H22年度 第2回 新しい地域再生政策研究会報告 | 研究プログラム | 東京財団政策研究所

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H22年度 第2回 新しい地域再生政策研究会報告

December 16, 2010

研究会概要

○日 時:2010年6月28日(木)18:30-21:15
○場所:東京財団A会議室
○出席者:
板垣 欣也  (マネージメント・デザイン・オフィス代表)
篠原 幸治  ((社)全国信用金庫協会地域活性化推進室長)
坪内 孝太  (東京大学大学院新領域創成科学研究科人間環境学専攻特任研究員)
舟本 浩   (国土交通省総合政策局交通計画課企画調整官)
松本 大地  (商い創造研究所代表取締役)
横田 茂   (運輸政策研究所)
吉永 憲   (共同通信情報企画本部次長)
関係省庁政策担当者
(東京財団)
井上健二(東京財団政策研究部研究員兼政策プロデューサー)
大沼瑞穂(東京財団政策研究部研究員兼政策プロデューサー)

議事次第

1.開会
○第1回研究会での議論等のレビュー
2.ゲストスピーカー報告
○演 題:『中山間地域における生活の足となる公共交通の確保のための方策を考える ~オンデマンドバスを例に~』
○報告者:舟本 浩 氏(国土交通省総合政策局交通計画課企画調整官)
坪内 孝太 氏(東京大学大学院新領域創成科学研究科 人間環境学専攻 特任研究員)
3.報告を踏まえた質疑、意見交換
4.今後の研究会の予定等について
5.閉会

意見交換等の概要

前回研究会の議論等のレビューを行った後、ゲストスピーカーの舟本浩氏(国土交通省総合政策局交通計画課企画調整官)より、地方における公共交通を取り巻く厳しい現状と課題、今後の対応の方向性について、交通基本法の検討状況も含めご報告いただいた後、オンデマンド交通システムに関する研究を行っている坪内孝太氏(東京大学大学院特任研究員)から、過疎地域等でのバス交通の運行の利便性と効率性を低コストで高めることが可能である東大オンデマンドシステムの概要とこれを導入した地域の取組状況等についてご報告を頂き、これら報告をもとに意見交換を行った。以下は主な内容である。

【ゲストスピーカー報告要旨】

〔国交省交通計画課企画調整官 舟本氏報告〕

<公共交通を取り巻く厳しい環境>
○交通事業に限らず、基本的には人口が増えていく、社会が成長するという前提で様々な制度設計がされているが、現実問題として人口が減少、あと40年後には1億人を切るような状況になる。そのような時代に向かってどういうシステムに組み替えていくのか。交通事業のビジネスモデルは当然変わってこざるを得ない。
○大都市圏では人口減少が緩やかだが、地方部では高齢者比率も高く、人口減少スピードも速いので、地方部から手を打っていく必要がある。
○高齢化比率は2050年には40%にも達する。老齢人口が増えて、公共交通を使う人の主要ターゲットは増えるには増えるが、一方で、交通事業が成り立っていくには通勤や通学といった毎日利用するユーザーのボリュームがある程度ないと事業は採算ベースに乗ってこないので、高齢化社会が来てたくさん乗る人が増えるように見えるけれども、マスで見るとやはり利用者数は減ってくる。
○一方で、本当に必要、代替がきかない人のサービスがなくなってくるという可能性が大きい。通勤通学の利用者が減ってくれば、それだけサービスを供給しにくくなる。
○高齢者はいま人口の約20%、そのうち非人口集中地区に1200万人ぐらいが住まれている。この非人口集中地区は、なかなか公共交通がサービスとして成り立ちにくいエリアなので、最初に何らかの支援が必要となってくるエリアになるのではないか。
○三大都市圏以外のバスの利用者数は、平成元年と平成19年と比べてみても、この20年で約半分になっている。鉄道事業者は8割が赤字、乗合バス事業者も各地で法的整理などが行われている状況。
○地方・地域鉄道、地方バス、離島航路では、運賃が高いという問題もある。利用しやすい価格設定が重要。
○都市部では、公共交通への誘導のため、トランジットモール、パーク・アンド・ライド、混雑課金など、ヨーロッパを中心に様々な取組が進められている。ヨーロッパの場合、もともと都市に集積があるので、取り組みやすい環境にあり、日本とは環境を異にする。
○バリアフリー化については、三大都市圏ではバスや鉄道のバリアフリー化は非常に進んでいるので、移動制約がある方も利用しやすい環境になっているが、一方で、地方圏に行くとまったく進んでいない。そういう意味でも地方と都会の格差はあるともいえなくない。
○公共交通の活性化・再生を支援するための国の制度としては、平成19年に地域公共交通活性化・再生総合事業を創設。これは、地域のステークホルダーが集まり、地域の公共交通のサービス水準を議論し決め、その具体化に必要な事業について一定の支援を国もするという事業。予算も少ないながらも40億円程度確保。比較的地域の方からは評判がいいが、一方で、去年の事業仕分けで、長期的には地域に任せればいいとの指摘を受け、さらに、省内の事業仕分けでも、根本的に直すようにとの指摘を受けている。地域に使い勝手のいいように制度改善をしてきたわけだが、国の制度の中で「地域もの」をどう評価するのかは様々な議論があるところ。

