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GDPナウキャストとは
画像提供:Getty images

R-2021-019

昨今、公的統計といった伝統的なデータに限らず、位置情報や検索情報等のいわゆるオルタナティブデータを含む様々なデータの活用が広がり、データ分析へのニーズが高まる中、「ナウキャスト」と呼ばれる“今”を予測する取組が進んでいる。

東京財団政策研究所においても研究プログラム「エビデンスに基づく政策立案(EBPM)に資する経済データの活用」の一環としてGDPナウキャストの定期公表を開始することとしたが、ここでは、GDPナウキャストについて、その意義も含め紹介をしていきたい。 

GDPナウキャストとは
何故、GDPなのか
何故、ナウキャストなのか
コンセンサス予測との違い
予測パフォーマンス
最後に
関連文献

GDPナウキャストとは

GDPナウキャストとは、一言で表すと、“今”起こっている経済の変化を映し出すデータを利用し、公表に先立ち、いち早くGDPの“今”の姿を予測するものと言える。

経済は常に変化を続けるが、そうした変化を反映して日々公表、更新される最新のデータをもとにGDPの予測を繰り返すことで、経済の“今”に関する評価を、GDPに基づき、常に最新のものへとアップデートすることができる。絶え間なく変わる経済の動きを追い続けることはナウキャストの醍醐味の1つとなっている。同じ予測でも、まだ見ぬ“先”の姿を予測する「フォーキャスト」とは異なるものであるが、将来を予測するためには、その前提として、まず、“今”を捉える必要がある。 

何故、GDPなのか

経済の変化を捉えたいと考えた時、実は、GDP以外にも景気動向指数や鉱工業生産指数など他の様々なデータを用いることもできる。ただし、一国経済全体の動向となると、限られた分野、活動における動きを見るだけでは十分でなく、一国の経済活動を体系的に捉えるGDPが有用となっている。

GDPは経済活動の成果が集約された指標であり、その動きから一国経済の変化を知ることができる。加えて、GDPは国際的な基準に則って作成されているため、国際比較をも容易とする。そのため、政策担当者、エコノミスト、更には経済学を学ぶ学生に至るまで、経済動向に関心を持つユーザーの間で最も利用されるデータとなっている。GDPが公表されると、紙面やニュース等で大きく報じられることは、こうした世の中のニーズを反映しているのである。

何故、ナウキャストなのか

GDPは経済の変化を捉える上で最も重要なデータであるが、四半期統計であるため、四半期に1度しか知ることができない。また、ありとあらゆる経済活動の成果を集約する必要があるため、その作成に時間を要する。GDPの作成に利用される基礎統計のほとんどは毎月の経済の変化を反映する月次統計であるが、GDPは対象となる四半期の3か月目のデータの公表を待って作成されるため、利用する基礎統計におけるレポーティングラグ(統計の対象となる月が終了してから統計が公表されるまでの期間のことで概ね1か月)の影響を受け、GDP自身も、対象となる四半期終了後、概ね1か月半程度のラグを伴って公表されている。

このように、GDPは重要なデータである一方、四半期に1度の頻度でしか、その1度についても1か月半程度待たないと最新の値を知ることができず、“先”はもとより“今”の姿であってもタイムリーに知ることができない。経済政策はバックミラーだけを頼りに自動車を運転するようなものと例えられる所以となっている。

こうした状況は諸外国でも同様であり、それ故に、GDPナウキャストの手法が開発され、欧米経済を中心に経済の今を知るための取組が進められてきた。対象とする四半期のうち1か月分であったとしても経済の変化を反映するデータを用いることで、その時点での経済の変化を、遅滞なく評価することにナウキャストは挑戦している。 

コンセンサス予測との違い

公表前のGDPの予測値については、コンセンサス予測と呼ばれる民間エコノミストによる予測の平均的な値を通しても知ることができる。例えば、日本経済研究センターが公表する「ESPフォーキャスト調査」では、毎月、約40名のエコノミストによる予測を集計し、その平均的な値を報告している。エコノミストの知見が集約された、こうした値を見ることでも、GDPの今を知ることができるとすれば、GDPナウキャストを行う意味は何であろうか。

