タイプ
レポート
プロジェクト
日付
2010/9/8

レアアース輸出規制を強める中国への対処法(2)

2.レアアースの供給源は本当に中国だけなのか?

中国の輸出規制により供給不安が懸念されるレアアースであるが果たしてその供給源は中国だけに限ったものなのであろうか。これまでもレアアースの供給不安の問題が話題になる度によく耳にするのが、「レアアースの生産は中国に握られているというが世界の埋蔵量で見れば中国は30%程度でその他は世界に広く埋蔵されており開発が進めば問題ない。」という類の話だ。果たしてその真偽はいかがなものか。 その答えを導き出すにはレアアースとはどういったものなのかあらためて見てみる必要がある。

レアアースとは、スカンジウム(SC)、イットリウム(Y)を含めた17元素の総称であり、一言でレアアースといってもその種類には17種類あると言う事になる。さらにこれら17種類のレアアースは大きく軽希土類(LREES)と重希土類(HREES)という2種類に大別される。

軽希土類(LREEs)は、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nb)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)といった元素を指し、そして重希土類(HREEs)は、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホロミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)となる。

軽希土類は酸化鉄型鉱床、カーボナタイト型鉱床、漂砂型鉱床といった鉱床から産出されおよそ世界に広く分布しており今後さらに開発が進めば新たな鉱床も発見される可能性が高く、中国以外の供給源の多元化を図りやすいと考えられている。

一方、重希土類に関しては主にイオン吸着鉱、アルカリ岩型鉱床といった鉱床から産出されるが、アルカリ岩型鉱床からのレアアースの抽出はイオン吸着鉱からの抽出に比べコストが高く、また抽出技術も確立されていないことから、現状重希土類の供給源はイオン吸着鉱からの産出に偏っているという状況にある。そして、そのイオン吸着鉱は主として中国の南部の鉱床に偏在しており現状重希土類に関しては中国からの供給に頼らざるを得ないという状況にあり、この点がレアアースは中国に握られていると言われる所以である。

ジスプロシウム(Dy)等の重希土類は次世代自動車のモーターの磁力向上や原子炉の放射線遮蔽材等として使われる不可欠な鉱物であり現在、ベトナムなど様々な国で重希土類を含んだ鉱床の探鉱が進められているが中国に替わる鉱床が開発されたという話は未だ無い状況にある。



3.都市鉱山はレアアースの供給源となるか?

昨今レアアースを含めレアメタルの新たな供給源として “都市鉱山”の開発ということが話題になる。“都市鉱山”とは、国内にある使われなくなった電子機器を集めてそこからレアメタルを取り出して再利用するというもので、都市の中に眠っている不要な電子機器を都市の中にある鉱山と見立てて“都市鉱山”と呼ばれているものである。

一説によると日本の都市鉱山のポテンシャルとして、インジウムは世界の埋蔵量の61%相当で世界1位、タンタルは世界の埋蔵量の10%相当で世界3位、プラチナでは世界の埋蔵量の4%相当で世界3位の埋蔵量となると見込まれている。(※独立行政法人物質・材料研究機構資料による(日本の都市鉱山と各国埋蔵量との比較))

見込み通りにレアメタルのリサイクルが実現すれば日本にとってこれほど都合のいい事はないのだがレアメタルのリサイクルを実現させるためには解決しなければならないいくつかの課題がある。

まず、第一に現在の日本にはレアメタルの回収を目的とした使用済み小型家電を回収する制度(法的整備)が無いという点だ。
日本には資源のリサイクルを促す法制度として家電リサイクル法、資源有効利用促進法、廃棄物処理法など様々な法制度があるがいずれもレアメタル資源の回収・リサイクルを念頭にされたものではない。例えば、家電リサイクル法は、(1)テレビ、(2)冷蔵・冷凍庫、(3)洗濯機・衣類乾燥機、(4)エアコンの4品目のみについて、家電メーカーと小売業者に回収義務を課し、鉄、銅、アルミ、ガラス、プラスチックをリサイクルする仕組みを定めているもので、レアアースをはじめとするレアメタルが回収されるものではない。

次に、レアメタルを家電などの最終製品(市中製品)から回収する技術と回収システムがまだ確立されていないという点だ。レアメタルの回収・リサイクル技術については現在、JOGMECなどで回収技術の開発が行われているほか、民間企業では日立製作所がHDDやエアコン等のモーターからレアアースを分離・回収技術を開発中であるなど、レアメタル回収・リサイクル技術を含め回収システムの開発はまだ先になる見通しだ。

また、法的整備、回収・リサイクル技術が確立されたとしてもビジネスとして採算ベースに乗るかと言う事はまた別の話となる。2009年11月から2010年2月にかけて経産省が実施した「携帯電話リサイクルキャンペーン事業」の結果を見ても、携帯電話1台から回収されるレアメタルの種類は限られていた他、コスト的にも支出が収入を上回る赤字の状況であった。都市鉱山については将来的に大いに期待すべきものであるが現状すぐに特効薬となるものではないと言える。

4.レアメタル代替技術への期待と現実

供給不安が付きまとうレアアースをそれに替わる代替技術で対処する事が考えられている。そもそもレアアースを先端技術で利用する方法を考案したのは日本人であることから新たにレアアースに替わる代替原料や技術を開発する事が期待されている。

例えば、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)ではレアメタルの使用量を削減する「希少金属代替材料開発プロジェクト」が進められている。「希少金属代替材料開発プロジェクト」では平成23年から平成25年を目途にジスプロシウム等のレアメタルの使用量を現状から30%~50%削減する事を目指している。しかし、あくまで使用量を減らすことが目的でありレアメタルの使用量をゼロにするというわけではないので依然としてジスプロシウムを海外から確保しなければならない事には変わりはない。

<希少金属代替材料開発プロジェクト概要>

※NEDO「希少金属代替材料開発プロジェクト」基本計画より

民間企業では次世代自動車などに使われるモーターとしてレアアースを使わないレアアースレスモーターの開発等も進められているが、都市鉱山のケースと同じくコスト的にビジネスとして採算ベースに乗るか、また、新技術を市販製品として実用化出来るかを実証するのはまた別の話となり、今すぐに新技術で代替出来るとは言い難い状況にある。

次へ