<最近の公共交通をめぐる議論>
○都会でも、また、特に中山間地域でも、バスがあってもバス停まで行けない高齢者の方がいらっしゃるし、東京ではだいぶノンステップバスの導入などバリアフリー化は進んできたが、地方部では、バスがあってもなかなかそういうものがない。また、バス路線が仮にあったとしても地方へ行くと便数がない。ということで、とくに地方部を中心に、いわゆるバス交通が便数もない、運賃も高いので、結果として利用者が減って、またまた便数も減るという、悪循環の状況にある。
○我が国のバス産業は、かつては儲かる事業であったということで、独立採算がベースになっており、交通事業者がきちっと運営をしていれば、一定のバスサービスがそれぞれの地域で提供されてきたという歴史がある。
○そのため、市町村レベルでは公共交通の担当者がいないというケースが結構ある。これまでは交通事業者がマーケットメカニズムに基づいて、儲かるようにサービスを提供していればそれなりの交通サービスは提供されていたので、地方自治体は、別に人材や予算というリソースを費やす必要もなく、一定のサービスが地域において提供されてきたから。
○ここ10年から20年ぐらいで、急激に利用者が減っており、これまでのような事業者の事業採算をベースにしたやり方では、サービス提供が相当無理になってきているエリアがたくさん現れてきて、どうにかしないといけないということが、ここ最近、大きく取り上げられるようになってきた。
○一方で、地方自治体レベルでは担当者もいない、どう対応していいかもわからないというケースが多く、隣の町での循環バスの取組を安易に模倣して取り組むケースも見受けられる。
○また、過去の路線バスの路線をそのまま維持するということに対して、他の、オルタナティブの手段を比較、考慮することなく、過去に路線があったからということで、その維持のために赤字補填をしつづけているケースや運行ルートを見直した方がいいケースでも、過去の路線がそうだったからということだけで維持されているケースも見受けられる。
○極端な話として、たとえば、誰にとっても不便なバスを走らせるぐらいだったら、自家用車に乗って安全に移動できる人は自家用車で移動してもらい、自家用車で移動できない人の足の部分だけは公で最低限なんとかしましょうという考えもありうる。利用する人が利用するときにだけ提供されるサービスで、バス停まで歩いて来てもらうというよりは、利用者が少ないのであれば、乗車希望者の家まで行って、目的地までつれていってあげればいいじゃないかという発想の転換、ボトムアップ的なアプローチもあるのではないかと思っている。
○日本には全国にタクシー会社があり、経済的な負担を無視すれば何らか移動したいと思うときにどこかに移動できる手段というのは、日本のどこでも確保されている。要するに、移動手段の確保の問題は経済的な問題の側面が大きく、乗り合わせることで安く使うことができる可能性があるのではないかということ。もちろん、乗り合うといっても、地方部ではそんなにたくさん乗り合えるわけではないので、どうやっても利用者からいただく運賃だけでは賄えないことから、独立採算では厳しいので、一定程度行政側が負担することを前提としたシステム運営、サービスの提供の体制というのを考えていく必要がある。もちろん、ある程度利用者数が確保できる地域であればバスサービスのほうが効率的なところもある。
○昨年、政権交代があったが、政権与党の民主党、社民党が野党時代に「交通基本法」を国会に提出していた。この流れの中で、いま、交通基本法の制定に向けた検討を国土交通省内で行っている。その中心的な理念の一つがが「国民の移動に関する権利」。
○これまでの施策の体系からすると、より便利に、より良くしていこうという施策のアプローチはあるが、権利として保障するという発想はなかなかなかった。「移動権」に関してはさまざまな意見があるので今後も十分に関係者の意見を聞き、議論を積み重ねていく必要がある。
○一方で、地方の公共交通が衰退していて、何とかしなければいけない、なるべく広く公共交通サービスが享受できるようにしていくことが必要ということは共通の問題意識。どういうことができるかという議論の中で、とくにローカルエリアにおいてデマンド交通は有用ではないかと考えている。

