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日本財団グループでドイツの災害対策関連組織を視察しました。

近年、日本では、大雨による洪水や土砂災害、また、地震による津波などの自然災害が多発・激甚化しています。被災地では、NPOやボランティアが被災者の生活再建の多くを担っており、草の根組織と自衛隊、警察、消防といった政府・地方自治体所管の組織との連携が急務です。そこで、東京財団では、災害対策をはじめとする人口減少問題における諸課題を解決するための手がかりを得るべく、姉妹団体である公益財団法人日本財団及び公益財団法人日本財団ボランティアセンターと、20257月後半から8月にかけ、災害対策について先駆的な取り組みを進めているドイツを視察しました。

日本財団グループ視察団 THW本部にて
日本財団グループ視察団 THW本部にて

■THW(技術支援庁)連邦本部

一行はまず、THWTechnisches Hilfswerk; 技術支援庁)連邦本部を視察しました。THWとは、1950年に設立された内務省管轄の連邦組織で、ボンにある連邦本部のほか、8つの州本部、66の地方支部、668の地域支部があり、実働部隊となる地域支部のスタッフは全員が訓練を受けた市民ボランティアで構成されています。

ドイツで発生する主な自然災害は、洪水、嵐、大雨、土砂災害などがありますが、災害が発生した場合、ドイツ基本法(日本の憲法に相当する法律)第35条によって、まず災害地域を管轄する州(警察、消防など)が対応し、連邦政府は州からの要請を受けて支援を行います。THWは連邦組織であるため、州などからの要請があれば、州の垣根を越えて即座に人員を動員できる体制を整えているそうです。


THWでのレクチャーの様子

THWのボランティアには国全体で88,000名が登録。6つに年齢層を区分し、それらに応じた役割を有しており、活動に参加することで帰属意識、仲間意識の向上にも役立っているそうです。ボランティアは、120時間の基礎訓練を受け、修了試験に合格した者が晴れて実働部隊として稼働しており、その後の専門訓練では、不整地等での重機のオペレーションやポンプを使った給水・排水、浄水の供給、橋の建設、電気系統の整備といった様々な技術を日々磨いているとのことです。

また、基礎訓練・専門訓練を修了した一部のボランティアは、国連・EUなどと協力し、ドイツ国外での災害支援にもあたっているとのこと。THW職員からの説明では、その包括的な訓練の内容や過去の事例などについても紹介がありました。


THWの役割と組織構成について説明する、THWのKlaus Buchmüller国際局長

BBK(市民防護・災害救援庁)

内務省管轄の連邦組織として、2004年に設立されたBBK(市民防護・災害救援庁)も災害対策に重要な役割を果たしています。BBKでは、災害支援の国際間の調整や、国家戦略の策定、基幹インフラ保護の促進や危機管理対策、災害への備えやボランティア意識の醸成などを行っています。

BBKの担当者からは、ドイツにおける市民保護活動の根幹には訓練を受けたボランティアの存在が不可欠であることや、消防士としては110万人、ドイツ赤十字では54万人、THWでは88,000人のボランティア登録があることが挙げられ、技術力の向上に力を入れている一方、少子高齢化問題にも直面している旨の言及がありました。


ドイツの市民保護について説明する、BBKのChristoph Hahn氏

■ラインラント=プファルツ州消防・災害対策アカデミー

ラインラント=プファルツ州消防・災害対策アカデミー(同州の消防学校)では、災害が発生した際に初動を切る立場の消防としての組織体制、訓練の内容や訓練設備の紹介がありました。2021年に同州にあるアール渓谷で大規模な水害が発生し、130人以上もの命が奪われました。その対応を振り返り、得た教訓をもとに、現在では災害対応体制を強化し、2030年までに230名の人員追加を計画している旨の発言もありました。


ラインラント=プファルツ州消防・災害対策アカデミーのThomas Kreuz学長


救出訓練用の設備

■レマーゲン消防署

ラインラント=プファルツ州のレマーゲン市にある消防署を視察しました。全ての消防署員がボランティアであり、16歳から現場で稼働していることや、「8分ルール」というものがあり、出動要請のアラームが鳴ったら8分以内に現場に駆け付けることを目標としていることなどの説明がありました。


レマーゲンで稼働している消防車


はしご消防車


消防艇の乗船体験

THWジークブルク支部

THW668ある地域支部のひとつ、ジークブルク支部を視察しました。災害時の初動体制について、消防とTHWとの違いを「スプリンター」と「マラソンランナー」に例え、災害が発生したらすぐに駆け付ける消防に対し、THWは長期的な観点から被災地の復旧・復興支援にまであたっている旨の説明がありました。その後、救助訓練の様子を見学することができました。


地面に空いた穴から人を救出する吊り上げ訓練の様子


安全確保のための距離測定システムの説明


ライン川沿いでのポンプを使った給水・排水訓練の様子


THWジークブルク支部のスタッフとともに

THWホーヤトレーニングセンター

THWには3つのトレーニングセンターがあり、今回視察したホーヤのトレーニングセンターでは主にボランティアに対する技術的な訓練や指導者層の教育を行っています。Sabine Lützelschwab所長からは、ボランティアの情報管理データベースの説明や、ホーヤでの訓練は1週間から2週間程度、合宿形式で行われていること、また、必要に応じて毎年改定される200種類のモジュールが提供されていることなどの説明がありました。その後、屋外の様々な訓練設備を見学しました。

 
地下救出訓練のための設備


マンホールから人を救助するための訓練設備


脱線事故を想定した救助訓練用の古い鉄道車両


THWが保有するダンプカーやトラックなど様々な大型車両


THWホーヤトレーニングセンターにて

***

今回の視察を通じて、ドイツでは国を挙げてTHWが災害ボランティアを養成・派遣していること、消防士としてもボランティアが多数活躍しており、実務を想定した本格的な訓練が行われていることが見て取れ、大変有意義な機会となりました。支援にあたる強固な人員体制のみならず、技術力や訓練設備・装備の充実さに圧倒されつつ、誇りを持って訓練に励んでいたボランティアの方々の姿が印象的でした。

今回の出張で得たさまざまな知見や人的ネットワークを活かし、東京財団では、人口減少問題を抱える我が国の諸課題を解決すべく、姉妹団体をはじめとした国内外のさまざまな団体や有識者とともに取り組んでまいります。

最後に、視察先でお世話になった皆様、及び今回の視察をアレンジいただいた日本財団ボランティアセンター様に心より感謝申し上げます。

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