タイプ
論考
日付
2018/11/27

アメリカ中間選挙:勝者なき戦い

                                           写真提供 Getty Images

 

ポール・J・サンダース

センター・フォー・ザ・ナショナル・インタレスト常務理事

 

2018年のアメリカ中間選挙では、ドナルド・トランプ大統領と共和党が敗北した、と一般的にとらえられているが、現実はそれほど単純なものではない。

 

民主党が下院を押さえたことは、トランプ大統領の任期後半に大きな影響を及ぼす。ただ、民主党は上院では議席を失い、完勝とまではいかなかった。今回の中間選挙で共和党は下院で実に34議席を失っている。ただ、1994年の中間選挙ではクリントン大統領率いる民主党はさらに多い54議席、オバマ政権の2010年の中間選挙では63議席を失っている、との保守系専門家の指摘もある。これらの中間選挙で与党民主党は上院でも議席を失っているが、今回共和党は少なくとも1議席増やした。[https://nationalinterest.org/feature/trump-won-midterms-heres-why-35417]

勝利ではないが、敗北でもない

もっと重要なのは、今回の中間選挙は両陣営を活気づけたことと言えるかもしれない。それは記録的な投票率に表れている。[http://time.com/5452258/midterm-elections-turnout/] 2020年選挙では、民主党の勝利が自明であると考えてきた人たちは実に大勢いる。しかし、今回の結果から、トランプ大統領が共和党の支持者を確実に動員できることが証明され、そう考えると、トランプ大統領再選の可能性も垣間見えてくる。

 

さらに重要なのは、トランプ大統領が2016年選挙で勝利したことはまぐれではなく、アメリカ社会にひそむ政治的な現実を理解し、巧みに利用することができた結果であるということを説得力を持って示したことだ。前述の保守系専門家は、共和党が今回と同様に下院で議席を失い、上院で議席を獲得した1970年の中間選挙を取り上げ、国民の怒りを背景に民主党リベラル派が勢いづいていたにも関わらず、2年後の1972年にニクソン大統領は再選を果たしていると指摘している。

 

民主・共和両党ともまだ中間選挙を振り返り、新しい会期に向けた戦略を練っている最中だが、両陣営とも国家の命運をめぐる重要な戦いに向けて、相手が(再び)どんな組み立てを見せてくるのかという文脈でものを考えているだろう。その戦いは、上下両院で新たに選出された議員が顔を揃える来年の1月に始まる。民主党が主導権を握る下院の委員会が、最も大きな論争の種となっている大統領の行動に関する公聴会と捜査を主導する中、指導的な民主党議員の出した声明は、トランプ政権とその政策に対する組織的な攻撃の前兆を示している。[https://www.washingtonpost.com/politics/democrats-signal-aggressive-investigations-of-trump-while-resisting-impeachment-calls/2018/11/11/63945180-e5d4-11e8-bbdb-72fdbf9d4fed_story.html?utm_term=.5fbf4c752786]

今後の民主党の動きとは?

しかし、トランプ大統領に対する民主党の攻撃は、2016年大統領選挙へのロシアの介入、トランプ陣営とロシア高官の共謀問題、その他の大統領選挙関連の疑惑に集中するとは思えない。民主党がこれまでこれらの問題に費やしてきた時間と労力を考えると、2018年中間選挙の争点としてこれらの問題がほとんど注目されなかったことが浮き彫りになっている。

 

実際のところこの2年間、民主党支持者はトランプの移民や医療制度、連邦最高裁判事の指名、その他の優先課題に気を取られ、また大部分の共和党支持者も、これらの問題が党派攻撃を受けていると説得されてきた。その結果、最近のピュー・リサーチ・センターの世論調査では、「ロシアとの共謀」がトランプ大統領不支持の動機だと答えた人はわずか5%にすぎないことが明らかになっている。有権者の懸念はもっと別のところにあるのだ。[http://www.people-press.org/2018/08/23/trump-has-met-the-publics-modest-expectations-for-his-presidency/

 

共和党が上院で多数議席を獲得したことで、トランプ大統領が弾劾される可能性はより一層低くなり、ロバート・ミュラー特別検察官によるロシア疑惑捜査で実証可能な重大な不法行為が暴かれるという驚きの展開も防がれ、民主党にとってはロシア疑惑から離れて、重要な国内の政治問題に注目する方向に圧力が強まっている。政治力とは本質的には限られたものであるため、民主党はより有権者にアピールできる分野にそれを行使したいと考えている。もちろん、下院情報特別委員会は2016年大統領選挙に関する調査を継続するだろうが、下院の民主党議員はこの捜査が政治闘争の主戦場になるとは思っていない。 

アメリカの深刻な分断

2020年を見据えた時、民主・共和両党が繰り広げようとしている残り2年間の戦いにおける最大の危険とは、争点がどう定義されるか、になるだろう。過去20年間のアメリカの政治は、政策の良し悪しをめぐる意見の対立から、どちら側が正しくて、どちらが間違っているか、ひいては、自らが正義の味方で相手が邪悪である、との極論を主張する方向に向かっているように感じられる。これでは、妥協が完全に不可能になり、また政治家やジャーナリスト、一般市民による、極端な主張や行為を助長することにもつながっていく。妥協することができず、敵対的な行動に出れば、民主・共和両党にとってのリスクが増すだけであり、その結果、収拾のつかない政治的な事態へと発展する。

 

国同士の対立の中で、収拾のつかない事態は戦争へと発展する。国内の対立も、その事態は同様に暴力へと発展しかねない。(ワシントン郊外の)野球場での共和党議員に対する2017年の銃乱射事件や、つい先日起こった著名な民主党議員を狙った郵便爆弾事件など、過去数年間の出来事を振り返ると、抗議などの政治的な動機に基づく活動が、2020年米国大統領選挙に関連した偶発的または意図的な殺人事件に発展する可能性があまりにも容易に想像できる。

 

2018年という年は、暴力デモや集団逮捕、マーティン・ルーサー・キング・ジュニア牧師やロバート・ケネディ大統領候補の暗殺が起こった1968年を想起させる。アメリカは50年前のこの年も、その後の混乱も乗り超えてきたが、同じ轍を踏むことを望む者などいないと思いたい。

 

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