<地方で導入が期待されるオンデマンド交通システム>
○前橋のオンデマンドバスの事例では、地域に200箇所ぐらいバス停が設置されていて、さらに自由に追加できるようなシステムになっている。実効上、ドア・トゥ・ドアに近いサービスを提供しているというもの。前橋のオンデマンドバスを運行している地域では、いわゆる路線バスは基本的になく、公共交通サービスは鉄道路線を除きオンデマンドバスに一本化。1回200円で、10キロ×10キロぐらいの広さのエリアをどこでも移動できるようになっており、地域の方々の満足度も非常に高い。3分の2の方がシステムが導入される前より外出の機会が増えたというアンケート結果出ており、社会参加を後押しするシステムとして有用といえよう。
○ただ、収支的にはかなり悪くて、20%ぐらいの収支率、実際の運行経費の8割方は行政が負担をしている。粗々の計算では、1トリップあたり、利用者は200円、700円を行政が負担をしていることになる。全国的に見ても、運賃による収支比率は2割から3割ぐらいが平均。
○この数字をどうみるか。住民1人当たりでみても年間700円ぐらいの負担。利用者数的にも、人口で割ると1人、年1回の利用。フレキシブルなシステムであっても、これぐらいの利用にとどまる。本当に自家用車を利用できなくなった時に利用できるという可能性さえ残しておけば、実際にそこまで利用をしていなくても、地域住民の満足度は高く、また、利用者にとっては外出機会が増えるなどの効果もある。また、オンデマンドバスシステム導入以前の路線バスの赤字補填をしていたときから比べると、財政負担も減っている。また、前橋の事例は、地域住民だけでなく、来訪者も自由に利用できる点で、よりオープンなシステムとなっている。
○このバスの運行は、タクシー事業者が請け負っているが、いま、地方のタクシー事業は大変厳しい状況にあって、タクシー事業自体ではほとんど生計が成り立たない地域が多く、年金+タクシー事業収入、農業+タクシー事業収入とか、そういう形態はたくさんある。従来のタクシーサービスと合わせて、一定のデマンドサービスを請け負うことで、行政から、高くはないが安定的な収入が入ることが期待できる。結果的に、いざというときのタクシーサービスもその地域に残る可能性がある。
○これまでのトラディッショナルなタクシーサービスだけでやっていくと、住民の減少などにより、早晩、タクシービジネスは成り立たなくなり、いざというときの足もなくなる可能性がある。タクシーサービスも普段は使わなくとも、いざという時にはないと困るサービスで、地域にとっては不可欠のインフラだと思う。タクシー事業の地域での位置づけもよく考えるべき。デマンド交通の担い手の選定にあたり、値段だけで決定し、結果的に、地域のタクシー事業者を廃業に追い込んでしまうというケースもあるので注意が必要。
○地域にデマンドバスシステムを導入する際のプロセスの中で、バス事業者、タクシー事業者、新規参入の業者、さらに既存の路線がある場合には、その既存の路線との関係も含めて、地域の公共交通全体をどう考えていくかというのは非常に重要なこと。

