東京財団政策研究所 Review No.5

公益財団法人東京財団政策研究所のリーフレットです。非営利・独立の民間シンクタンクとして、外交・安全保障、経済・社会保障、環境・社会分野の政策提言・普及活動と、国内外で実施する各種人材育成プログラムを行っています。


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09世界が求めるのは自由で透明な中国市場の開放2020年は習近平政権にとってまさに正念場である。トランプ政権との貿易交渉は1年半の歳月を経てようやく第1段階の合意に達した。中国が第1段階の合意事項を額面通りに履行するかどうか、アメリカは厳しくチェックするだろう。その上、これから第2段階の貿易交渉に入るが、簡単には合意に達することができない。すでに上げられた制裁関税を引き下げられていないなか、中国政府は毎年2000億ドルものアメリカ製品を買い増しする約束をしてしまったからだ。このことは中国経済に大きな影響を与える。こうした不利な状況下で、第2段階の貿易交渉で米中はお互いに構造問題を深掘りし、駆け引きを展開するであろう。しかも、今回の貿易交渉には、ファーウェイとZTEなど中国のハイテク企業が開発している5G技術に関する議論が含まれていない。トランプ政権の基本方針は、ファーウェイをはじめとする中国の5Gハイテク企業を叩き潰すつもりでいると推察される。多国籍企業のグローバル投資は、もっとも地政学リスクを嫌うはずである。それゆえ、多国籍企業の多くは完全に中国から離れるとは考えていないが、経済成長に立ちはだかる山積する問題の数々習近平政権が直面する問題は、これより先は、グローバル社会の間を利用して経済成長を図ることができなくなるということであろう。その打開策としては、今後、国際社会との調和を図りながら、国内の巨大市場に依存した成長を実現していくという選択肢を取るのが現実的だ。中国の新興国家との最大の違いは、巨大な国内市場を有する点であるが、その市場は十分に開かれていない。また、中国が内需依存の成長を実現するには、国際社会に対して自国の巨大な市場をどう開放していくかという難題もある。中国経済はすでにグローバル化しており、中国はグローバルサプライチェーンの主要な部分を担っている。客観的にみると、中国は門戸を閉ざすことができないのだ。これまでと同じような経済成長を目指すならば、中国はそれ相応の役割を果たしていかなければならない。それだけでなく、同時に国際ルールに従う必要もある。習近平政権がさらなる市場開放を拒んでいるとすれば、経済成長がおのずと限界にぶつかるとみてよかろう。ここで試されているのは、言うまでもなく習近平政権の統治能力である。確かなガバナンス機能が用意されていない中国では、権力を分散すると、共産党幹部はますます贈収賄や横領などで腐敗してしまう。しかし、権力を集中しても、トップダウンの管理体制において腐敗を防ぐことができない。政権が誕生してから7年間で、なんと200万人以上の共産党幹部が追放されたといわれている。それでも共産党幹部の腐敗は後を絶たないのだ。結論/中国が国際社会との協調を図れなかったら?共産党独裁政治の限界。香港デモは今後、中国社会で起きる運動の予告


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