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社会保障・税一体改革 ~身の丈に合った社会保障の充実を求めて~

March 29, 2012

政策提言の全文(PDF:2.11MB)はこちら

要旨

少子高齢化や非正規労働者の増大など社会保障制度を支える状況が大きく変化している。政府は「社会保障・税一体改革大綱」を決定し、社会保障の充実・安定化の財源を確保するため消費税増税の準備を進めているが、財政状況の悪化は深刻さを増し一方的な社会保障の拡充を行う余裕は日本に残っていない。社会保障制度の持続性を確保するためには、厳しい財政制約の中で可能な限り公平で効率的な社会保障に変え、個人の自助努力を前提とした「身の丈に合った」制度をつくることが必要である。

本提言 は、年金と医療の分野でいくつかの政策提言を行っている。

年金については、保険料負担と給付の関係が不公平であることなど現行制度の問題を解決するためカナダ型を念頭に置いた新年金制度創設を提言した。税を財源とした均一額の年金給付(基礎年金)の実施である。また個人が老後の生活に対して積み立てることを国が税制で支援する日本型IRAの創設を提言している。これは厚生年金の給付水準の抑制を徹底し、給付水準の低下を補う意味もある。

医療については、日本の医療制度は大多数の国民に質の高い医療を提供してきたが、増加が著しい医療給付は効率化を目指す必要がある。そこでイギリス・オランダなどで導入が進む医療効率化の手法を俯瞰し、将来的に保険者が「賢い消費者」としての機能を発揮するための電子診療・請求システムの必要性を述べた。また医療負担に備える個人の積立に対して税制優遇を行い支援しつつ医療費の増加を抑える効果も期待する医療貯蓄口座の導入や、賦課方式である現行の医療保険が少子高齢化の中、世代間格差を生み出すという構造を是正するため世代内での相互扶助機能を強化する事前積立の導入についても提案している。

実現するにはさらに議論すべき点が多いものも含まれるが、現在進行している改革の先を見据え、本質的な問題を解決するには避けて通れないものばかりである。公平で安心できる社会保障と税の仕組みについて、議論がさらに充実するための材料に 本提言 がなるよう働きかける。

主なポイント

年金

◆年金制度の改革
カナダの年金制度をベースとした新年金制度の創設
◆自助努力支援
個人型年金積立金非課税制度(日本版IRA)の創設

医療

◆医療制度の改革
全国共通で標準化された電子診療・請求システムの導入
◆自助努力支援
税制優遇措置を設けた医療貯蓄口座の導入
◆世代間格差是正
次世代の負担増に備える事前積立の実施

政策提言の全文(PDF:2.11MB)はこちら

執筆

  • 東京財団「税制の抜本改革と将来像」研究プロジェクト
  • 森信茂樹 東京財団上席研究員(プロジェクト・リーダー)
  • 小黒一正 一橋大学経済研究所世代間問題研究機構 准教授
  • 須賀千鶴 経済産業省商務情報政策局メディア・コンテンツ課 課長補佐(個人の資格で参加)
  • 西沢和彦 (株)日本総合研究所 調査部 主任研究員
  • 中本淳 東京財団研究員

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