タイプ
論考
プロジェクト
日付
2014/12/15

容器包装リサイクル ~EPR(拡大生産者責任)は財政的負担よりも物理的責任で

東京大学大学院工学系研究科 都市工学専攻
助教  中谷 隼?

1.     はじめに

容器包装リサイクル法は、前回の改正法(2006年6月に成立・公布、2008年4月に完全施行)から5年以上が経過し、2013年9月から始まった見直しのための議論も佳境を迎えている *1。再商品化義務の対象となる容器包装の中でも、特にプラスチック製容器包装(ペットボトル以外)に関して多くの問題が指摘され、利害関係者の合意に向けた議論には困難が伴っている。本稿では、プラスチック製容器包装リサイクルについて、何が問題とされているのか(論点整理)、個々の立場や短期的な利害関係を離れて俯瞰的に見たとき、どのようなリサイクルシステムが望ましい(理想像)と言えるのかを考察する。その上で、利害関係者間での理想像の共有と実現に向けて、筆者の提言を述べる。

2.     プラスチック製容器包装リサイクルの論点

プラスチック製容器包装に関しては、依然として分別収集や選別保管、再商品化(特に材料リサイクル)の費用が高いことから、市町村や特定事業者(容器包装の製造事業者や利用事業者)の責任分担の問題や、再商品化事業者の入札における材料リサイクル優先の是非を中心として、様々な立場から意見が出されてきた。前回の法改正では、市町村の分別収集によるリサイクルの合理化への寄与に対して特定事業者が資金を拠出する仕組みが創設され、また、緊急避難的・補完的な対応としてプラスチック製容器包装のサーマルリカバリーが認められた(環境省HP)。2010年度からは材料リサイクルの優先入札枠の決定に総合的評価が導入されるなど(日本容器包装リサイクル協会2014a)、これまでにも問題への対処は見られるものの、いずれも本質的な問題解決には至っていないというのが、筆者の見解である。

前回の法改正から持ち越された論点や、その後の議論で提起された論点は、以下のように整理される。

1. 材料リサイクルの優先入札枠は50%(市町村申込量に対する割合)で適正水準か *2。そもそも優先入札枠は必要か。
2. ?材料リサイクルの再商品化製品(再生樹脂)は、どのような用途に利用するべきか。擬木やパレットといった利用用途で十分なのか。
3. 材料リサイクルの優先入札によって、ケミカルリサイクルの落札単価も高止まりしているのではないか。
4. サーマルリカバリーは再商品化手法として認められないのか。認可されるためには、どのような条件が求められるか。
5. 市町村による選別作業は何のために必要なのか。再商品化事業者における選別作業と重複するため、非効率になっているのではないか。
6. 容器包装という範囲の中だけで議論するよりも、プラスチック利用全体の視点からリサイクルを議論するべきではないか。


これらのうち1. や2. の含意は、再商品化費用と再生樹脂の付加価値の両面から、現行の材料リサイクルが経済的に非効率ではないかという点にある。それに加えて、温室効果ガス排出量や化石資源消費量を指標としたライフサイクル評価(LCA)の結果からは、ケミカルリサイクルや一定のエネルギー効率を持つサーマルリカバリーと比較して、材料リサイクルが環境面・資源面で望ましいとも言えないことが明らかになっている(日本容器包装リサイクル協会2007;中谷・平尾2010)。それらの要因は、材料リサイクルという再商品化手法そのものの技術的な問題よりも、分別収集されたプラスチック製容器包装の中で再生樹脂にリサイクルされるオレフィン系樹脂は半分程度であり、他は残渣になる(中谷他2011)という回収物の問題にある。そのため、現状での評価のみに基づいて再商品化手法の優劣を決めることは拙速であるとも言える一方で、現行のような分別収集と材料リサイクルを前提とした対処の積み重ねでは、大きな改善が困難であることも否定できない。議論の視点を、優先入札の是非から、どのような材料リサイクルを目指すべきかという論点に改め、その理想像からバックキャスティング的に具体的な方策を検討することが求められる。

筆者は、材料リサイクルの抜本的な改善のヒントは、ペットボトルリサイクルとの対比から得られると考えている。ペットボトルリサイクルにも問題が皆無であるとは言えないが、少なくともプラスチック製容器包装と比べれば、経済的に望ましいリサイクルが実現していることは間違いない。以下のような論点(成功要因)について検討することで、経済性のある材料リサイクルの要件が明らかになるものと考えられる。

