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【開催報告】 「熟議(トライアル)」
R-2022-103

(1)「熟議」について

11月17日、「熟議(トライアル)」と題するディスカッションイベントを開催しました。ファシリテーターに鈴木寛先生(東京大学教授、慶應義塾大学教授)を迎え、東京財団に所属する異なる専門分野の研究者の方など14名(オンラインを含む)が参加しました。

鈴木先生のお名前で、ピンとくる方もいらっしゃるかもしれませんが、「熟議」とは、ある問題に対して関心を有する当事者が熟慮して議論することにより、問題を共有し解決策を見出す取り組みです。

 冒頭に鈴木先生より 多彩な研究メンバーがシナジーすると凄いことになるのでは” という期待と共に “中央省庁の政策形成過程の課題として、様々な事情により適切なアジェンダが設定できていない。この国の論壇が提供するアジェンダは記号消費の対象になってしまっているので、メディアがあまり取り上げない「重要なこと」について、本イベントをきっかけに議論を深めたい。論壇に一石を投じるようなメッセージを東京財団が出し続けることにより、賛否両論含め議論を喚起するきっかけとなることを願う” 旨の挨拶がありました。

(2)グループワーク開始

今回のテーマは「2025年までの日本と世界を読む:リスクとチャンス」です。

テーマにある言葉が何を指すのか、事前に定義してから始めるのではなく、「この社会のリスクやチャンス」と聞いた時に、各々が大事だと思ったことを、お互いにすり合わせながら進めるよう、鈴木先生より導入があり、 “まずはSocialization、自己紹介から始めましょう” と、和やかな形でスタートしました。

(写真:鈴木先生から自己紹介では苦手なものも披露するよう念押しが)

 Aチーム、Bチームに分かれ、テーマに関して思いつく限りのことを、付箋一枚一枚に書き出し、模造紙に貼りました。模造紙を追加で使用するほど、たくさんの付箋が貼り出され、書かれた内容への各々の認識や、キーワード毎のグルーピングについて、分野や年代を超えた真剣な議論が重ねられました。

 

(写真左:来年の通常国会や骨太方針でもっと取り上げるべき点/国としての5か年、10か年計画に必要な点を付箋に書く)
(写真中:4名のオンライン参加者)
(写真右:グルーピングでは新聞のヘッドラインのように目を引くタイトルを考えることに)

(3)発表

Aチームの佐藤大介主席研究員からは「止めることができない人口減少社会」として、人口減少が顕著になる中、医療と教育は特に抜本的に制度を変える必要があること、そして「テクノロジーの進歩も止められない」とし、どんどん進歩するテクノロジーに置いて行かれるのではなく、進歩に沿った社会の意思決定のあり方を提案していくべきであるという発表がされました。また、温暖化によって北極の氷が解けていくのに伴って北側の航路が開くため、もっと北を向いて展開していくことで、資源エネルギーや食糧問題をはじめとする国内問題の解決への試金石となると共に防衛関係のニーズにも応えられるのではないかという意見も挙がりました。さらに将来を見据えて、アフリカ、火星、宇宙についても提案がありました。

 “テクノロジーの進化や価値観の変化によって、働き方も変わっていき、流動性も日本はもっと高まっていくため、進化・変化にあわせたアップデートが必要” とし、Aチームの発表は終わりました。

 Bチームの代表、千葉安佐子政策研究ポスト・ドクトラル・フェローからは、日本は研究・教育への投資が非常に乏しく、結果としてイノベーションが起こりにくくなっているため、多様な研究・教育改革を行う必要性について挙げられました。また、日本の貧困化やそれに伴う財政・金融政策のスタック、第二のコロナ禍が生じた時に盤石な体制で臨めるような体制を作らなければならない点、少子高齢化、エネルギー危機、ジェンダー問題、国防問題などについても触れられました。そして “日本の組織が抱える問題として、組織が硬直的で、個人の力を活かしきれず生産性も低いことが挙げられる。リスク回避ではなく、組織がリスクを取るような方向に転換することで、企業の生産性も上がっていくのでは” という発表がされました。

女性活躍推進についても “「女性の人材活用」という言葉がいつも上すべりしていると感じており、「女性が輝く」という言葉も、仕事をしない女性は輝いていないのか、という疑問がある”  “少子高齢化が進む中、女性の時間と体力も限られたリソースで、子供を産んで、育てることと、仕事をすること。この二つのバランスをどう取っていくべきなのか。海外の事例では、女性が仕事をしていた方が、出生率が上がるというデータもあるようだが、それを日本でどう実現していくのか。少子高齢化問題の解決には、女性の人材活用とどう向き合うかが重要” との意見が出されました。

 最後にオブザーバーとして招かれた安西所長より “分野を超えて議論をしていくことは大事で、今日はその出発点なので、ぜひ皆様にリードしていただけると幸いです。東京財団のみならず、これからのJapanが熟議のスタイルを持てると良いと思います” と挨拶があり、90分間の「熟議(トライアル)」は閉会しました。

 今こそ社会的に重要なテーマを、自由かつオープンに、未来志向で議論することが必要であり、それをシンクタンクで開催することに意義があります。

今後も、今回の「熟議」のように、未だ見出されていない研究テーマへの端緒となることはもちろんのこと、研究者の相互理解と分野横断的連携、そして若手とトップクラスの研究者がフラットに議論する場の創造に貢献できるよう努めていきたいと思います。

(※本イベントは、「ポスト・コロナ時代における持続可能かつレジリエントな医療・看護・介護システムの構築に関する研究」研究プログラム(研究代表:渋谷健司研究主幹)が企画の上、トライアルとして一部の所属研究員に案内を出し、通常3時間半程度で行う「熟議」を90分の短縮版として開催しました。今後の開催についても、テーマやシチュエーションに応じた案内を検討しております。

 「熟議(トライアル)」開催概要

■テーマ:「2025年までの日本と世界を読む:リスクとチャンス」

■開催日:20221117日(木)15001630
■場 所:東京財団政策研究所大会議室/Zoom併用

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