タイプ
論考
プロジェクト
日付
2014/10/27

2014年アメリカ中間選挙 update 3: 2014年中間選挙後の共和党を展望する(西川 賢)

2014年10月18日現在、ラリー・サバトは連邦上院で共和党の5~8議席増、連邦下院では6~9議席の増加を予想しており*1 、ネイト・シルバーは連邦上院で共和党が過半数を確保する可能性を62.2%*2 、プリンストン選挙コンソーティアムは連邦上院・連邦下院で共和党が過半数を制する可能性を共に50%以上とする分析予想を提示している*3 。このように、論者によって若干の幅が見られるものの、2014年中間選挙で共和党が更に議席を増やすとする予測が大勢を占めているように見受けられる。

ここで仮に、共和党が今回の選挙で更に議席を増やすとする予測が正しいとすれば、それは共和党にどのような影響を与えるであろうか。

4年前の2010年中間選挙の場合、連邦下院の共和党指導部は選挙中から政策革新を狙って行動していた。共和党の新しい政策方針は選挙中の2010年9月23日、『アメリカへの誓約』("Pledge to America”)と題して公表されたが*4 、連邦上院ではなお民主党が多数党であり続けていたこと、そしてオバマ民主党政権が2012年の大統領選挙で再選を果たしたことから、共和党は2010年の中間選挙で掲げた政策目標を達成できたとは全く言い難い状況に陥った。

ジュアン・ウィリアムスは、2014年現在の共和党は「アジェンダが欠けており、統治能力が無く、オバマ大統領の足を引っ張る意外にこれといった特徴が無い」と批判を受けがちだが、そうした「醜悪な評価」も中間選挙で共和党が両院多数を確保すれば解消されると主張している*5 。仮に両院で共和党が多数を確保する状況が実現した場合、ジャッド・グレッグは共和党にはより明示的な政策的指針が必要となるであろうとして、共和党議会が統治するにあたっての「単純明快で基本的なプラン」の一例を提案している。それは、税制改革、教育改革、移民政策、オバマケアの廃止・縮小、連邦政府によるエネルギー規制の緩和などを含めた具体的な政策的指針案である*6 。同様に、ジョン・ベイナー下院議長も、9月18日にAEIで行った講演で(1)税法改革、(2)政府支出の削減、(3)法律制度改革、(4)政府規制の見直し、(5)教育制度改革から構成される「アメリカの経済的基礎をリセットするための5原則」を提示した*7 。ケビン・マッカーシー共和党下院院内総務も、選挙まで残すところ2週間となった10月22日、「政府のコンピテンシー」と題するメモを公表した。マッカーシーは非効率的で何の政策効果も見込めない連邦政府機関が多すぎるとして、議会共和党は政府の役割の見直し・縮小、政府規制の緩和などの手段を通じて、政府機能の改善と合理化を目指すと主張している*8

11月4日の選挙結果にかなり大きく左右されることはいうまでもないが、もし仮に共和党が両院で多数を確保した場合、共和党が以上のアジェンダ実現を目指して何らかの行動に打って出てくる可能性は小さくないであろう。

「積極的なアジェンダが無くても中間選挙は勝てる・・・中間選挙ではノーを突きつける政党で良いのだ」――そう主張するのはチャールズ・クラウトハマーである。彼はワシントン・ポスト紙に寄稿した論考の中で、2014年中間選挙後の共和党について次のような見方を提起している。クラウトハマーは、2014年の選挙で共和党が両院で多数を確保した場合、共和党は自らの理念に基づいて、これまで下院を通過しながら民主党多数の上院で阻止されてきた税法改革、キーストーンXLパイプライン敷設、国境警備強化、エネルギー規制の緩和、オバマケアの縮小・廃止などの法案成立を目指して立法活動を展開していけばよいとする。仮にそれらの立法が大統領の署名を経て成立すればそれで良し、オバマ大統領がそれら法案に拒否権を行使したとしても、その政治的責任は大統領が一身に負うこととなり、結果的に共和党を利する結果となる。2016年の大統領選挙ではオバマ大統領が拒否権を発動した法案をそのまま党綱領に掲げて戦えば良い。2014年選挙後の共和党は2016年の選挙に向け、有権者にアピールするまたとない機会を得るであろうというのが、クラウトハマーが提示する極めて楽観的な共和党の展望である*9 。クラウトハマーは以下のような一節で論考を締めくくっている。