7. ペットボトルリサイクルでは、なぜ有償入札(リサイクル事業者が使用済ボトルを買い取る形)が成り立っているのか。

8. ペットボトルでは、なぜクローズドループ(ボトルtoボトル)のリサイクルが実用化されているのか。

また、論点のうち3. や4. は、材料リサイクルと比べれば経済的に優位にある(落札単価が低い)ケミカルリサイクルが、エネルギーリカバリーと比べたときに優位性を維持できるのか、もしエネルギーリカバリーの参入によって落札単価が低下するのであれば、それを認めない合理的な根拠はあるのかという、再商品化手法の定義とも関わる問題である。

3.     プラスチック製容器包装リサイクルの理想像

以上の論点整理を受けて、プラスチック製容器包装リサイクルの理想像について検討し、リサイクルを含む容器包装のライフサイクル上に表した(図1)。また、理想像に内包された要点と、それらを実現するための具体的な方策、それらによって期待される効果を整理した(表1)。
 

図 1     プラスチック製容器包装リサイクルの理想像(私案)


 

表1      理想像の要点と具体的な方策および期待される効果

 

3.1.     特定事業者の物理的責任

まず、1つ目の要点である「特定事業者の物理的責任」について述べる前に、改めて拡大生産者責任(EPR)の定義を確認したい。環境省(2014)によれば、EPRは「生産者が、その生産した製品が使用され、廃棄された後においても、当該製品の適正なリサイクルや処分について物理的又は財政的に一定の責任を負うという考え方」「具体的には、製品設計の工夫、製品の材質・成分表示、一定製品について廃棄等の後に生産者が引取りやリサイクルを実施すること等が含まれる」と定義されている。論点1. のような問題が特定事業者によって提起されるとき、その目的が再商品化費用の低減にあることは言うまでもない。逆に、EPRの徹底を求める消費者団体などの主張は、特定事業者による費用負担の範囲の拡大に偏りがちである。こうした議論においては、再商品化費用の内部化によって環境配慮設計(DfE)やリサイクル設計(DfR)が促進されるという理論のもと、常にEPRの財政的責任の側面のみに焦点が当てられてきた。しかし、上記の定義にも明らかなように、そもそもEPRには物理的責任という側面もあり、その方が原点であると言うこともできる。

前述したペットボトルリサイクルの成功要因は、直接的には、使用済ボトルが他の容器包装と区別して回収され、ボトル本体の素材が無色透明の単一樹脂であるという条件が、材料リサイクル(ペットボトルの場合は、マテリアルリサイクルと呼ばれることが多い)に適していることに帰着する。そのため、高品質な再生樹脂を高い歩留(少ない残渣)で製造することができる。ここで強調したいのは、ペットボトルは当初からリサイクル“しやすかった”のではなく、生産者(樹脂・容器・飲料メーカ)が中心となって制定された自主設計ガイドラインなどによってリサイクル“しやすくした”という、リサイクルプロセスとDfRの相互的な改善の経緯である(中谷2010)。そこには、ペットボトルの環境性・資源性を向上させるという生産者の強い動機が働いていた。また、回収物が飲料・食品用の容器に限定されているというソースコントロールの確保が、飲料・食品用ボトルへのクローズドリサイクルを可能にしていることも無視できない。

プラスチック製容器包装の材料リサイクルを抜本的に改善するためには、ペットボトルの事例のように、生産者(特定事業者)が自身の製造・利用・販売した容器包装について、リサイクルの段階まで物理的な責任を負う仕組みが欠かせないと考えられる。現行のプラスチック製容器包装を一括りにした分別収集では、各生産者によるDfRの効果は薄まり(または打ち消し合い)、有効に機能しない。物理的責任の遂行のためには、自身の容器包装や同じ品目の容器包装のみを個別回収して、ソースコントロールが確保された回収物をクローズドリサイクル(または、それに近い用途へのセミクローズドリサイクル)によって高度利用することが望ましい。そのための具体的かつ現実的な方策として、小売事業者による(自主的な)個別品目ごとの店頭回収が挙げられる。こうした自主回収・高度リサイクルは、特定事業者の責任負担だけではなく、以下のような様々な主体の協働という観点からも、そのモデルとなる取組であると言える。

