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新型コロナ対策がもたらす効果の定量的分析:抗体カクテル投与の効果について
写真提供:GettyImages

新型コロナ対策がもたらす効果の定量的分析:抗体カクテル投与の効果について

October 15, 2021

R-2021-003

昨年の新型コロナウイルスの流行当初から現在に至るまで、移り行く感染状況に応じて様々な対策に期待が寄せられ、実行されてきた。筆者は各種対策の効果を事前に定量的に評価することを目的として、昨年よりエージェント・ベース・モデルを用いたシミュレーションを継続している。

※なお、本分析は内閣官房「ポストコロナ時代の実現に向けた主要技術の実証・導入に向けた調査研究業務」の一環として実施されている、三菱総合研究所「ポストコロナ時代の実現に向けた主要技術の実証・導入に係る事業企画」のオープンコラボレーションパートナーズとして公開している成果の一部である。

 

これまでの分析では、東京都で第5波が収束し緊急事態宣言が解除された後に焦点を当て、一定の活動制限の下でブースター接種が再度の感染拡大を阻止しうること、仮にブースター接種が行き渡ったとしても人出がビフォー・コロナ(平時)のレベルに戻れば感染が拡大しうること、ワクチンパスポートの普及によりワクチン未接種者の外出機会が平時比5割減となれば、ワクチン接種者の外出が平時のレベルに回復しても感染拡大を防げることを示した(資料p.2、「新型コロナ対策がもたらす効果の定量的分析:宣言解除後のシミュレーション」参照)。本分析では、一歩進んで、病床逼迫の緩和効果が期待される抗体カクテルの投与について、その効果を分析した。

シミュレーションは、過去の一連の分析と同様、東京都の人口属性と、学校や職場など各場面での接触を再現したエージェント・ベース・モデルを用いた(資料p.4参照)。本分析では特に、抗体カクテルを基礎疾患のある者のみに限定して投与した場合の効果を測る目的で、人口属性に基礎疾患の有無を導入している。宣言解除後、一定の外出制限の下で人出が平時に近づいて再び感染拡大傾向に転じる想定の下で、重症化予防効果のある抗体カクテルを、現在確保された総投与回数を上限として投与した場合に、中等症以上の患者数や死者数がどれほど減少するのかを分析した。

その結果、抗体カクテルを検査陽性者全員に投与した場合には、数か月以内に抗体カクテルの数は枯渇するものの、投与しない場合に比べて累計死者数は数百人程度減少することが明らかとなった(資料p.14、結果の詳細グラフはp.11-13参照)。投与対象を基礎疾患のある検査陽性者に絞った場合には、死者数の減少はその倍となった。仮想的なシナリオとして、供給量が10倍、20倍と増加した場合を想定すると、死者数は供給量の増加に応じて減少することが確認された。中等症以上の患者数も同様に減少するが、最大病床数を念頭に置いた一定のラインに達するまでの時間を顕著に遅らせる効果は確認されなかった。

一連の結果から、供給量の制約がある下では抗体カクテルの投与対象を基礎疾患のある者に限定すべきとの主張が死者数減少の観点から裏付けられた。一方で、病床逼迫の緩和という観点からは貢献が限定的となる可能性が示され、医療の維持と経済活動再開を両立させるツールとしての過度な期待はできないと考えられる。

 
資料のダウンロードはこちら:「新型コロナ対策がもたらす効果の定量的分析:抗体カクテル投与の効果について」(PDF/2021.10.15更新)

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