東京財団政策研究所 No. 7

公益財団法人東京財団政策研究所のリーフレットです。非営利・独立の民間シンクタンクとして、外交・安全保障、経済・社会保障、環境・社会分野の政策提言・普及活動と、国内外で実施する各種人材育成プログラムを行っています。


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11ルサプライチェーンを見直そうとしているが、完全なる“脱中国”は考えにくい。指摘したように、ここで重要なことは、キーコンポーネント(基幹部品)での生産ラインの分散と戦略物資の安定供給体制の構築である。新型コロナウイルス危機をきっかけに、グローバライゼーションが大きく変化しようとしている。新たなグローバライゼーションは、強いリーダーシップが必要である。米中の対立は予想以上に長期化すると思われ、また、東アジアの地政学リスクも高まることだろう。日本が、東アジア地域の安定を維持する役目を果たすためには、中国との関係を改善するとともに、韓国とASEAN諸国との連携強化が重要である。新しいグローバルサプライチェーンを構築することは、日本企業にとっての重要な課題である。そのために日本は、さらに戦略的な“知恵”を出すことが求められている。新型コロナウイルス危機はまだ終息していないが、世界主要国では、新規感染者数と死亡者数の伸び率が低下していることから、すでに感染危機の出口は見えているといえる。これからは、新型コロナウイルスを退治するためのワクチンと治療薬の開発に重点が移される。同時に、経済の再建も、本格化してくる。ソーシャル・セーフティネットが整備されている先進国では、社会不安に陥る可能性は低いが、それが整備されていない新興国などでは社会不安に陥る可能性がある。中国経済は世界経済のけん引役だったが、新型コロナウイルス危機によって深刻なダメージを受けた。2019年には6.0〜6.5%の成長率目標が設定されていたが、2020年の経済成長は予想より大きく落ち込む可能性がある。ただ、ここでは、経済成長目標を設定するよりも、実際に経済再建に取り組むことが求められる。中国経済の深刻さは、成長率の落ち込みだけでなく、失業率の上昇による社会不安と連動する政治不安にあるのだ。だからこそ李首相は、政府活動報告のなかで繰り返して、雇用の安定維持を強調したのだ。習近平政権はこれから二期目の終盤に入るが、習近平国家主席は憲法を改正することによって、三期目の突入を考えている。しかし新型コロナウイルス危機により、習近平政権が三期目に突入できるかは不透明になってきた。さらに、後継者選びもまだ行われておらず、どのような形で政権交代が行われるかによっては、中国経済に新たなダメージをもたらすこともありえる。中国経済の急減速は、世界的な経済成長の足を引っ張ることになる。だからこそ、従来以上にチャイナリスクを管理することが、世界経済の安定成長を維持する上では、重要な課題になっている。前述したように、多国籍企業を中心に、グローバ結論/新型コロナウイルス危機にあるインプリケーション世界経済の安定成長を維持するため、チャイナリスクを徹底的に管理する


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