  • 製造事業者によるDfRと再商品化事業者の協力
  • 小売事業者による回収への消費者の協力
  • 特定事業者による再商品化製品の利用

3.2.     プラスチック利用全体の資源効率性

現行の材料リサイクルに対する批判的な意見の中には、その再商品化製品の用途のうち、擬木やパレットといった必ずしも高付加価値ではない製品が高い割合を占めていることを指摘するものがある。資源として有効利用されている限り、その付加価値(販売価格)は問題とならないと考えることもできるが、同等の費用であれば、より付加価値の高い製品にも利用できるような高品質な再生樹脂を製造できた方が望ましいことは間違いない。特に、容器包装という範囲の中ではなく、再生樹脂を利用する側である他の用途のプラスチックまで含めた全体の資源効率性を考えた場合、高付加価値な用途への利用の方が優位になることが期待される。

このような再商品化製品の高度利用の促進に対して、感覚的には異論は少ないと思われる。ここでの問題は、どのような製品へのリサイクルを「高度利用」と定義するか、どのように「資源効率性」を計測するかという、評価の指標と方法が未確立であるために、具体的に促進・優先するべき利用用途を定義できないことにある。廃プラスチックのリサイクルを対象とした資源効率性の指標開発は、ライフサイクル評価(LCA)をはじめとした評価手法の研究者に与えられた課題であろう。

また、論点5. のような選別作業の非効率性に関して、市町村による選別保管を省略して、後述する高度選別施設への回収物の直接引渡が可能になれば、選別作業の重複は解消される。ただし、そのためには分別基準適合物の画一的な適用を緩和する必要がある。現行の分別基準の目的は、リサイクルに適した回収物を選別することよりも、「容器包装」として特定事業者の財政的責任の範囲にある回収量を計測することにあると言える。後者のような責任分担の特定のために追加的な費用を発生させるよりも、回収物の組成のサンプル調査など代替となる計測方法によって全体としての社会的費用を減少させることに、利害関係者(特に特定事業者)の合意が得られるかどうかが鍵となる。

3.3.     再商品化手法の多様性の確保

リサイクルシステムの設計において、ある特定の時点・条件下での最適性だけではなく、外的要因の変動リスクを考慮する必要性が指摘されている(石川他2014)。システムの柔軟性の向上は、外的要因(プラスチック製容器包装リサイクルの場合は、再商品化製品への需要など)の変動に対するリスク分散に有効であると考えられる。そのためには、様々な特性を持った多様な再商品化手法が共存している状態が求められる。こうした観点からは、エネルギー効率などの一定条件を満たしたサーマルリカバリーを再商品化手法として認めることも、十分に検討する価値はあると言える。

ただし、競争入札を前提とする限り、いわゆる「安かろう悪かろう」のリサイクルを排除するためにも、再商品化手法の認可の基準を改めて慎重に議論・検討する必要がある。特に、ケミカルリサイクルに分類される再商品化手法の中には、サーマルリカバリーとの区別が難しいものもある。森口(2005)は、中核となる要素技術の種類を「メカニカル(破砕・再成型など)」「ケミカル(分解・還元など)」「サーマル(燃焼・焼成など)」、用途を「マテリアル(樹脂原材料)」「フィードストック(他の原材料)」「エネルギー(熱・電力)」に分類した上で、それらを縦軸および横軸とする3×3の表の上に廃プラスチックの様々なリサイクル手法をマッピングしている。こうした分類を土台として、再商品化手法の分類を再定義することが、多様性の議論の前提として欠かせない。

また、多様な再商品化手法が同等の経済的条件下で共存するためには、全ての手法に同じ分別基準適合物を提供するのではなく、それぞれの特性に合った種類の樹脂を配分することが効果的であると考えられる。消費者に対して、プラスチック製容器包装を「材料リサイクル向け」「ケミカルリサイクル向け」といったように、さらに細かく分別することを求めるという意見もあるが、筆者には、こうした方法が有効に機能するとは思えない。

