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【共同提言】小中高生の教育機会均等のため、卒業を6月に、大学は秋入学へ
写真提供:GettyImages

【共同提言】小中高生の教育機会均等のため、卒業を6月に、大学は秋入学へ

May 12, 2020

<発起人>
                                    伊藤隆敏
星 岳雄
松山公紀

<賛同者(五十音順・2020年5月25日現在)>

青木玲子 / 青山慶二 / 井伊雅子 / 伊藤元重 / 乾友彦 / 岩井克人 / 祝迫得夫 / 植田健一 / 大津敬介 / 小川英治 / 奥野正寛 / 尾崎裕之 / 嘉治佐保子 / ジェラルド・カーティス / 柯隆 / 川口順子 / 木村福成 / グレーヴァ香子 / 小島武仁 / 小西秀男 / 小林慶一郎 / 西條辰義  / 櫻川昌哉  / 佐藤清隆 / 佐藤主光 / 清水順子 / 杉田洋一 / 瀬古美喜 / 寳多康弘 / 田渕隆俊 / 土屋了介 / 筒井義郎 / 釣雅雄 / 中川恒彦 / 中島賢一 / 成田悠輔 / 八田達夫 / 林文夫 / 原田喜美枝 / 福島安紀子 / 藤原一平 / 古沢泰治 / 細谷雄一 / 堀内勇作 / 松井孝典 / 三浦功 / 宮川努 / 三野和雄 / 村上政俊 / 桃田朗 / 森口千晶 / 森信茂樹  / 吉野直行 / 渡部和孝

 提言骨子

(1)  現在進行している学年は、20216月までに卒業・学年修了を行い、2021年の入学・学年進級を9月に行う。

(2)  20211月に予定されている大学入試共通テストを20216月に延期、各大学の入試を主に202167月に実施する。

(3)  上記(1)(2)2021年度以降も、小中高大すべてが9月入学、6月卒業のサイクルを継続する。

提言

緊急事態宣言が延長され、小中高校の授業開始(再開)が遅れている。たとえば、都立高校、大阪府立高校は、5月末までの休校を決めている。6月以降、授業を再開できても、来年の3月までに例年通りの学習を終えるためには、夏休み、冬休みの大幅短縮、土曜日授業、学校行事のキャンセルなどの大幅な日程変更が必要となる。きちんと学習内容を吸収できない生徒が増えるだろう。また、インターネット経由の授業が出来ている私立学校や一部の公立学校と、休校が続いている大部分の公立学校との格差が拡大する。さらに、塾などの各種のサポートがある東京と地方の格差も拡大する。とくに、受験を控えている小学6年生、中学3年生、高校3年生には、大きなハンディキャップを負って不安に感じている生徒が少なからずいる。無理のない日程で授業時間を確保するためには、次のようなことが必要だ。(1)現在進行している学年は、20216月までに卒業・学年修了を行い、2021年の入学・学年進級を9月に行う。(2)大学入試共通テストの実施を6月に延期、各大学の入試を67月に行う。(32021年度以降も、小中高大すべてが9月入学、6月卒業のサイクルを継続する。

COVID-19 の第二波が秋から冬にかけて来る可能性もある。そのためにも、すぐにリモート授業に切り替えられるように、必要な生徒にはPC/タブレットやモバイルWi-Fiルータなど通信機器の貸与を行い、双方向の議論が可能な授業・会議システムを9月までに導入する。

そもそも、大学レベルでは、これまでにも秋入学の一般化が検討されたことがあった。2012年に東京大学が提唱した際の構想は、高校の卒業が3月から変わらないことを前提に、48月はギャップイヤーとして学生の自由に任せ、大学の授業の開始を9月とするものだった。しかし、ギャップイヤーについては賛否両論あったことから、この秋入学構想は頓挫することとなった。

高校や大学の学年暦を9月入学、6月卒業に変えることには、国際交流をより活発にする上でもいくつかの利点がある。第一に、単位互換を進めれば、1年間留学しても留年せずに、高校を3年間、大学を4年間で卒業することが可能になる。第二に、外国から日本に来る留学生にとってもこれは同様であり、学年暦が一致することによって、より優れた人材が来日し、将来の知日派に育つ。第三に、研究者の交流(1年間の在外研究など)も、学年暦が一致することで活発化する。第四に、日本と海外の夏休み(78月)が重なるので、サマー・プログラムへの参加が容易になり、双方向の交流が起こる。小学生から大学生にわたる幅広い児童・生徒・学生に短期留学の機会をいっそう広げることができる。他にも、大学入試を12月から、67月に移行することで、大雪やインフルエンザのリスクから解放されるという利点もある。これら様々な利点を考えると、いま、学年暦変更を決断することは、現在の危機における教育機会の不平等を解消するのみならず、若者と日本の将来の可能性を広げる好機になるのではないだろうか。 

以上

提言のPDF版はこちら

※ 本提言は発起人・賛同者が個人として行うものです。

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