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第9回「税と社会保障の一体化の研究-タックスカード(納税者番号制度)-」研究会議事録

May 29, 2008

税と社会保障の一体化の研究―給付つき税額控除―
第9回研究会議事録
2008年5月26日開催


今後の給付つき税額控除に関する研究の在り方として,課税による逆進性への対応を考慮した研究を行うことができないかという方向性が示された。

それを踏まえて金子洋一研究員からカナダのGSTクレジットについての説明が行われ,それを踏まえて日本において同様の制度の可能性について議論が行われた

1.カナダのGST・HST クレジットについて

カナダで導入されているGST/HSTクレジットは,GST(Goods and Services Tax)によって(高所得者と比べて)相対的に重い負担がかけられる低所得者層向けの制度である。財政的なメリットの大きいGSTを運営するにあたって,GST/HSTクレジットは低所得者への逆進性を緩和する役割を果たしている。なお,GST/HSTクレジットは基本的に生活保護とは連動しておらず,その機能はあくまで逆進性の緩和にある。
GST/HSTクレジットを受けるための所得制限は30000カナダドル程度であり,基本的には食費等基礎的な生活に必要な額のGST分を計算して還付が行われる。所定の所得を超えた場合にはフェイズ・アウトが行われ,45000カナダドル程度で還付は行われなくなる。還付に当たっては子どもの有無など世帯構成も考慮されたうえで,申請後1年半程度で連邦から小切手あるいは銀行送金で還付が行われる。その際,社会保険番号があることは望ましいとされているが,番号をもたなくても還付が遅れるだけのようである。

2.質疑

-GSTが導入されたときは7%,基礎的食料品は100万程度ということか?
→政府の家計調査等で基礎的生活費の7%と
→30000ドル以下の世帯はGSTを負担しなくていいという考え方
→GST税収の10%程度を還付に回している?

-仮定をおいてGST控除のようなものができないか?
→基礎的食料品にどの程度支出されるかによる,所得が低い階層で基礎的食料品の割合が大きくなるが,それほど劇的には変わらない
→所得階級ごとの食料支出の割合とかあれば簡単にシミュレーションできる

-消費税が引き上げる部分だけ,基礎的な部分への還付を行うことも考えられる
→8%にするなら3%分の還付,消費税の中だけで話をしようということ
→消費支出の7割は普通の負担ということ

-代替的な選択肢として,軽減税率は逆進性の緩和に効果があるのか
→例えば食料品の税額を据え置くと,還付は変わらない気がするが?
→基礎的な部分の絶対額は階級が高い人のほうが高く,所得制限をつけると違いがでる

-どのように分析を行うのか
→所得階層で10分位に分けたようなデータからもある程度は分析できる
→マクロに計算するときは子どもや配偶者は関係ない
→高齢者世帯ではどうか,母子世帯ではどうか,といわれると個票が必要

-カナダでは誰がチェックしているのか?
→税務当局が計算して送ってくる,申請するのは必要性のチェックだけ
→税務当局が計算するから還付まで一年半かかる
→税法上の扶養家族の定義と違う,子どもについてはChild benefitを受けることが条件
→子どもについては調べている

-どの程度の還付になるか
→5-6万くらいの還付に大掛かりなシステムを作るのも…
→所得制限をいれるとシステム的に難しくなる

-基礎的な支出として何を当てはめるか
→食料品だけにするのであれば,食料品以外の部分は増税になる
→最低生活に必要なものは何か,ということで議論が尽きない
→例えば所得制限をあげて食料品だけにするとか,所得制限を厳しくして全部分還付するとか,いくつかシナリオが考えられる

-考えられるメルクマール
→所得制限をどの程度にするか(軽減税率では所得制限が入らない)
→何に対して還付するか(基礎的か,という問題)
→あとは一律にするかどうか,世帯のタイプによって額を変えるか
→シンプルなところから初めて必要に応じて個票を分析することもできるのではないか

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