〔東大大学院特任研究員 坪内氏報告〕

○鉄道、自動車、航空など様々な交通手段がある中で、いま一番厳しいのがバス事業。平成5年を100としたときの利用者数を見るとバスが一人負けで、利用者は30年前に比べて約半分になっている。国と自治体合わせて、400億円ぐらいの補助でなんとか賄っているという状況。バス会社だけの問題だけではなく、バスサービスがなくなれば、それによって閉じこもり高齢者が増えたり、地域の格差が拡大してしまう恐れもあり、非常に深刻な状況。
○そのような中、オンデマンドバスが注目され始めている。これは、利用者に予約をしてもらい、発生する予約をうまく拾っていこうといった交通システム。路線バス形式だと、利用者がいなくても必ず回らなければいけないが、このシステムだと予約のあるところだけ回れて、非常に効率的に動くことができるということで、10年前ぐらいから導入がはじまっているが、なかなか普及しなかった。
○これまでデマンドシステムが普及しなかった課題としては、煩雑なオペレーター業務をどう効率化するかということ、初期投資で2000万円、更新費を年間に割り当てて、維持費コストとすると、約1300万円の経費がかかるなどデマンド交通システムのコストが高いこと、毎回電話をしなければならない予約への障壁、さらにわかりにくい車載器。こうした課題をシステム的に解決しようと東大で取り組んでいる。
○東大で開発したシステムは、利用者から見ると、いままでのタクシーを呼んで乗る感覚で、自分が何時何分にどこに行きたいかという情報を電話でオペレーターに話し、オペレーターが代わりにコンピュータに入力すると、コンピュータが最短ルート等を計算、配車指示や運行計画が瞬時になされ、オペレーターがお客さんにその結果を伝えるといったもの。コンピュータに計算させることで、約束した時間を守って運行できるということがポイント。また、多くの乗合を発生させることで、バスと違って、タクシーやジャンボタクシーは車内が狭いので、乗合になると必ず会話が生まれることから、地域コミュニティの強化といった効果も最近注目されている。
○もちろん、パソコンとかケータイが使える人であれば、自分たちで簡単に予約でき、これらを使えない人は、オペレーターに電話し、オペレーターが入力だけを管理している。予約受付システムに、自分がどこからどこまで、何時に行きたいかというデータを入れると、すぐにこの情報が計算システムに伝わって、これまで約束した利用者の約束を破らない程度に、どうやったら運行計画が更新でき、かつ乗合もうまく達成できるかということを即座に計算し、運行計画が組まれると、すぐに利用者とタクシー等に積まれている車載器に伝えるといった仕組み。これまでオペレータがやっていた、聞いて、考えて、伝えるといった部分をコンピュータにやらせることで、サービスが正確にかつ効率的にできるようになった。
○研究で取り組んだポイントは4つ。1つは、好きな時間を利用者は指定できること。それにもかかわらず、ちゃんと約束した到着時間を保証できるという機能を持っていること。さらに、乗合をたくさん発生させる。加えて、1秒かからず運行計画が出せるようになったこと。
○予約受付システムは、パソコンを使える人はパソコン、銀行のATMのような感覚で予約できるタッチパネルのようなもの、ケータイなど、さまざまな利用者に対応し、用途に対応したインターフェースを準備している。車載器も、60歳ぐらいの高齢ドライバーの方でも、1時間講習を受ければ使えるといった簡単なインターフェースになっている。また、このデータベースは、地域内の移動の軌跡が全部データとして蓄積されていて、何時の移動か、誰の移動かを全て紐付いていて、たとえばボタン1つで、高齢者の午後の移動を知りたいと言ったら、簡単にピックアップできるようになっている。この移動ログがほしいがためにオンデマンドの実証実験をやろうといった自治体さんもいるほど。これもこのシステムの特徴の1つ。
○データベースは、個人の利用が全部蓄積されているので、過去の利用履歴から、この人は次にこういう風に利用するんじゃないかということを予測して、自動的に提案メールを送るとか、また、たとえば毎週火曜日にこの人は利用しているのに、今日は使ってないという場合に、オペレーターの方にアラートが鳴って、電話で確認してあげてくださいという見守りサービスとも連携することも可能。あるいはマーケティングサービスと言って、たとえば商業施設の人がこういったターゲットの人に売り込みたいというときに、オンデマンドで来てくれたら10%割り引きますよという形で、広告メールも付けたメールを送れるようになっているといった技術に活用されている。
