東京財団政策研究所 Review No.02

公益財団法人東京財団政策研究所のリーフレットです。非営利・独立の民間シンクタンクとして、外交・安全保障、経済・社会保障、環境・社会分野の政策提言・普及活動と、国内外で実施する各種人材育成プログラムを行っています。


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010は今後長期にわたって10%の高成長を持続できる」と講演などで述べている。彼らはいずれも中国の政策決定に強い影響力を持つ研究者である。ただし米中貿易戦争が中国経済に落とした影をみると、予想以上の大きなダメージとなっている。中国人民大学の向松祚教授(経済学)は、「今の経済成長率は高くても1.67%しかない」と北京で開かれたフォーラムで講演した。貿易戦争の影響は成長率を押し下げただけではなく、輸出製造業にリストラをもたらし、雇用の悪化が社会不安を引き起こしている。要するに、習近平政権は技術覇権争いに勝つために、技術力を強化していかなければならないが、その前に足元の経済成長を持続していかなければならない。アメリカへの輸出に依存している現実を踏まえれば、相当譲歩をして貿易戦争に終止符を打ちたい。研究者の間では、貿易戦争が長期化し覇権争いは続くとの見方が強いが、制裁関税の掛け合いはそう長く続かないだろう。トランプ政権が二期目を続けようとするならば、景気を上向きにする必要がある。中国との貿易戦争米中貿易戦争は中国経済に予想以上のダメージを与えた米中の覇権争いは驚く話ではなく、起きるべきことが起きただけである。鄧小平の訓示「韜光養」は「力が十分に強くなるまで控えめにしておくこと」だが、「覇権を求めない」という意味ではない。その意味の重点は「十分に強くなるまで待つ」ことにある。解釈によっては臥薪嘗胆と同意語と理解できる。すなわち、今の中国の国力が十分に強くなっているかどうかについていえば、習近平政権はすでに強くなっていると判断し、実力相応の外交を展開しようとしているだけである。むろん、こうした判断について、中国国内でも賛否両論がある。政府に近い研究者とエコノミストは、中国の国力が強くなっているのに、外交パフォーマンスが貧弱であると批判する。清華大学の胡鞍鋼教授(経済学)は、北京で開かれたフォーラムで「中国は科学技術についてすでに全面的にアメリカを超越している」と豪語した。世界銀行の前チーフエコノミスト・北京大学の林毅夫教授(経済学)は、「中国経済結論/貿易戦争はいつまで続く?自国経済の回復を望む両国は関係修復に向かわざるを得ない●米中貿易戦争はグローバルの覇権争いに発展しており、「新冷戦」の構図ができつつある。●所得格差の拡大などによって、中国国内でナショナリズムが煽られている。●習近平指導部のほとんどは毛沢東時代の思想教育を受けた元紅衛兵世代であるため、権力を崇拝する傾向が強い。●強国復権を目指す習近平政権は「一帯一路」プロジェクトや「中国製造2025」構想を打ち上げたが、米中覇権争いの標的になっている。●憲法改正で国家主席の任期制限が撤廃され、習近平国家主席は三期目を目指すが、その正当性を立証する必要がある。台湾を統一する必要性は日増しに強まっている。●足元の日中関係は改善される方向にあるが、米中関係の変化により、日中関係が急変するリスクがある。日本にとり、グローバルリスクとチャイナリスクの管理を強化する必要がある。政策的インプリケーションChinaWatch1


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