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政策提言 「分権時代の地方議会改革 ―改革派首長からの提言―」(概要):福島伸享研究員

July 25, 2008

分権時代の地方議会改革-政策提言の概要-

憲法及び地方自治法に定められている現在の日本の自治体の運営方法は二元代表制である。すなわち、地方自治法の想定している運用がそのとおりになされていれば、議会は自治体の運営に関する事項を決定し、首長率いる執行機関がこの議決された事項を実行し、実行されたことを議会がチェックすることによって、それぞれ別の選挙で選ばれる首長と議会それぞれがほぼ対等とも権限を発揮できるようになっている。

ところが、現実の首長と議会の関係は、執行権をもつ首長の力が強大となってしまい、議会は二元代表制の一つであることをレバレッジに執行権の「おこぼれ」をもらうだけの首長追認機関になっていたり、総与党体制のなれあい議会に支えられた指導力のない首長が存在したりと、「擬似一元代表制」ともいうべき状況が生じてしまっている。

本研究では、いわゆる「改革派」としてメディア等にとりあげられることの多い首長について、自治体運営においてどのような議会との関係を有していたのかを分析してみたが、地方自治法の想定する二元代表制の持つ長所を上手く生かした自治体運営をしている首長は稀であった。地方自治法に忠実に二元代表制を意識した自治体運営をすればするほど意思決定が困難となる一方、改革に成功している首長の多くは、二元代表制の一翼であると議員をおだてながら反対勢力がほとんど存在しなくなるほど議会を上手く懐柔し、既存の役所組織をポリティカル・アポインティの導入や外部人材の活用などで刺激を与え活性化し、ある意味大統領以上の強い権限を発揮している場合が多い。

海外に目を転じてみると、本研究で調査を行ったイギリス、フランス、スウェーデンともに、議員の中から首長を選出する一元代表制(議院内閣制)であり、普段は他の目的に使用されているホールなどを活用した質素な議場で、議員同士が実質的な議論を積み重ねて自治体の運営を行っていた。選挙は日本のように個人で行うのではなく、候補者の選考からマニフェストの作成までしっかりと組織された政党を中心に行われており、選挙で与党となり執行部入りする議員以外は原則無報酬であった。

議会の役割や仕事ぶりだけを見ると、日本とヨーロッパの議会とではその差がはなはだしい。日本では首長も議員も同じように選挙で選ばれてはいるが、いったいそれぞれが何の利益を代表し、どのような役割を果たすのかが明確ではない。とりわけ、予算や条例の決定は行うものの執行権を持ちえない議会は、地方自治体のガバナンスシステムの中でその存在価値に多くの疑問が持たれてしまっている。一方、諸外国では議会こそが、地方自治の根幹システムとなっている。

こうしたころから、本研究会では、
(1)まず、そもそも「議員とは何か?」ということを議員も住民もゼロから考え、
(2)二元代表制の現行地方自治法上与えられている議会の権能を最大限活用し、
(3)憲法改正も視野に入れながら、議院内閣制、シティーマネージャー制などの複数のガバナンスシステムを自治体が選択できるような制度を導入すべきこと
を提言している。

    • 元東京財団研究員
    • 福島 伸享
    • 福島 伸享

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