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2008 6.26 THU

第12回東京財団フォーラム「北京五輪後の日中関係への提言 食と農業/知的財産」

6月26日、第12回東京財団フォーラム「北京五輪後の日中関係への提言 食と農業/知的財産」を開催しました。

これは、去る18日に開催したフォーラム「北京五輪後の日中関係への提言 環境/地域協力」に続く、政策提言「北京五輪後の日中関係-8つの提言」(主査:関山健東京財団研究員)報告会の第2弾です。

同政策提言では、日中関係の第一線で活躍する若手実務家達が、消費者やビジネスマンにとって関心の高い分野ごとに、実務家ならではの視点で提言をまとめました。

前回の報告会は、「環境」と「地域協力」というグローバルな課題に特化して我々の提言内容を紹介しましたが、2回目の報告会となる今回は、より消費者に身近な「食と農業」と「知的財産」を取り上げました。

「食と農業」を担当いただいた福田善久・株式会社アイアグリ常務取締役は、ビジネスマンとして90年代から10年以上にわたって中国との取引に携わってきました。また、「知的財産」を担当いただいた分部悠介・弁護士は、現在経済産業省模倣品対策・通商室に出向して、日々中国との交渉に取り組んでいます。

福田氏と分部氏の報告内容は、概要以下のとおりです。いずれも写真やグラフを多様した臨場感の溢れるプレゼンテーションで、会場に足を運んでくださった100名弱の参加者の皆様からは「非常に興味深い報告だった」との感想を異口同音に数多く寄せていただきました。

東京財団では、今後も引き続き政策提言「北京五輪後の日中関係-8つの提言」の発展・実現に向けてフォローアップしていきます。

報告概要
福田氏からの報告(食と農業):

中国産の農産品や食品というと、最近では餃子問題などの影響で、とかく敬遠されがちです。しかし、世界的な食糧需給が逼迫するなか、世界最大の食糧輸入国たる日本は、「中国産は危険だから」という理由で中国産食品を敬遠し続けることはできません。

今のところ中国はほぼ100%の食糧自給率を確保していますが、日本の10倍の人口を抱える中国は、その食糧自給率がわずか5%足りなくなるだけで、たちまち世界最大の食糧輸入国となります。実際、日中両国が既に国際市場において食糧を奪い合うような状況にしばしば直面しつつあり、こうした対立構造を何とか共存関係に変えていかねばなりません。

ここに日本と中国が食と農業の分野で協力する意義と必要性があるのです。この点、機械化やかんがい整備等に関する日本の高い農業技術を中国へ移転し、中国の農業生産性向上へ協力することは、日本の食糧安全保障上も重要なことです。

また、いまや中国から多くの野菜や食品を輸入している日本にとっては、中国産食品の安全問題は対岸の火事ではなく、自分自身の問題です。日本から検疫や食品安全当局の専門家を派遣して、中国の食品安全行政のキャパシティ・ビルディングに協力したり、農民に対して正しい農薬の使用方法や無農薬での効率的な栽培方法等に関する知識やノウハウを普及させるために日本の農協のような仕組みづくりに協力したりするなど、生産者サイドのキャパシティ・ビルディングに協力することも必要でしょう。

こうした行政や生産者のキャパシティ・ビルディングに比べ、忘れられがちなのが消費者です。市場競争と淘汰によって中国産食品の安全性を高めていくという観点からは、中国人消費者の食品安全に対する意識の向上を促すことが非常に大事であり、日本の企業やNGOが中国側パートナーを見つけて食の安全に関する「食育」キャンペーンなどを実施することで、中国人消費者自身が食の安全により厳しい目を持つようになれば、市場経済のなかで徐々に中国産食品の安全性も高まり、ひいては中国からの食品輸入に頼る日本人消費者の利益にも適うでしょう。

分部氏からの報告(知的財産):

模倣品・海賊版というと、欧州のブランド品の偽物や海賊版CD・DVDを思い浮かべる方が多いと思いますが、実は、自動車部品、電器製品、インクカートリッジ等の消耗品、ベアリング等の産業工具、農薬、化粧品、玩具、スポーツ用品等々、ありとあらゆるジャンルの製品の模倣品・海賊版が出回っているのが現状です。

こうした模倣品・海賊版が、中国を震源地として東南アジア、南西アジア、中央アジア、中東、東欧、中南米、アフリカなど世界的に拡散しています。なんと中国で製造された模倣品・海賊版のうち、中国国内で消費されているのはわずか3割程度であり、それ以外は海外で輸出・消費されているというのです。そして、模倣品・海賊版業者の手口は、近年どんどん高度化し、巧妙化しているのですから厄介です。

現在、多くの中国国民が模倣品・海賊版を製造・販売・消費している根本には、やはり中国では国民ひとりひとりの知的財産権保護意識がまだまだ欠けているという現実があります。中国でも、中央政府などは近年自国の経済発展のために知的財産権の保護が重要であるという認識を持ち、積極的な法整備や取り締まりを進めています。しかしその一方で、これに対抗するような形で模倣業者の手口がどんどん巧妙になってきたり、地方での高官と業者の癒着や地元雇用の優先があって現場での取り締まりが徹底されなかったりしているのです。

このように状況が変化してきているなか、かつてのように知的財産保護のテーマを「日本vs中国」という単純な対立構図の中で捉えていても現状に合致しません。むしろ今後は、基本構図を「日本・中国政府vs模倣業者」として捉え、中国中央政府及び摘発担当行政機関と手を携えて、いかに巧妙化する模倣業者をたたいていくかが重要だと言えます。

そうした取り組みの一案として、我々の政策提言では、日中両国政府共同で「知的財産保護に向けた中長期計画」を策定して、中国国民に対する啓発活動、地方部における適切な法執行の確保、知的財産権関連法分野における学術交流等を具体的に合意・確認することや、官民の適切なチャネルで毎年その進捗状況を確認していくことを提案しています。

第12回東京財団フォーラム「北京五輪後の日中関係への提言?食と農業/知的財産」
【日 時】6月26日(木)18:30~20:00
【会 場】日本財団ビル2階 会議室
【テーマ】「北京五輪後の日中関係への提言 食と農業/知的財産」
【スピーカー】福田善久(株式会社アイアグリ常務取締役)
       分部悠介(弁護士 <経済産業省模倣品対策・通商室出向中>)
【モデレーター】関山健(東京財団研究員兼プログラム・オフィサー)

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