東京財団政策研究所 Review No.01

公益財団法人東京財団政策研究所のリーフレットです。非営利・独立の民間シンクタンクとして、外交・安全保障、経済・社会保障、環境・社会分野の政策提言・普及活動と、国内外で実施する各種人材育成プログラムを行っています。


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03士号を取得し、現地で就職された経験をお持ちなので、自分にとっては役に立つ「最新の西洋事情」(笑い)。それが刺激になって、ハーバード大学に留学することになりました。その1年後、伊藤先生が客員教授としてハーバード大学に来られました。研究計画を立てると最初に相談させていただいたりして、日本人の自分が米国の大学院で勉強していく上で心強かったです。伊藤……というのは33年前の話で(笑い)。その後、着実に実績を積まれ、さらにマクロ経済分野にまで研究対象を広げられた。特に、マクロ経済の不安定性のメカニズムの解明や経済構造変化と経済格差の研究などで著名な成果をあげられている。幅広い視点から経済をみて米国で活躍されてきた方が当研究所の所長に就任されたということで、楽しみです。理論の政策的意味を考える松山最初はミクロ経済学理論を専攻しようと思っていたのです。ところが、ハーバード大学やマサチューセッツ工科大学(MIT)、全米経済研究所(NBER)などの研究者は、シカゴ大学やスタンフォード大学の研究者たちと比べると、政策に対するインパクトを重視します。理論的な研究に対しても、「それは政策的にどういう意味があるのか」と教授たちに厳しく質される。特に、私が指導教官として選んだジェフリー・サックス(当時ハーバード大学教授、現コロンビア大学地球研究所所長)はそうでした。伊藤彼は年齢的にはわれわれより少し上くらいでしょうか。松山私がハーバード大学大学院に移ったのが25歳。そのとき、彼は29歳でした。ちょうど最少年でテニュアの教授になった年です。学生時代の思い出小林2018年12月、松山さんが当研究所の所長に就任されました。それを機に、評議員の伊藤先生とのご対談で2019年を展望し、日本や世界が良い方向に進んでいくためには何が必要なのかを論じていただきます。お二人は、学生時代から接点がおありだったのですか。伊藤ええ、松山さんとは長くて……。私が東京大学に助教授として着任したとき、大学院生だった松山さんと知り合いました。彼はその後ハーバード大学に移るのですが、私も同大学を訪れる機会があると、コーヒーを一緒に飲んで話をしたりしたものです。若いころから嘱望されている理論経済学者です。印象的なのは、論文や学会発表のイントロダクションのインパクトが強いことです。専門的な難解な内容なのですが、一般の研究者にも印象に残るイントロダクションを書いたり話したりされる。小林伊藤先生は貿易理論がご専門ですから、お二人は研究分野も近い……?松山そうですね。それに年齢も近い。私が東大大学院で経済学を勉強し始めたとき、宇沢弘文先生、小宮隆太郎先生、根岸隆先生、浜田宏一先生など大御所がいらっしゃったのですが、世代が違う。留学を考えていたときに伊藤先生が米国から帰ってこられ、次から次へとどういう論文を書こうかと精力的に研究をしていらした。宇沢先生、小宮先生、根岸先生、浜田先生のようなすでに完璧にエスタブリッシュされてしまった先生以上に、私にとっては刺激になったのをよく覚えています。「この本を一緒に読んでみようか」という感じで気軽に親しくさせていただいて。米国の大学院で博独立系シンクタンクだからこそ「学界」と「現場を知る人」と「社会」の接点をつくる


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