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給付つき税額控除具体化PT第2回研究会報告

December 11, 2009

第二回 給付つき税額控除具体化PT研究会

「各種社会保障制度(特に低所得者対策)と給付つき税額控除に関して」

2009年12月11日、度山徹 内閣府参事官より各種社会保障制度と給付つき税額控除に関して報告を受け,その後メンバーで議論を行った。

配布資料はこちらをご覧ください
12月11日研究会レジュメ

12月11日研究会資料(税)

1.児童手当と児童税額控除

児童手当は,先進国ではほぼいずれの国にも存在している。福祉対策としてよりは「児童を養育する世帯と養育しない世帯の負担の衡平」を目的としており,所得制限はないのが普通である。支給額は一人の子どもに対して月当たり1~2万円程度であり,2.6万円なら世界最高水準となる。
児童税額控除については,基本的には「児童手当」と同じ機能。ただ,一般的に、児童手当は所得制限がないが、税額控除の場合は所得が増加するにつれて控除額が逓減する。2.6万円という高額の子ども手当に対して所得制限を入れるとすると,あるラインを超えると急に支給額がゼロになるのは合理的でないし、支給額が人によって異なるというのも事務的に煩雑。個人的な意見としては、子ども手当に所得制限を入れるのであれば、税額控除によって年末調整や確定申告手続で支給額をなだらかに調整する方が合理的。

2.児童扶養手当および訓練・生活支援給付

母子福祉年金の補完制度として1961年に発足(その後1985年に福祉的な手当制度として改正)。諸外国では,父親からの養育費の立て替え払い的な構成をとっている国が多い。離婚の増大により,母子家庭に対する児童扶養手当の件数は年々増えており,2002年の改正で所得制限が強化されるとともに,就労を促進するような給付体系になっている。
もっとも,日本の母子家庭の就労率は80%半ばでかなり高く,働いている場合でも貧困率が高いということが問題である(就労していても58%が貧困ライン以下)。我が国では、「福祉か就労か」というよりも、不十分な就労機会を補完する手当が必要である。
また,訓練・生活支援給付については,いわゆる「第2のセーフティネット」の中核をなす制度として、経済危機対策(2009年4月)により創設された。同様の「補足的な失業扶助制度」は諸外国にも存在する。この給付を行うための基金7,000億円は補正予算の見直しで約半分返還したが、2011年度からは恒久的な求職者支援制度を発足させることとなっている。現在の訓練・生活支援給付は課税対象所得であるが、求職者支援制度に基づく給付については、雇用保険給付と同様に非課税所得となるよう税制改正を要望中。

3.課税ベースの変更の制度的な影響

年少・成年扶養控除の廃止の議論。成年のうち障害等により就労が困難な者を対象とした「成年障害者等扶養控除」(仮称、税額控除)の創設が提案されている(税制調査会)。ただ,保育所の利用料や幼稚園就園奨励費補助等,各種現物給付施策が負担額を決定する際に税法上の所得額や税額を活用しているものが多く,今回の扶養控除の廃止に際してもこの対応が議論になっており、給付付き税額控除の検討に当たっても同じことが論点となる。ただし、現在の税制を前提とした場合、低所得者のメルクマールは住民税均等割非課税しかなく、それよりきめ細かな対応がとりづらい。給付付き税額控除では概念上もう少し低い所得から課税額が発生する(これを税額控除額と差し引きして給付額を決める)ので、低い所得の把握が公正になされることを前提にすれば、低所得者に対してよりきめ細かな対応をとれる可能性がある。

4.議論の概要

・スウェーデンではほとんどの現金給付は課税されている。この部分がカウントされていることで,国民負担率が大きくなっている。
・現金給付について所得制限を入れることは,社会を分断することになるのでは。スウェーデンの給付付税額控除では,フェーズオフの段階がなく,高所得者については税をかけることで負担を増やしている。
・控除廃止は,子ども手当の財源としてではなく,「控除から手当へ」という流れの中で議論すべき問題。
・イギリスでは、週16時間以上(勤労税額控除)と未満(求職者給付)で2つの制度が併存し、きちんと接続している。働ける人と働けない人,働けるけど仕事がある人とない人,に対してさまざまな政策をパッケージとして提供することが必要。また,その際に,間に落ちてしまう人が出ないような制度設計にすることが大事。
・スウェーデンでは,どんなに所得が低くても課税される。日本とは考え方の違い。
・低所得者対策をしていくためには,所得捕捉を含めたより細かな状況把握が必要。
・少子化対策としては,現金給付より,サービスの提供が必要。

文責:中本淳 プロジェクトメンバー

    • 元東京財団研究員
    • 中本 淳
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