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なるほど訪問看護 ~訪問看護の成り立ちと訪問看護でできること~
画像提供: Getty Images

なるほど訪問看護 ~訪問看護の成り立ちと訪問看護でできること~

April 6, 2023

R-2022-144

訪問看護の成り立ち
訪問看護ではどんなサービスを受けられるの?
訪問看護を利用するには?
訪問看護の利用につながらない理由?

1992年に訪問看護ステーションによる訪問看護がスタートしてから、約30年が経ちます。

今回は、訪問看護の成り立ち、利用方法、訪問看護を利用すると受けられるサービスについて動画とともに説明します。

訪問看護の成り立ち

1983年に、初めて病院から退院する患者の訪問看護に診療報酬が認められました。

その後、1991年に老人保健法の改正により老人訪問看護制度が発足し、翌年には、在宅で寝たきりの高齢者を対象に、老人訪問看護ステーションによる訪問看護が始まりました。

さらに、1994年には、健康保険法等の改正により、全世代の在宅療養者を対象とした訪問看護が提供できるようになりました。その後、2000年の介護保険法施行に伴い、介護保険における訪問看護が始まりました。

今後、超高齢社会の到来により、医療や介護の需要がさらに増加することが見込まれています。2025年度を目途に、市町村や都道府県がそれぞれ地域の特性に応じて、医療、介護、予防が一体的に提供される仕組みを作り上げていく「地域包括ケア」の構築が進められています。

看護においても、日本看護協会、訪問看護財団、訪問看護事業協会の3団体が地域包括ケアシステムの構築に向けて、「訪問看護アクションプラン2025」を公表し、訪問看護の量的拡大、訪問看護の機能拡大、訪問看護の質の向上、地域包括ケアへの対応におけるアクションプランに取り組んでいます。 

訪問看護ではどんなサービスを受けられるの?

訪問看護では、次のようなサービスを受けることができます。

健康状態の観察
血圧・脈拍・血中酸素濃度・血糖値の測定、呼吸状態・むくみの有無・体重変化の観察など、利用者の病気や状態に合わせて、全身の健康状態を観察し、適切なアドバイスを行います。

療養生活の相談・支援
利用者の体調、日常生活に関する相談だけではなく、利用者の家族が抱える介護・看護の負担に関する相談も受けています。患者会、家族会、相談窓口の紹介など、利用者やその家族の精神面の支援も行っています。利用者が病気の経過や生活で気を付けることなども相談できます。

身体の衛生管理・日常生活の支援
利用者ご自身では難しい衛生管理や排せつの支援など、家で過ごすために必要な支援を行います。具体的には、入浴時の介助、手浴、足浴や爪の衛生管理、便が出やすくするための浣腸や摘便、導尿カテーテル(管)などのカテーテル管理などがあります。

リハビリテーション
主治医の指示書にもとづき、利用者やその家庭の環境に合わせたリハビリを行います。立つ、歩く、指を動かすなどの身体的機能や着替えなどの日常生活を送るうえで必要な機能の維持や回復を目指します。

薬の管理の相談
処方された薬を確認し、飲み忘れないように服薬セットに薬を振り分けたり、残薬数のチェックをしたりし、利用者が薬をきちんと飲んでいるか確認します。

医療処置・治療
医師の指示のもと、カテーテル(管)の管理、点滴などの刺入部の消毒、点滴管理、酸素吸入器・呼吸器の管理、たんの吸引、床ずれの処置やガーゼ交換などを行います。

終末期ケア
医師の指示のもと、利用者の心のケアに配慮し、苦痛や倦怠感、不安の緩和を行います。

医療機関・ケアチームとの連携
医療機関と連携し、治療継続の支援を行います。ケアチーム[1]へ医療的視点に立ったアドバイスをし、利用者が自宅で過ごすことへの不安を軽減し、自宅で暮らし続けられるようチームで支えます。

上記以外にも、訪問看護は住み慣れた自宅で生活するために必要な様々なケアや相談に対応しています。

訪問看護を利用するには?

訪問看護を受けるには、利用者の年齢や疾患、状態によって医療保険または介護保険を利用することになります。また、それぞれの保険は、訪問看護の対象者や訪問回数が異なります。

医療保険の場合、要介護、要支援に該当しない赤ちゃんから高齢者までの全年齢が利用対象となります。訪問回数は、1回あたり3090分までで、週3回までとなっています。

介護保険の場合、要介護、要支援認定を受けた方が対象となり、1回あたりの利用時間は①20分未満、②30分未満、③30分以上60分未満、④60分以上90分未満の4区分から選択することができ、介護保険の支給限度額によって月あたりの上限が設定されます。

医療保険の場合も介護保険の場合も、訪問看護の利用には医師の指示書が必要となりますが、介護保険で訪問看護を利用する場合には、さらに市町村から要介護認定を受ける必要があります。

訪問看護を利用したい場合は、主治医、地域包括支援センター、市区町村の介護保険や障がい福祉の担当窓口などで相談することができます。

  

出典)公益財団法人大分県看護協会ホームページ「訪問看護のご利用までのながれ」をもとに作成
            図1 訪問看護を利用するための手続き

訪問看護の利用につながらない理由?

上記のフロー図(図1)を見て、訪問看護の利用を開始するまでの流れをイメージできたでしょうか。医療の専門職に就く人であっても、訪問看護を利用するまでの手続きについて正しく理解している人は多くありません。利用したい患者やその家族にとっても、訪問看護の利用には多くの手続きが必要で、どこに相談すべきか迷うのではないでしょうか。

厚生労働省の2019年度の病院報告によると、全国の病院の平均在院日数は全病床で27.3日であり、10年前(2009年)の33.2日と比べると、5.9日短くなっています。

医療費適正化にむけて在院日数の短縮を推進していく中で、受け皿となる退院後の療養先の確保が重要となっています。その受け皿の一つが在宅療養であり、訪問看護サービスは安心な在宅療養を支えています。

しかし、訪問看護の利用件数は伸び悩んでいます。この理由としては、訪問看護の需要はあるものの、在宅療養できる患者が訪問看護サービスを知らなかったり、訪問看護サービスの申請手続きが複雑で、患者が訪問看護を選択するまでに時間を要したりすることが考えられます。患者やその家族が訪問看護師と直接つながり、訪問看護を選択できない状況にあります。訪問看護を利用して、在宅療養できる患者が、訪問看護へアクセスできない状況にあるのです。このような状況を改善すべく、本研究プログラムでは、訪問看護へのアクセシビリティ向上に向けた政策提言を目指しています。   [文責:石原]

【動画1】
訪問看護よくわかる編

【動画2】
訪問看護でできること編

引用文献:

公益社団法人日本看護協会, 公益財団法人日本訪問看護財団, 一般社団法人全国訪問看護事業協会. 訪問看護アクションプラン2025 2025年を目指した訪問看護, https://www.jvnf.or.jp/wp-content/uploads/2019/09/actionplan2025.pdf(閲覧日:2023年3月7日).

厚生労働省(2009). 病院報告,
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/iryosd/09/dl/03.pdf(閲覧日:202337日).

厚生労働省(2019). 病院報告,
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/iryosd/19/dl/03byouin01.pdf(閲覧日:2023年3月7日).

厚生労働省(2022).病院報告,
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/byouin/m22/dl/2202kekka.pdf閲覧日:202337日)

 

 

[1] ケアチームとは、医師、薬剤師、管理栄養士、理学療法士、作業療法士、ケアマネージャー、医療ソーシャルワーカー、介護士など在宅で療養する方を多職種で支えるチームです。

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