GDPナウキャストでは、一度、予測モデルを構築すれば、データを入力することで機械的に予測対象四半期のGDPの予測値が計算される。データを入力すれば瞬時に予測が行われるといったように適時性に優れるとともに、データを逐次更新していくことで、“いつでも”、“何度でも”繰り返して予測を行うことができる。言い換えれば、GDPのリアルタイム予測を可能とするのである。なお、こうした予測モデルに基づくリアルタイム予測は何も一国のGDPの予測に限られるものではなく、地域別の経済動向、海外のGDP、さらにはGDP以外のマクロ経済変数の予測といったように応用範囲が広い。

一方で、予測モデルに基づく機械的な予測であるがための課題もある。例えば、予測対象四半期の中で予め生じることがわかっている事象(例:消費税率引上げ等の制度変更や景気対策といった政府の政策)を、わかっているからといって予測に反映させることができない。データに反映されない情報を予め考慮して予測を行うことができないのである。故に、GDPナウキャストを行う際には、今起こっている経済の変化をいち早く捉えることが何よりも重要となるが、そうした課題に応えるものとして、冒頭述べたオルタナティブデータの役割が期待されている。

ここでは、コンセンサス予測との比較の中でGDPナウキャストの特徴を見たが、コンセンサス予測との比較を議論するのであれば、予測パフォーマンスについても、コンセンサス予測と比較可能であることが求められる。今回定期公表を行うGDPナウキャストに用いる予測モデルとコンセンサス予測との勝負の歴史については関連文献に譲るが、これまでの取組から得られた結果を要約すると、新型コロナウイルス感染症の影響を受けて経済が大きく変動する以前の期間では、モデルによる予測はコンセンサス予測と比べても遜色なかった。その一方、コロナ禍において、モデルの予測精度はコンセンサス予測と比べても大きく悪化することとなった。こうしたことは、オルタナティブデータの活用を含めGDPナウキャストの予測精度向上に向けて研究に取組むモチベーションとなっている。 

予測パフォーマンス

そこで、最後に、今回定期公表を行うGDPナウキャストについて、これまでに行ってきた予測のパフォーマンスを確認してみる。

予測は、月初(前月末に公表された鉱工業生産指数、実質輸出、新規求人数、中小企業景況調査を反映)、月中(当月中旬までに公表された消費総合指数、機械受注総額、所定外労働時間、景気ウォッチャー調査を反映)と、隔週ごとに利用可能な最新のデータセットを用いて実施しているが、これまでの取組から、予測の精度はGDPの公表日に近づくにつれて、言い換えれば、予測に用いるデータの情報が増えるにつれて向上する傾向が示されている。そのため、傾向として、予測対象四半期に関する3か月分の情報を全て利用して行う場合の予測の精度が最も高くなるが、そうした予測(最終予測と呼ぶ。通常、1次速報値公表の数日前に実施)と公表値(1次速報値)を比べたものが下図となる。

これを見ると、上述のとおり、新型コロナウイルス感染症の影響が顕在化する前までは一部を除き概ね両者は一致していたが、コロナ禍における2020年以降の動きを見ると、経済が大きく変動する下で両者が一時的に大きく乖離していることがわかる。 

図:GDPナウキャスト(最終予測)と公表値(1次速報値)の比較


 
なお、既に述べた通り、GDPナウキャストの意義は、リアルタイム予測を通して今起こっている経済の変化を追い続けることであり、そのパフォーマンスは最終予測のみで測られるものではない。日々公表、更新される最新のデータをもとに予測を繰り返すことにより、最終予測にかけて、GDPの姿を時点時点でどのように捉えてきたかといった予測の変遷も、また、パフォーマンスを評価する上で重要となる。GDPナウキャストの予測パフォーマンスの詳細について興味のある方は、是非、関連文献をご覧いただきたい。 

最後に

GDPナウキャストについては、継続的に取り組むことが何よりも肝要となる。日々、予測を繰り返す中、時に実態にそぐわない結果が得られる場合もあるが、モデルの特性や入力データの挙動を精査することを通じて、機械的な予測に人間味のある解釈を加えることを心掛けていきたい。

東京財団政策研究所ウェブサイト GDPナウキャスティング

関連文献

GDPナウキャスティング:成果と課題 Kanagawa University Economic Society Discussion Paper No.202101 20216
Real-time GDP forecasting for Japan: A dynamic factor model approach, Journal of The Japanese and International Economies 34, 116-134. July 2014

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