国も見込まれる。今回非常にうまくいけば、拒否権なしの常任、最低でも長期議席の獲得が実現するだろう。しかし課題として残っているのはアフリカ。どのようにして総体として取り込むことができるかが鍵。そして何よりも重要なのが日本の総理大臣の強い決意。
(議論)
・中国、アフリカの賛成を得るためにどのような方策が検討されうるのか。
・アフリカが受入可能な案はモデルB。新たに任期4、5年のカテゴリーを作って数カ国選ぶ。12、15年後に再検討すると言う暫定案。これであればアフリカ内部で議席を回すことが可能。日本は任期10年が望ましい。アジアでは日本のかわりに10年やれる国はない。しかしこれにアフリカは賛成しにくい。任期10年であれば、特定の有力国のみになる。そこで考えられるのは、地域によっては何か国かで議席を回すことを認める方式を導入すること。
・G8拡大と安保理拡大を連動させるアプローチが紹介されたが、しかし理論的には両者は全く別組織。その背景にはどのような認識が共有されているのか。単に時期的な偶然で連動しているのか。
・英仏はG8と安保理の拡大をリンクしている。しかし周知のとおり、日本はG8の拡大に反対している。
・厳密な意味でコンセンサスが存在するわけではない。しかし世界を効率的に運営する上で、安保理は現状のままでG8のみ拡大するのは納得できないという立場には共感が得られている。ところが難しいのはイタリアの扱い。ドイツだけが安保理に入るのには猛反対。しかも次回のG8開催国はイタリア。この際、イタリアも安保理に入れようと言う声が高まるかもしれない。
・安保理の議席をローテーションする発想について。すでに60年代末ごろ日本の鶴岡国連大使が提唱していた。それはアジア太平洋の主要国(日本、インド、その他3、4カ国)の間で輪番で議席を回す構想。ドイツとイタリアの間でも一定期間で交代する方式が検討されないだろうか。
・安保理の議席をローテンションする場合、任期が短ければ合意形成は簡単。しかしそれにはデメリットもある。日本やブラジルは嫌がる。たとえば、任期が4、5年であれば、両国は恒常的に安保理に議席を確保するのが難しくなる。
・今回、安保理改革の機運が再び高まっている背景には、総会議長の他に事務総長の指導力も効いているのか。
・今回については総会議長のイニシアティブによる面が大きい。
・潘基文事務総長は、韓国出身で安保理改革に反対と疑われている。しかし、彼は韓国の事務総長ではないと発言している。アナン前事務総長のように積極的ではないが、ネガティブな介入は行わないという姿勢ではないか。

(2)人材登用面でのポジティブな変化
(補足報告)
北岡  最近、国連の中堅層の人事で日本が重要なポストを獲得している。たとえば、山崎純氏が財務官に指名された。これはASG(事務次長補)のポストであるが、日本と同じく主要なドナー国であるアメリカも狙っていた。その他に川上隆久氏が国連東ティモール統合ミッションのナンバー2のポスト、事務総長副特別代表(事務次長補)に指名されている。高須国連大使によると、ASGクラスでは競争者は数人だが、P5レベルでは競争者が多く、より難しいといってもよい。以前から主張していることであるが、日本は中堅層の人事から上層部のポストを獲得していくことも重要。
(議論)
・山崎氏の財務官就任の経緯が興味深い。また今後の展望として、高須大使との連携により行財政改革が進展することを期待したい。

(3)安保理における重点課題
・来年1月から安保理に入る日本に対して、各国からはどのような期待が寄せられているのか。具体的にどのような要望があるのか。
・現在、代表部を中心にどのような課題に集中していくべきか検討中。非常任当選時の高須大使の発言では個別具体的な案件について述べられていたが、大きな売りとして何を打ち出すべきかについては議論している最中。これまで日本が標榜してきたのは「開かれた安保理」。手続きの透明性確保や定期的なブリーフィングの開催など。また「人間の安全保障」も重要。
・具体的な注文は今のところあまり寄せられていないのではないか。2月には日本は安保理議長国。準備期間は短く大変であるが、先進国と途上国の間で調整が難しい課題が多いなかで積極的な行動を期待したい。
・前回非常任を務めた際、日本は安保理の透明性の向上の目的でハンドブックを作成。これは国連の公式の文書にはならず個別配布になった。このハンドブックは非常に評判が良く、要望に応えて日本政府代表部のサイトからも閲覧ができるようになったと聞く。安保理の透明性向上においては今回どのような行動をとることを検討しているのか。
・前回と同様、今回も文書作業部会の議長を獲得したいと考えている。実際にこれが決まるのは12月中で1月から各作業部会が開始される。