そこで、光学選別機を活用した高度選別施設の実用化・拡大が期待される。その実証試験の結果(日本容器包装リサイクル協会2014b)からは、高度選別施設の利点は、高度利用に適した選別物を得ることよりも、プラスチック製容器包装に含まれる様々な種類の樹脂を余すところなく有効利用できることと、光学選別機の設定によって選別物の種類を柔軟に変更できることにあると考える。高度選別施設から再商品化手法ごとに適した選別物を提供することができれば、より経済的に多様な手法の共存が可能になると考えられる。

4.     理想像の共有に向けた提言

本稿では、EPRの原点に立ち戻って、特定事業者による財政的な負担よりも、物理的な責任について強調してきた。また、再商品化手法の多様性の確保についても言及した。こうした特定事業者の物理的責任による自主回収と高度リサイクルの拡大や、同等の経済的条件下での多様な再商品化手法の共存を、利害関係者間で理想像として共有および実現するためには、そのことによって個々の主体が(少なくとも、現行の再商品化費用の負担よりは)経済的に有利になるように誘導しなければならない。その道筋として、最後に以下のような方策を提言したい。

  • 容器包装の自主回収・高度リサイクルを実施する特定事業者(小売事業者を含む)へのインセンティブの付与と、その実行を妨げる要因の緩和(回収物の運搬の認可など)
  • 個別品目回収に適さない容器包装について、市町村から高度選別施設への直接引渡を通した樹脂種類ごとの再商品化と、その場合の分別基準適合物の適用の緩和
  • 個別品目または樹脂種類ごとの再商品化と高度利用を可能にする材料リサイクルへの参入・転向の促進と、現行の材料リサイクルの優先入札枠の段階的な削減


謝辞
本稿は、東京財団「環境政策」プロジェクトおよび環境省・環境研究総合推進費補助金(3K123002)の一環としてまとめられた。本稿を執筆するに当たり多くの有意義なご意見をいただいた東京財団研究員、学識経験者と容器包装リサイクルの関係者の方々に謝意を表する。

参考文献
環境省 編(2014):『平成26年版 環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書』、日経印刷
環境省(HP):「容器包装リサイクル法改正 ~3Rの推進、社会的コストの効率化、関係者の連携~」、http://www.env.go.jp/recycle/yoki/a_1_recycle/recycle_06.html
石川晴菜・中谷隼・菊池康紀・平尾雅彦(2014):「変動リスクに対する頑健性・柔軟性を考慮したリサイクルシステム設計」『廃棄物資源循環学会論文誌』採択済
森口祐一(2005):「循環型社会から廃プラスチック問題を考える」『廃棄物学会誌』16 (5)、pp. 243-252
中谷隼(2010):「PETボトルリサイクル十年の興亡」『日本エネルギー学会誌』89 (6)、pp. 537-544
中谷隼・平尾雅彦(2010):「容器包装プラスチックリサイクルによる環境負荷の削減効果」『廃棄物資源循環学会誌』21 (5)、pp. 309-317
中谷隼・鈴木香菜・平尾雅彦(2011):「ライフサイクル評価に基づくプラスチック製容器包装リサイクルの利害関係者間の問題解決支援」『廃棄物資源循環学会論文誌』22 (3)、pp. 210-224
日本容器包装リサイクル協会(2007):「プラスチック製容器包装再商品化手法に関する環境負荷等の検討」
日本容器包装リサイクル協会(2012):「材料リサイクル優先事業者の総合的評価とH25 入札方法について」
日本容器包装リサイクル協会(2014a):「材料リサイクル優先事業者に係る総合的評価」
日本容器包装リサイクル協会(2014b):「プラスチック製容器包装に係る実証試験(平成24年4月~平成26年3月実施)報告書」
PETボトルリサイクル推進協議会(2013):「PETボトルリサイクル年次報告書 2013年度版」
 


*1 産業構造審議会 産業技術環境分科会 廃棄物・リサイクル小委員会 容器包装リサイクルワーキンググループと、中央環境審議会 循環型社会部会 容器包装の3R推進に関する小委員会の合同会合は、現時点(2014年9月)で第15回まで開催されている。関係者からのヒアリングや委員の自由討議を経て、第9回の合同会合(2014年3月)では論点整理(案)が示されているものの、現時点で結論には至っていない( http://www.env.go.jp/council/03recycle/yoshi03-04.html )。

*2 優先入札枠と総合的評価の考え方については、例えば日本容器包装リサイクル協会(2012)を参照されたい。