タイプ
レポート
プロジェクト
日付
2011/1/25

第4回 日中政策勉強会【議事録】

「2030 今後の中国経済の行方―第12次5カ年規画への視点:中央経済工作会議を踏まえて―」


真家陽一(日本貿易振興機構海外調査部・中国北アジア課長)


概要

中国の経済や産業に関する調査を担当し、北京駐在経験もある日本貿易振興機構海外調査部の真家陽一氏から中国の最近の経済動向について発表がなされた。報告は、マクロ経済動向と経済政策動向について、2010年12月に開催された中央経済工作会議を踏まえた、今後の経済社会政策を示す第12次5カ年規画に注目したもので、日本を抜き、世界経済大国2位となった中国が、2015年、2020年にはどのように変化していくのか、今後の中国経済の方向性が示された。

報告後の質疑応答では、中国が現在抱える経済面の問題を中心に意見交換がなされた。

発表内容

(1)中国の実質GDP成長率の推移
(2)中国の大型景気刺激策の概要
(3)2010年の主要経済目標と実績
(4)中央経済工作会議のポイント
(5)中国経済の中長期展望
(6)経済成長のカギは消費、第3次産業、内部開発
(7)第12次5カ年規画のポイント
(8)戦略的新興産業を育成・発展


(1)中国の実質GDP成長率の推移
・2003年~2007年まで10%を超える2桁成長を達成した。
・2008年、2009年は金融危機の影響を受け1桁台に落ち込むものの9%台を維持。
・2010年はIMFの予測によれば10.6%と回復を見せる。

(2)中国の大型景気刺激策の概要
・中国が金融危機後もすぐに景気回復を遂げた要因は、大規模な景気刺激策にある。2008年11月に打ち出し、2010年末までに約4兆元(約50兆円)が投資される。
・「インフラ整備(鉄道、道路、空港等)」、「震災地の復興再建プロジェクト」、「農村インフラ建設」、「安価な住宅建設」などインフラ公共投資が約8割を占める。
・しかしこの刺激策は2010年末で終わるため、今後が焦点となる。

(3)2010年の主要経済目標と実績
・GDP、全社会固定資産投資額、社会消費品小売総額、貿易総額は目標を上回る結果となる見込み。
・一方、消費者物価指数(CPI)は目標の3%を達成できない可能性が高い。物価上昇の懸念が高まっていることから物価の安定がマクロ経済政策の焦点となる。10月に政府は2年10カ月ぶりに利上げに踏み切り、10月から12月の三カ月で預金準備高を4回も引き上げた。

(4)中央経済工作会議のポイント
※中央経済工作会議とは、中国共産党と国務院が2011年の経済政策の方向性を討議する会議を指す。
・経済政策の基本路線は「穏健的な金融施策」と「積極的な財政政策」である。
・2011年の経済政策の重点は、安定した経済発展を目指す一方で、経済構造調整の更なる加速と、インフレの圧力の中上昇をし続ける物価をいかに安定させるかである。

(5)中国経済の中長期展望
・2015年以降の経済成長率は除々に低下していくと考えられる。
理由
1)経済の規模自体がすでに大きくなっているため、同じ伸び率で成長するのは困難。
2)エネルギー、環境問題が深刻。今以上エネルギーを大量に消費し、環境を犠牲にして成長することは困難(すでに石油の輸入依存度は50%を超えている)。
3)労働人口の減少。2015年以降、一人っ子政策の弊害として労働人口は減少に転じる見込みである。
・今後の注目点として、新政権の政策運営(2013年以降)、2011年度からの5カ年規画の内容、増加する人口に対しての食料供給の維持等が挙げられる。

(6)経済成長のカギは消費、第3次産業、内陸部開発
・経済成長の鍵は、今後個人消費がどれだけ伸びてくるかにかかっている。今までは投資に牽引された成長であり、個人消費が非常に低かった。
・第三次産業が、他の先進国に比べると、非常に遅れているため、今後伸びていくことで、経済成長を牽引していくことが可能である。
・内陸部開発が2000年から「西部大開発」と称し行われている。これまで、2兆2000億元が投じられてきたが、今後さらに10年間延長、資金を一層投じる方針である。
・西部大開発では新たに「太陽光発電基地建設」や「風力発電基地建設」などエコ関連投資が重点プロジェクトとして追加されている。

(7)第12次5カ年規画のポイント
1) 消費、投資、輸出のバランスのとれた経済成長に向けた内需拡大。
輸出、投資が牽引する経済成長だけを頼みにせず、格差の是正を図りつつ、中所得者の消費を強化すべく、社会保障制度や公共サービス体系の整備を確立。
2) 資源節約型、環境保護型社会の建設。
深刻な環境汚染に対応すべく、汚染物質の排出基準の制定や取り締まり強化、環境汚染事故に対する責任追及制度確立。
3) 競争力強化に向けた産業政策
戦略的新興産業の育成と発展、製造業の高度化、サービス産業の発展などを重点的に、競争力を強化。
4) 転換期を迎えた対外開放戦略。
従来の「輸出と外資導入の促進」から「輸入と輸出および外資導入と対外投資への促進」へ転換。

(8)戦略的新興産業を育成・発展
・第12次5カ年規画の中で新しく打ち出されたものが、戦略的新興産業7業種の育成、発展である。現在GDPの4%を占めるものだが、2015年には8%、2020年には15%に引き上げることを目標とする。
・戦略的新興産業7業種
1) 省エネ、環境保護産業
2) 次世代情報技術産業
3) バイオ産業
4) ハイエンド設備製造業
5) 新エネルギー産業
6) 新素材産業
7) 新エネルギー自動車産業

質疑応答・議論

中国が現在抱える経済面の問題を軸とし、質疑応答がなされた。主な議論の内容は以下。

・一人当たりの平均所得は2015年、2020年にどうなるのか。
・(五カ年計画に)所得倍増計画が入らなかった理由は何か。
・資本取引の段階的自由化は進むのか。
・個人消費を拡大する上で克服しなければならない問題について。個人消費伸び悩みの原因は何か。
・少子高齢化対応の取り組みについて。少子化よりも高齢化の問題の方が深刻では。
・食品価格値上り傾向の原因は何か、今後の展望について。
等を中心に活発な意見交換


作成:植村茜(学習院大学大学院政治学研究科)