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公開研究会「地方議会改革は誰のためか~市民の役割と議会の責任」開催レポート

May 31, 2010

議会改革の本質

2010年5月26日、日本財団ビル2階で公開研究会「地方議会改革は誰のためか~市民の役割と議会の責任」を開催しました。

「議会改革」が流行となっている印象があります。誰のための何のための地方議会の改革かが不明確になっています。実は改革に反対している議員や市民までもが「地方議会改革」の必要性を訴えているケースも見受けます。今回は市民の身近な問題意識を起点に地方議会改革について議論する会を開催いたしました。

議員活動の質を問う

まず、木下敏之上席研究員より、2009年12月から2010年3月まで実施した「地方議会議員の活動調査」について報告がありました。一般市民の地方議会・議員に関するイメージの多くは、議員報酬の高さと議員定数の多さであるとの指摘がありました。しかし、問題の本質は、高い安い、多い少ないではなく、一体なにを根拠に高いのか多いのかは、実は確固とした理念や理屈がないこと、そしてそれなのに議員報酬や議員定数の削減が改革として論じられ実施されることへの警鐘を鳴らしました。

この「地方議会議員の活動調査」の分析にあたっては、活動内容をいかに分類するかが難しく、今回の分類はひとつの考え方としての提案であるとの説明がありました。また、今回は時間の長短だけにしかフォーカスを当てなかったが、議員報酬はその名の通り、活動の成果に対する報酬であるべきで、今後は議員活動の成果についても研究することが必要であると進言していました。地方議会議員が質の高い成果を生産できるのかが今後問われるでしょう。

市民が議会・議員に何を求めるか

続いて、福嶋浩彦上席研究員、中尾修研究員を交えてのパネルディスカッションを行いました。司会進行は、大沼瑞穂研究員兼政策プロデューサーが務めました。福嶋上席研究員からは、「この調査結果の核心は、市民が議会・議員に何を求めるかを定めないといけないことがはっきりしたことです。それを議会の姿で示すと、少数のスペシャリストで有数な政策スタッフ有する議会、一方は多数のボランティア議員で平日夕方や土日に開催する議会です。どのような議会像を求めるかは、各自治体で異なってかまわない。今は様々な活動が議会の活動と認識されている。」との指摘がありました。

健全な議会活動は市民の責務である

中尾研究員からは、北海道栗山町議会で日本初の議会基本条例を制定するにあたって作成した原案に市民の責務を定めた条項があったとの紹介がありました。名づけて「幻の一条」です。主権者に義務を課すことは行政法的に不適切との指摘を受けて幻となったとの解説がありました。「幻の一条」は、「市民の活動原則」を次のように定めていました。

(1)市民は、市民の代表機関である議会の運営・活動に対して、常に関心を持つよう努めるとともに、次の一般選挙の判断基準とするため、選挙公報等における公約の実現性を含め、議員の活動を的確に評価するよう努めなければならない。

(2) 市民は、市民本位の議会運営が常に図れるよう議会が求める会議に積極的に参加し、情報の公開・共有に努めなければならない。

地方議会議員はゴルフ選手かサッカー選手か

また、参加者との意見交換では、中尾修研究員から「これまでの地方議会議員の多くは、ゴルフ選手のような活動をしてきた。遠くに飛ばすことは市で一番、ハザードからの脱出では右に出るものがいない、ロングパットはバンバン入る。それぞれの議員の特性や特色だけで勝負してきた。これからは、組織として、議会の一員として勝負しなければいけなくなる。これからはサッカーをすることも求められている。特性や特色を活かしながら、議会としてのゴールに向かっていく必要がある。」との発言がありました。これに関連して、福嶋浩彦上席研究員からは、「そもそも議会は組織なのだから、ゴルフをしてはいけない。サッカーをするのが議会の本分である。現状は、サッカー場でゴルフしている地方議員がいることが問題だ。」との指摘もありました。

これまでの公開イベントでは、会場のスペースの許す限りまで参加申し込みを受け付けておりましたが、今回は活発な議論を展開するため先着100名に限定いたしました。ご希望されても参加できなかった方も少なくないと存じ上げますが、何とぞご理解ください。

<文責:赤川貴大>

    • 元東京財団研究員・政策プロデューサー
    • 赤川 貴大
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