アメリカ大統領選挙UPDATE 2:2012年共和党アイオワ党員集会、ニューハンプシャー予備選挙 (渡辺将人) | 研究プログラム | 東京財団政策研究所

東京財団政策研究所

詳細検索

東京財団政策研究所

アメリカ大統領選挙UPDATE 2:2012年共和党アイオワ党員集会、ニューハンプシャー予備選挙 (渡辺将人)

December 12, 2011

2012年アイオワ党員集会は2008年と同様1月3日に行われる。アイオワ地元紙『デモイン・レジスター』世論調査(11月30日)によると、ギングリッチ25%、ポール18%、ロムニー16%の順で、バックマン8%、ケイン8%、ペリー6%、サントラム6%、ハンツマン2%と続く。上位3人の変動率は興味深い。7月調査に比べると、ギングリッチは7%から大躍進で、ポールも7%から堅調に伸ばし、ロムニーは23%から少々下降気味である。

ギングリッチは夏からアイオワで候補者本人による地道な集会訪問を繰り返し、州委員など地元党幹部の信頼を得た成果もあるが、「非ロムニー」票が収斂していることも大きい。有権者判断は「オバマを本選で倒せる誰か」と、マサチューセッツ州知事時代の健康保険制度導入にみられるロムニーの穏健性への反発による「ロムニーではない誰か」に分離している。後者の受け皿としてのペリーとケインが失速と撤退という展開のなか、ギングリッチが浮上した。ロムニー陣営はアイオワで期待より低い結果になった場合、本命州ニューハンプシャーに影響するため、8月の模擬投票以来アイオワではアグレッシブに活動しない期待値抑制の姿勢を継続している。ギングリッチの独自の支持層の確立には、さらなる組織強化が課題となる。ギングリッチは党員集会1ヶ月前にようやくアイオワ州オフィスを始動させるなど、伝統的地上戦への注力が見られない。組織と資金に難があるギングリッチの人気は知名度を活かしたメディア露出と反ロムニー票に依存しており、アイオワで1位にならねば失速懸念は浮上するだろう。

アイオワではティーパーティ票と一部重なる宗教保守票の行方も焦点だ。アイオワでの堅調なポール支持上昇はバックマン票の流入が関係しているが、宗教右派票の動向は未知数である。アイオワ共和党は北西部スーシティなどを中心に宗教保守の強い土地柄で、2008年にはハッカビーを勝利させた。しかし、2012年の上位候補は、3回結婚したギングリッチ、原理的リバタリアンのポール、モルモン教徒のロムニーであり、福音派キリスト教徒が積極的に好む候補がいない。下位候補のバックマン、ペリー、サントラムに票が分散するか、「反オバマケア」のティーパーティ運動の連帯で社会争点を棚上げして、上位候補への投票を選ぶ者もいるかもしれない。後者の場合、信仰態度は敬虔なロムニーに票が流れる可能性は高い。ギングリッチは筆者とのアイオワ州での単独インタビューにおいて、「ティーパーティは新たなエネルギーと数々のアイデア、そして率直に言って新たな精神的タフさを持ち込んだと考えている。システム全体に良いことだし、そのように極めてアグレッシブで競争的な活動は、アメリカらしさの一部でもある」と述べ、ティーパーティ層への接近にも熱心である(August 5, 2011)。

外交情勢ではイラン情勢が急展開すれば、イラン核開発は問題なしの立場だったポールは共和党内でさらに孤立するだろう。それによってはティーパーティ票の分裂が加速するかもしれない。また、モルモン教徒のロムニーにとっては、アイオワの得票率が選挙戦全体でも重要性を持つだろう。宗教保守色のあるアイオワ共和党員が、ロムニーに3位以内の票を与えれば、キリスト教徒右派の間でも「モルモン問題はもはや問題なし」と認められたというシグナルと受容されることも期待される。

1月10日に行われるニューハンプシャー予備選では、地元ニューハンプシャー大学の11月調査で、ロムニー42%、ギングリッチ15%、ポール15%となっている。ギングリッチは10月の4%からの急浮上であるが、同州の『ニューハンプシャー・ユニオンリーダー』紙の支持も取り付けた。しかし、同紙は伝統的に保守的な候補を支持する方針で、ギングリッチを好んだわけではなくロムニー支持を避けた格好で、ここでも「非ロムニー」の力学が働いている。ロムニー優位は揺らいでいない。

ニューハンプシャーの共和党予備選は「インデペンデント」として登録している人も、共和党と民主党のどちらでも(どちらか1つを選んで)投票できる点である。今回、民主党側が予備選挙を行わないので、より多くの「インデペンデント」が共和党の投票に参加する可能性がある(アイオワでも党員集会当日に共和党として登録することは可能)。2012年サイクルのニューハンプシャー予備選は、過去のニューハンプシャー予備選に比べ、また厳密に共和党登録者しか投票を許さない州に比べて、有権者の投票行動の党派性に流動性が加味される。また、ニューハンプシャー州は共和党関係者の間で「マサチューセッツ州北部」と呼ばれるように、ボストンの影響圏にある。2008年のマケインに相当する敵がいない分、ニューイングランドの地理的条件はロムニーに加勢するが、政策で候補者を選ぶ「インデペンデント」の参加が増大すればこの傾向を強めるかもしれない。ただ、有権者との気さくなコミュニケーションを苦手とするパーソナリティ問題などロムニー陣営におけるキャンペーン上の不安要素も依然として残っている。

    • 北海道大学大学院メディア・コミュニケーション研究院准教授
    • 渡辺 将人
    • 渡辺 将人

注目コンテンツ

BY THIS AUTHOR

この研究員のコンテンツ

0%

INQUIRIES

お問合せ

取材のお申込みやお問合せは
こちらのフォームより送信してください。

お問合せフォーム