理事長・所長ご挨拶 ―研究プログラム制度の開始に寄せて―

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理事長・所長ご挨拶 ―研究プログラム制度の開始に寄せて―

理事長ご挨拶

大量虐殺の世紀と決別するとき、平和で明るい未来を期して21世紀を迎えました。ところが、宇宙及び地球の環境汚染、新型コロナ・ウィルスの蔓延、世界平和の脅威など、深刻な問題解決に苦慮しているのが現実です。東京財団は、政策研究に焦点を当て世界に通じる独立的シンクタンクを目指すべく、2018年に現在の東京財団政策研究所に改編されました。爾来、よりよい社会の実現を目指し、日本および世界の政策に影響力を発揮するよう努めて参りました。この度、当研究所の方向性を明確にし、シンクタンクの機能を強化するために、安西祐一郎第二代研究所長のリーダーシップの下で「国民のための政策」を5本の柱にまとめ、研究プログラム制度を開始する運びとなりました。新たな一歩を踏み出した東京財団政策研究所に、これまで以上のご支援ご協力を賜りますようお願い申し上げます。

東京財団政策研究所理事長 門野 泉

所長ご挨拶

日頃からのご厚情ご支援にあらためて深く感謝申し上げます。

近代を牽引してきた民主主義、市民国家、自由市場、資本主義の危機が世界を覆い、民主主義と専制主義の相克を軸として国際社会の地殻変動が起こっています。この変動は、地球温暖化、人権問題、宗教の対立、感染症、そしてデジタル革命による経済社会や安全保障戦略の構造転換に深く絡まり、加速されています。国内では、若年人口の急減、産官学護送船団体制の行き詰まり、1人当たりGDPの急降下、経済格差・地域格差の拡大、デジタル化の遅れ、国家財政の逼迫、さらには政治と行政の軋轢のもとで、市民生活の質が大きく劣化しつつあります。

世界と日本が変わっていくこの節目の時代に、日本発の政策シンクタンクは何をすればよいのでしょうか?

ヒントはコロナ禍への国内の人々の対応にあるようにみえます。政治の混迷と行政の混乱のもと、新型コロナ対策について多くの問題が露呈しました。解決の見通しのつかない課題もたくさんあります。そんな中で、多くの市民、生活者が自らのモラルと社会的な共感を通して生活を律し、感染の大爆発をなんとか防いできた、というのが実態ではないでしょうか。個人の自由と尊厳をベースとして公共圏を形成していくことが日本にはまだ可能かもしれない、ということを、コロナ禍は示唆しているように思います。

国民、市民、生活者の実態に寄り添い、しかし国と世界の将来を見通して、個人の自由と尊厳に基づいた公共圏を確立していくための合理的かつ現実的な政策を、できるかぎりのエビデンスに基づいて提言していくこと、それがシンクタンクとしての当財団の進むべき道と考えております。

この考え方のもとに、去る3月までの研究体制を抜本的に刷新し、新たな研究体制への移行を進めてまいりました。そのうえで、去る4月に新たな研究プログラム制度を創設、101日より同制度のもとで研究を開始いたしました。

特に、市民生活の土台を成す、(1)経済・財政および環境・資源・エネルギー、(2)健康・医療・看護・介護、(3)教育・人材育成・雇用・社会保障、(4)科学技術・イノベーション、(5)デジタル化と社会構造転換、の5つの柱を、歴史と国際情勢への冷静な眼差しを持ちながら、重点的に取り上げていくこととしております。

101日付で研究を開始したプログラムは、これらのテーマにわたり約30件、参加研究者は約80名に及びます。当財団をあげて努力を傾注してまいりますので、今後ともご指導ご支援のほどよろしくお願い申し上げます。

東京財団政策研究所所長 安西 祐一郎