○この全体のシステムは、高くては意味がないので、クラウドコンピューティングという技術を導入し、安く導入、維持管理ができるようになっている。これまでは各自治体でそれぞれにサーバーを買って、それをメンテナンスしなければいけなかったのが、都内のデータセンターに1万自治体ぐらいに対応できる複数自治体向けサーバーを準備し、そこと車載器とが通信、情報をやりとりすることによってオンデマンドサービスを享受できるといったような技術を実現した。これによって、年間200万円ぐらいはかかるところもあるが、これまでの20分の1に抑えることが可能となった。運転手へのわかりにくい指示も独自なインターフェースの車載器で解決。予約という障壁も、予約提案メールによって解決したと言いたいが、まだこれは研究の段階で、予約の提案の的中率をもう少し上げるべく、今、取り組んでいるところ。
○実証実験の結果を見てみると、三重県の玉城町は、人口が1万5000人、面積は40平方キロメートル、7キロ×7キロぐらいに全部すっぽり収まるような地域で、人口密度は1平方キロメートルあたり372人、高齢化率22%程度。車両は最近2台になったが、実験の時は1台で実施。4月までの結果をみると、利用者504人、65歳以上限定で504人が登録、徐々に利用者も増えてきている。オンデマンドバスの『元気バス』が入ってきて、いままでの路線型のバスを徐々に減らし、3年後を目途にスイッチさせようということをやっている。利用者は4月までの半年間で最初、だいたい1日5、6人だったが、この4月の段階で平均23人ぐらいまで増え、現在は35人ぐらいまで増えていて、中には1台では賄いきれないような状況も出てきている。1台で、1日9時から17時まで8時間稼働だが、午前中、1時までの利用で90%ぐらいを占めていて、午後はほとんど動いておらず、市役所の人たちは自分たちの仕事をしている状況。午前中の乗合率はとても高く、だいたい10回乗れば8回ぐらいは乗合になっているといった状況。
○最初の1回使わせるということが大事。登録者が504人いて、実利用者135人とまだ3割ぐらいの人しか使っていないが、その3割の人のうち、だいたい8割が15回以上使っているということで、1回使えば非常に気に入って、何度も利用されている。登録者は65歳以上が対象で、男性よりも女性が食いつきやすく、利用者はほぼ女性。
○利用者からのアンケート結果は、好評で、「自宅で乗れる」とか「目的地に近い」、すなわちドア・トゥ・ドアを提供できているというところが評価が高い。また、自由な時間に乗れるといったところがよい評価になっている。
○不便な点として、毎回予約しなければいけないというところが面倒との指摘あり。また、乗り降り場所が自分の近くにないといった不満もあったが、実際には、いまのバス停が不便であれば、ボタン1つで新たなバス停を自分の家の前に設定をすることも可能なので、この問題は解消可能。
○北本市では、3000箇所ぐらいバス停があって、自宅の前を全部乗合場所にしている。それでも全然効率は変わらず、乗合率40%程度になっている。「バス停」いうより、ドア・ツゥ・ドア・サービスということ。
○このオンデマンド交通は三重県玉城町だけではなく、各地で広がりつつある。しかも多種多様な形で展開されている。たとえば、買い物バスのオンデマンド化や通常タクシー業務のオンデマンド化など。また、システムが高くないので、病院がこのシステムを使って送迎バスをオンデマンド化したいという話もある。圧倒的に多いのは、コミュニティバスからの乗り換え、オンデマンドへの転換。
○独立採算、補助なしあるいは最低限の補助でなんとか動くシステムをできないかと議論を進めている。
○平成20年度では8自治体、21年度では20自治体で実証実験を行ってきた。今年度もそれ以上の地域から問い合わせがあり、実証実験をする予定。さらに、2年後には、このシステムの実証実験を行う地域を1000自治体に増やし、それによって、できれば、たとえば青森の先端から鹿児島の先端まで全部オンデマンド交通で乗り継いでいけるといったことも夢として描いている。

