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レポート
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第11回東京財団フォーラム「北京五輪後の日中関係への提言? 環境/地域協力」

日時
2008/6/18  18:30~20:00 [終了しました]
場所
日本財団ビル2階 第1~4会議室
担当
関山、平沼
 6月18日、第11回東京財団フォーラム「北京五輪後の日中関係への提言?環境/地域協力」を開催しました。

 これは、先ごろ東京財団の「ポスト円借款時代の日中関係」研究会(主査:関山健研究員)が取りまとめた政策提言「北京五輪後の日中関係-8つの提言」報告会の第1弾です。

 同政策提言では、日中関係の第一線で活躍する若手実務家達が、消費者やビジネスマンにとって関心の高い「食と農業」、「資源エネルギー」、「環境」、「知的財産」、「文化交流」、「地域協力」といった分野について、実務家ならではの視点で過去から現在に至る経緯を振り返り、現状の問題点と今後の課題を洗い出して、それを克服するための方策案を提言しました。

 18日は、こうした提言分野のなかでも、特に7月の洞爺湖サミットへ向けて関心の高まるグローバルな課題として「環境」と「地域協力」を取り上げ、100人近い方々にお集まりいただきました。

 「環境」分野を担当していただいた染野憲治・環境省地球環境局国民生活対策室長、「地域協力」分野を担当していただいた村上正泰・日本国際フォーラム所長からの報告内容は概要以下のとおりです。報告後の質疑応答でも会場との活発な議論や意見交換が行われました。

 6月26日には、報告会の第2弾として、フォーラム「北京五輪後の日中関係への提言?食と農業/知的財産」を開催しますので、どうぞお越しください。

 東京財団では、今後も引き続き政策提言「北京五輪後の日中関係-8つの提言」の発展・実現に向けてフォローアップしていきます。


報告概要


染野氏からの報告(環境分野):

(中国の環境の現状)
・中国政府は、第十次5カ年計画で2005年の大気汚染及び水質汚染物質の排出量(それぞれSO2及びCOD排出量)を2000年比で10%削減する目標を設定したが、まったく達成されなかった。排出削減が進まない理由として、環境重視の姿勢を見せる中央政府に対し、未だ地方政府には経済成長優先という考えがあることなどが挙げられる。


(日中環境協力の現状)
・日中間では、「日中環境保護協力協定」(94年締結)、「日中21世紀に向けた環境協力共同発表」(98年発出)、「日中環境保護協力共同声明」(07年発出)などの文章に基づき、協力を実施してきた。代表的プロジェクトには「日中友好環境保全センター」(95年開所)、「日中環境モデル都市」などがある。

(北京五輪後の展望)
・気候変動問題、黄砂や酸性雨、海洋汚染、中国国内の環境汚染に起因する食品汚染などの越境汚染について注目は高く、このような状況において、中国側との関係を断絶するような選択肢は取り得ない。しかし、日本でも日中間でも日中環境協力に対する必要性・方法・分野等のコンセンサスが未だない。このような状況での日本国内、日中間での議論はかみ合わないし、混乱しやすい。
・政治的な視点は様々あろうが、現実を見れば中国単独では気候変動にも水質・大気の汚染問題にも対処できないであろう。日中間が環境分野でどのような協力関係が構築できるかが、地球の命運を握るといっても過言では無い。

(政策提言)
・中国の環境汚染の日本への影響(越境汚染問題)の観点からだけでなく、中国の安定的で健全な発展は日本自身の安全・利益のためにも重要との観点から見ても、対中環境協力は、日本の国益に適うもの。
・中国のニーズがないプロジェクトの実施は効果が疑問。水質汚染・土壌汚染は越境性が低いが、輸出食品への影響や在中国邦人への影響にも鑑みて、公害を経験した日本として協力すべき。同様に、大気(酸性雨を含む)や廃棄物(リサイクルを含む)への協力も重要。越境性の低い問題への協力も、例えば、温室効果ガスの削減につなげれば、排出権取引のメカニズムを使って日本にも直接ベネフィットが出る(コ・ベネフィッツ)。
・日本の高度経済成長時代には公害防止規制というムチと「公害防止事業団」等による公害対策融資というアメが存在した。今の中国にも、日本の「公害防止事業団」が行った取組は参考になると考えられる。中国の「公害防止事業団」設立に日本が協力(資金協力、専門家派遣等)してはどうか。


村上氏からの報告(地域協力分野):

(東アジア地域協力の歴史と現状)
・東アジアでは、80年代から日本とASEANの間の民間経済活動を中心に協力関係が実態先行で進んできたが、その後90年代半ば頃からは中国が台頭しはじめ、その意味で、日中関係は、単なる二国間関係としてだけではなく、東アジア地域協力という大きな文脈の中に置かれるようになってきている。
・しかしながら、現実には、地域協力の議論を具体化すればするほど、日中間で意見や利益が対立するという場合も多くみられる。さながら日中両国で主導権争いの様相を呈していると見る向きも多い。


(東アジア地域協力における今後の課題)
・東アジアにおいては、本格的な地域協力の枠組みが構築されるに至っておらず、特に北東アジアにおける地域協力のあり方を模索する必要がある。いまや資源エネルギー、環境、テロなど、地域協力が必要とされる課題が山積しているなか、日中が反目しあっていては、お互い得るものがない。日中関係の安定のためにも、日本としては、中国を東アジア地域協力に取り込んでいくことが大切。
・東アジアは、今のところ、ひとつの強固な枠組みの中に収斂できるような状況にはない。これまで同様、さまざまな枠組みが重層的に重なり合う中で、それぞれの領域ごとに実現可能な協力関係を積み重ねていくという方が現実的である。その意味でも、ASEAN+3か東アジア・サミットかという二者択一で日中が主導権争いを行っても仕方がないのである。

(東アジア地域協力と日中関係への提言)
・東アジアを日中間の主導権争いの場とするのではなく、むしろ、中国との関係を地域コミュニティのなかに取り込むとの発想に立って、日中協力して地域の課題に取り組む機運を高めていくことが重要。
・例えば、東アジア地域の統合にとって重要な地政学上の意味を持つメコン地域においては、現在日中両国が影響力争いを展開しているが、この地域の開発や課題について日中両国で政策協調を図ることを提案したい。そのために、今年4月に試験的に立ち上がったばかりの『日中メコン政策対話』に期待する。
・また、シンクタンクなどの民間レベルで有識者による「トラック・ツー」の交流がさまざまな場で行われているが、それらは「トラック・ワン」と同様に主として二国間の問題を議論することが多い。しかし、今や日中関係は二国間の枠組みだけではなく、東アジアという地域コミュニティの中に位置づけ、相互利益を高めていく必要があることから、地域協力の問題を「トラック・ツー」のレベルでも日中間で議論し、政府レベルの対話に具体的な提案を行っていくべき。

■2007年度実施 ポスト円借款時代の日中関係マネージメントプロジェクト


第11回東京財団フォーラム「北京五輪後の日中関係への提言?環境/地域協力」
【日 時】6月18日(水)18:30~20:00
【会 場】日本財団ビル2階 会議室
【テーマ】「北京五輪後の日中関係への提言?環境/地域協力」
【スピーカー】染野憲治(環境省地球環境局国民生活対策室長)
        村上正泰(日本国際フォーラム所長)
【モデレーター】関山健(東京財団研究員兼プログラム・オフィサー)