共和党へのメモ:まずは上院選挙で多数を確保せよ。そしてアジェンダを立法化し、敢えてオバマ大統領に拒否権を行使させよ。アメリカに共和党の理念を見せるのだ。それをそのまま2016年〔の大統領選挙〕に国民に提示せよ。

だが、仮に共和党が予想通り両院で多数を確保したとしても、以上のようなアジェンダを問題なく立法化できるとは限らないのではないか。少なくとも、以下の二点が共和党にとって大きな懸念事項になっているように思われる。

第一に、2010年の中間選挙後における歳出削減をめぐる対立の過程で表面化したように、共和党内部には党内規律が存在しておらず、エスタブリッシュメントが多数を占める指導部と茶会系議員との間に特に深刻な意見の対立が存在する*10 。茶会系議員の政治戦略については、

自分の頭に銃を突き付けて『言うことを聞かなければ撃つぞ!』というようなもので、そのような戦略はうまくいくはずのないことは共和党内でも多くの人は分かっていたし、今後もそのような戦略は通用しない。しかし、一部のティーパーティ議員は自らの選挙のことだけを考えて行動し、その他の共和党議員たちも次の議会選挙の予備選挙で勝つことを考えて結局あのような事態になり、共和党は自ら大きな墓穴を掘ることになった。

という専門家の意見も存在している*11 。2010年の中間選挙では主としてエスタブリッシュメントか茶会系の共和党下院議員候補が当選する傾向が見られたが、2014年の中間選挙では民主党優位の選挙区で戦っている共和党下院議員候補が少なくない。すなわち、それらの選挙区から、中道よりの政治姿勢を取る「穏健派共和党下院議員」が新たに当選を果たすことも考えられる。そうなれば、エスタブリッシュメント、茶会派、そして穏健派に三分裂した選挙後の共和党は、政策実現に向けた党内の意思統一や一貫した戦略形成を保つことがより一層困難になるとの観測も示されている*12

第二に、第一の点とも関連するが、下院共和党指導部(特にベイナー議長のリーダーシップ)に対して、党内から不満が依然として燻りつづけている点も共和党にとっては懸念材料であろう。2015年1月に行われる下院議長選挙では既に共和党内でベイナー議長のリーダーシップに不満を抱く勢力が議長の解任を企てていると噂されており、対抗馬としてジェブ・ヘンサーリング議員やラウル・ラブラドール議員の名前が取り沙汰され始めている*13

2014年の中間選挙の結果次第では、共和党がアジェンダ実現を目指してより積極的な行動に出てくる可能性は小さくないであろう。ただし、共和党は党内に幾つかの不安材料を抱え続けている状況にあることも確かであり、「強行突破」を図れば自滅を招きかねない状況でもある。

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*1: http://www.centerforpolitics.org/crystalball/

*2: http://fivethirtyeight.com/interactives/senate-forecast/

*3: http://election.princeton.edu/senate-seat-history/

*4: 吉野孝「連邦下院議院指導部:組織化、戦略、活動」吉野孝・前嶋和弘編『オバマ政権と過渡期のアメリカ社会‐選挙、政党、制度、メディア、対外援助』(東信堂、2012年)、32頁。

*5: http://thehill.com/opinion/juan-williams/220474-juan-williams-even-a-senate-victory-wont-heal-gop-divisions

*6: http://thehill.com/opinion/judd-gregg/217671-judd-gregg-a-positive-agenda-for-a-gop-congress

*7: http://www.speaker.gov/video/full-text-five-points-resetting-america-s-economic-foundation

*8: http://thehill.com/blogs/floor-action/house/221567-read-mccarthy-memo

*9: http://www.washingtonpost.com/opinions/charles-krauthammer-the-real-reason-winning-the-senate-matters/2014/10/02/b1423b66-4a5d-11e4-a046-120a8a855cca_story.html

*10: 吉野孝「連邦下院議院指導部:組織化、戦略、活動」吉野・前嶋編『オバマ政権と過渡期のアメリカ社会‐選挙、政党、制度、メディア、対外援助』、194頁。

*11: 山岸敬和『アメリカ医療制度の政治史:20世紀の経験とオバマケア』(名古屋大学出版会、2014年)、307頁。

*12: http://www.nationaljournal.com/congress/coming-soon-to-the-house-gop-more-moderates-20140930

*13: http://thehill.com/homenews/house/218725-conservatives-plot-to-oust-the-speaker

■西川賢 津田塾大学准教授