【意見交換ポイント】

○地域内ではスクールバス、福祉バスや病院の通院バスなど利用者が限られている様々なバスが運行されており、これらを1つに融合させていくということは1つの方策。北海道の当別では、スウェーデンハウスという住宅地のデベロッパーによる住民専用バスと通勤用のバスとの運行の統合などの取組がある。
○地方部では10人ぐらいのワンボックスの大きなタイプを使用することが多く、仮に需要が集中しても2台あればけっこう回る通学の時間帯はスクールに集中し、時間帯が分けられるのであれば、その同じ車で、その時間帯だけは定時運行し、お年寄りを運ぶといったように、同じ車両を使いながら、定路線的な、いわゆる過去の路線バスに近いような運行形態と、昼間の需要が薄い時間は本当にオンデマンド形式のやり方で時間帯によって分けるという方法もある。
○車両も、需要がない地域であれば、2つの市町村が連携して使ってもいい。1日8時間走らせるほどのサービスがないのであれば、その供給時間を絞るといったやり方もある。デマンドサービスをやっている地域では土日は運行していないところが多い。一方で、観光や外来者のことを考えると、やはり土日もないと利用できないので、観光も考えるのであれば、外部に対してオープンなシステムというのをつくっていくことも大事。
○山梨県北杜市では、早ければ今年の10月から、スクールバスの利用と昼間は通常のデマンド形式のバスという実験をする予定。スクールバスに見守りサービスと連携、無事帰った旨のメールを母親に自動的に飛ばすといったことも合わせて実施する予定。
○これからの話だが、在宅オペレーターシステムを導入することで、かなり固定費を下げることが可能になると考えている。来年度以降大々的に導入していこうと計画中。一方で、オペレーターは意外と大切だということもわかってきた。オペレーターではなくてコミュニティマネージャーに育てようという取組がある。オペレーターが意外とその地域の利用促進の面で大切という仮説もあり、コミュニティマネージャーとして育てるということも、固定費を下げるということとは別に、同時に取り組んでいる。
○多摩ニュータウンや高島平といった大都市部で懸念されている「買い物難民」等への応用も十分可能。ある程度都会の人口の多いエリアでは、住んでいる人が、税金という形ではなく、地域に住んでいる人たちがちょっとずつお金を出し合う形でサービスを始めるということも可能ではないか。
○利用者からお金を取るのではなく、利用者が買い物に行くスーパー、病院などがスポンサーになってもらうことで、独立採算をとるといった方法も考えられる。
○にぎわいの場を創出し、そこで生んだお金をスポンサーから還元してもらい、それをオンデマンドに活用するといった好循環というのが回れば、非常におもしろい。
○オンデマンド交通システムは、中山間地域において、人の移動だけではなく、その地域のプラットフォームとして物を運ぶことなどにも用途を広げることも可能で、それによって物・人の移動のラスト・ワンマイルとしてのインフラになり得る。
○産地直売所への集荷や買い物客への配送サービスとオンデマンドバスの仕組みを融合させるといった取組を検討されている。
○温泉地では、自前のワンボックスカーが維持できない旅館が増えてきているが、旅館業組合でお金を出しあうような形で、旅館のワンボックスカーを共有化するというモデルもあり得るのではないか。観光地を抱えている地域で、病院などのスポンサーを先に見つけておいて、オンデマンドシステムを活用しながら、病院に通うバスもこれで動かすというプロポーザルを逆にすることも可能ではないか。
○広域連携し、大きな温泉街を抱えている周辺地区との間で連結し、たとえば福祉系の、地元住民の利用のためのオンデマンドバスの需要と旅館客の朝と晩の需要は、時間的にずれているので広域連携で運営することも可能ではないか。

文責:井上


〔参考:研究会配布資料〕
■ゲストスピーカー報告資料:『20100628東大オンデマンドプロジェクト(坪内氏講演資料)』(PDF:3.54MB)

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