「シティマネージャー制度論-市町村長を廃止する-」が出版されました

新しいガバナンスの仕組み

2006年度に取り組んだ研究の成果を基にした「シティマネージャー制度論‐市町村長を廃止する-」(埼玉新聞社)が2008年12月に出版されました。著者は穂坂邦夫(地方自治経営学会会長)、佐々木信夫(中央大学大学院教授)、牛山久仁彦(明治大学政治経済学部教授)、金井利之(東京大学大学院法学政治学政治科・公共政策大学院・法学部教授)、工藤裕子(中央大学法学部教授)、土岐寛(大東文化大学教授)、西尾真治(三菱UFJリサーチ&コンサルティング主任研究員)です。

穂坂邦夫氏からのメッセージ

監修者も兼ねている穂坂邦夫氏の「はじめに」を抜粋しご紹介いたします。

職員・議員・首長として39年間、地方自治の現場に直接関わってきたが、わが国の地方自治制度が先進諸国と異なり行政規模の大小にかかわらず、ただひとつの形態に規制されていることに大きな矛盾を感じてきた。何故なら全国一律の単一制度は自治体の経営にとって著しく合理性を欠くとともに、自治体間の競い合う姿勢を無くし、住民にとっては、運営形態を選択する余地のない押しつけ行政とうつり、享受する行政サービスと負担の原則さえ自覚できない要因につながっているからである。

かつては、地方制度調査会において地方の多様な自治制度の在り方が活発に議論されていたが、最近ではその影さえも消えようとしている。このため志木市長在任中に、我が国の地方自治における一律的護送船団方式の弊害を解消するため、構造改革特区を活用して市長をはじめ収入役や教育委員会、都市部における農業委員会の「必置規定」を規模や地域環境に応じて廃止する新たな制度の設置を提案した。市長については民主主義をしっかりと担保しつつ、多くの国々が規模に応じて採用している議会の一元制によるシティマネージャー制度の実現である。

申請時にはすべてが却下されたが数年後には収入役や出納長の廃止をはじめ多くの制度改革が実現したが、根幹となる市町村長の必置規定の廃止は現在でも見送られている。

御承知の通り我が国は高度成長期から成熟社会に激変し、高齢化と人口の減少に直面しているうえ、国も地方も未曾有の大借金と財政収支の悪化にあえいでいる。これらに対応するためには、国の1.5倍の行政経費を費消する地方の改革は急務であり、住民自治を確立し、民主主義を保障する合理的で効率的な地方行政制度の設計が必然的な時代の要請として強く求められている。長い民主主義の歴史をもつ先進諸国の大多数は自治体の規模や住民の意思で多様な自治制度を選択し、確かな住民自治の確立に取り組んでいる。

シティマネージャー制度研究会はこのような時代環境の激変の中で東京財団の政策研究の一環として、世界の政治制度や地方自治に卓越した識見を持つ委員の方々の参加によって、各国における制度の紹介はもとより、制度の長所や短所など様々な角度から確かな意見を集約することができた。

東京財団をはじめ出版をお引受け戴いた埼玉新聞社など多くの方々の理解と協力による研究成果の公表が、21世紀にふさわしい多様な自治制度の導入に向けて活発な議論を呼びおこし、いささかでも国家の再生と地方の自立に寄与できれば幸いである。

身近な自治制度を世界規模で比較

編著者の赤川の「あとがき」を紹介いたします。

ここ数年で地方の動きが一般の国民にも大きく注目されるようになりました。テレビタレントが知事に就任して、行財政改革の必要性や地域の活性化を訴える姿が珍しくなくなりました。一方、説明上手な知事経験者がテレビに出演し、地方自治体が自ら企画した事業を行おうにも、財政的、権限的に国の影響力が強く実施できなかったなどと、地方分権の必要性を説いている姿も日常的に目にするようになりました。

これまで一般の住民には馴染みの薄かった地方議会議員の活動にも関心が集まっています。地方議会議員の政務調査費の使い方や議員報酬のあり方が新聞の紙面で大きく取り上げられることが各地で起きています。本来、政策立案に必要な経費として予算化されている政務調査費で温泉旅行を楽しんだり、自宅の光熱費を支払ったりと、その金額の多寡も含め用途に注目が集まっています。領収書の提出が不要の自治体もあり、事実上の第二の議員報酬との意見もあります。議員報酬については、福島県矢祭町が月額制度を取りやめ、会議出席ごとに日当を支給制度に変更しました。このように議員のあり方や役割が問われています。

これまで多くの国民は、自らがどこかの地方に住んでいることを忘れてしまい、地方の問題とは、自分が住んでいる以外のどこか遠くの地域の問題と思われがちでした。当然のことですが、地方の問題とは一人ひとりの国民に密着した問題なのです。その最も身近な制度について十分な理解がなされていないのではないでしょうか。

地方分権改革の一環として、「平成の大合併」と呼ばれる市町村合併が行われました。その結果、市町村の数は少なくなりました。しかし、今なお約40,000人の首長や議員が選挙で選ばれています。私たちが所与のものとして運営している現行の全国一律の二元代表制は、住民の意思を的確に把握し、迅速で効率的な行政を運営する目的に合致した制度なのでしょうか。近い将来、多くの自治体が財政難に直面することは容易に想像ができます。これまで全国画一の地方制度を住民の意思でその地域の特性に見合った制度に変更することができれば、政治参加も大きく変化するのではないでしょうか。

本書はそのような問題意識から取り組んだ東京財団(会長加藤秀樹)の「日本型シティマネージャーを導入する研究」と「地方自治体のガバナンス研究」のスウェーデン調査の成果です。住民が自らの意思で自治制度を選択できるよう議論を喚起する目的で一石を投じようと考えました。そのひとつの案がシティマネージャー制度です。

なお、巻末資料に編著者が土岐氏の論文などを参考に海外の主要都市の自治体組織をまとめた表を付けました。読者の皆様には、この表を手に取りながら、世界にはさまざまな自治制度が存在することを知っていただき、また、住んでいる自治体の財政状況等を踏まえて考えると、将来どのような自治制度を採用するか思いを馳せていただければ幸いです。

 

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