(4)PKO要員派遣、ソマリア海賊問題
・PKO要員の増大も日本が安保理で長期的に議席を確保する上で重要であろう。現状では予算分担比率は16.6%であるが、PKO要員貢献度は82位。
・外務省としては積極的に派遣したいと考えているが、なかなか政治的に決定が困難。現在、国連の統計では38となるが、実際には50名近く派遣。先般スーダンPKOのUNMISに2名、ゴラン高原に45名、ネパールに2名派遣。国連の統計に入らない部分は、自己負担で参加している場合。
・かつて日本はカンボジアや東ティモールに数百人規模で部隊を派遣。現在の要員貢献度の低さに対して面と向かって批判はないが、今後徐々に不信感が広がるかもしれない。
PKO派遣の増大が進まない要因は、野党の反対と言うよりもむしろ政府側にある。与党の一部、陸上自衛隊、警察、内閣法制局に消極姿勢がみられる。ここでは総理大臣が強い決意を持って推進することが重要。特に現在問題なのは、内閣法制局が示す武器使用の要件。自己保存と自己の管理下にある武器等を守るためのみに限定。このような限定的な条件では危険で、陸上自衛隊が躊躇するのはやむを得ない面もある。そこで、安保法制懇で提示する第3・4類型の検討が必要となる。
・憲法9条違反を防ぐ制度上の原則として、PKO参加5原則がある。これを武器を持つ部隊に適用するのは理解ができるが、内閣法制局の見解では文民派遣の場合にも適用。これは理解し難い。
・もし日本が単独で行動するのに問題があるならば、中国やインドと一緒に行えばよい。日本とインドの安全保障協力を反中国包囲網と理解されずに済む。また実際、ソマリア沖まで海軍を展開できる能力をアジアで持っているのはこの三国ぐらいしかいない。ところで、ソマリア沖の海賊の正体は何か。
・現地の漁民が武装化したのだろう。新聞報道で海賊勢力へインタビューしたものによると、彼らはアルカイダ、また内陸部の紛争勢力とも関係はないと言う。ここで気になるのは、国際法上あるいは国連において海賊とテロリズムの関係をどのようにみているのか。海賊としてのみ理解すれば、現行の法体系で対応できる。しかし、テロとリンクした場合、テロリスト自体の定義はないわけで扱いが難しくなる。また、海賊によって最近アフリカ諸国の紛争地への武器密輸が摘発されるなど必ずしも海賊は負の側面だけではないことにも注目が必要。
・海上補給支援活動については国連決議の授権に基づくものではないがISAF謝意決議(1776・1833各決議)が存在する。海賊についてはソマリア領海において1816決議を根拠とするオペレーションが可能。
・東アジアにおける海賊取締の試みをソマリア沖の海賊問題に応用することは現在検討されているのか。マラッカ海峡の海賊問題への対応として、ReCAAP(東アジア海賊対策地域協力協定)の締結、またインドネシアへの巡視船の供与や各国の海上保安官の研修などキャパシティー・ビルディングを日本は推進してきた。ソマリア自体は崩壊国家で未承認政府であり直接の支援は難しいが、周辺諸国への物資供与や人的トレーニング、ODAの活用など実現してはどうか。
・現在、そのような方向で検討中。またこれまで細々としたものであったが、国際機関経由のODAを通じた技術支援や資器材供与を行ってきた。

(5)スーダン大統領訴追問題
・ICCにおけるバシール大統領の逮捕状発効の可否は、日本が安保理に入って苦労する問題のひとつ。7月のUNAMID延長決議の際、投票で賛否を明らかにした場合、拒否権は別として賛成6反対9で否決されただろう。賛成は英米仏と西欧2と東欧1。反対はアフリカ3、中ロ、それからインドネシア、ベトナム。不明なのは中米。コスタリカとパナマは非同盟の枠組みを考慮して反対に回った可能性が高い。来年日本はインドネシアと交代する。日本と中米2が賛成に回れば、採決に必要な9票が確保される。しかし、日本の賛成はNAMからの反発を招く。かといって日本が反対に回れば、先進国が不信感を抱く。また、スーダン問題において中国が果たす役割が大きいと指摘できる。この問題の難しさはスーダンとチャドの関係悪化にある。中国は両国に対して一定の影響力を持っている。スーダンはもともと親中で、またチャドは2006年に台湾と断交して中国との関係強化。チャドを脅かす東部の反政府勢力はスーダンの支援、つまり中国の武器が流れている。このようななかで、中国がスーダンとチャドの間に入ってうまく仲介すれば、和平は実現できるかもしれない。

(6)総会議題45「平和の文化」ハイレベル会合
・11月12、13日の2日間の日程で「平和の文化」ハイレベル会合が総会で開催され、宗教はテロリズムを正当化しないと宣言した。これはサウジアラビアのアブドラ国王のイニシアティブによるものと聞く。サウジアラビアの真意はどのようなところにあるのか。
・日本からは高村正彦総理特使が出席。この会合は議題ナンバー45としての扱いで開催。当初は4月にスペインのマドリードでこのテーマで開催していて、11月の国連での会合は第2弾であった。
・国連では、どこかの国の元首が来て話をしたいと申し出があると、それ自体が議題になるようだ。安保理ではどこかから書簡が届けばそれが議題になる。
・サウジアラビアの真意はアメリカあるいは国際社会に対してのメッセージ発信。まず第一には、自国はテロ支援国家ではないというメッセージ。あともう一点は、公式にはなかなか難しいアラブとイスラエルの良好な関係を半公式の形で誇示するねらい。実際、イスラエルからはペレス大統領が参加し、アラブ諸国の元首と同席している。これは非常に珍しいこと。また、サウジアラビアが国連の場を選んだことも戦略的。資金は別として招待状は国連総会議長から送付されるわけで、これによりアラブ側の反発をある程度抑えることができる。
・アラブ諸国は地域的に、中東とアフリカの一部の紛争多発地域に重なっている。一方国連では、アジア・グループとアフリカ・グループの2つがあるわけであるが、この2つを地域的にまたがるアラブとして、何か一体となった動きはあるのか。
・アラブ自体の連帯は弱いと言われるが、これまで実際にアラブを一体として日本の仲間につけようという構想と試みはあった。
・必ずしもアラブを一体として日本の味方につける必要はない。その内部にもいろいろな亀裂があって、場合によって日本を支持することがある。日本にとって今後重要なのは、P5など西欧諸国との信頼関係を維持しつつ、G77やNAMのなかで穏健な諸国との連携を深めて自らの立ち位置を強化していくことであろう。