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第8回「税と社会保障の一体化研究-タックスカード(納税者番号制度)-」研究会

February 10, 2009

第8回「税と社会保障の一体化研究-タックスカード(納税者番号制度)-」研究会
日時:平成21年2月6日(金曜日)12時から14時
場所:東京財団会議室A(日本財団ビル3階)
第8回目の会合の議事要旨は以下の通り。

冒頭に森信茂樹・東京財団上席研究員から,最近の納税者番号制度に関する新聞社説や報道の紹介が行われたあと,3月6日に予定されている政策懇談会での議論の内容について各メンバーから報告が行われるとともに,メンバー間で議論が行われた。

1、酒井克彦・国士舘大学教授「現行制度における改善の必要点」

現在の年末調整制度の問題点を整理したうえで,その問題を解決する鍵として番号制度を提示する。年末調整においていわば徴税代理人としての役割を果たしている源泉徴収義務者は,税務署員とは異なり守秘義務を課せられていない。年末調整では,所得の情報だけではなく,家族に関する情報などが必要とされていることを考慮すると,納税者のプライバシー情報を守るには源泉徴収義務者の位置づけを明確にするとともに,その負担が過重にならないようにしなくてはならない。現実路線として,申告制度を簡便化した上で年末調整を納税者の選択に委ねることが考えられるが,その際に税務行政の効率化を図るインフラとして納税者番号は重要ではないか。
また,今後議論する「基本法」で,プライバシー情報の内容について明らかにされるとき,その内容を受けて現在執行されている個別の法制における論点も出てくることになると考えられる。長期的には,「基本法」を作るときの波及効果というかたちで,明らかにされたプライバシー情報への配慮を税法/国税通則法の中にどのように落とし込んでいくかが課題になるだろう。

2、鈴木正朝新潟大学教授「プライバシー基本法素案について」

基本法の趣旨は,システム化を行う政府への国民の不安・不信に対して,一定のルールと制約が存在することを,憲法解釈というかたちで表現するところにある。現在は個別の法律で利用目的を作っているが,あとでいくらでもシステム連携はしていく可能性が残されている一方,個別の法律ごとにシステムを作っていくのが非常に無駄であり正当化されにくいという状況にある。E-governanceの掛け声の下に電子政府化が進められる中で今後の弊害は具体的には見えていないが,プライバシー情報の保護について,個別のシステムではなく人権の観点から全体の整理をしておくことが重要だろう。
ポイントは,国民の情報を取得・管理し,一定期間が来れば消去するルールを定め,そのルールが守られているかについて何らかの監査制度を通じて検証がなされることにある。今の個人情報保護法制では主務大臣ごとに個人情報を分担管理していることになっているが,職務の専門性や継続性を考えると,会計検査院の拡張あるいはEUのデータコミッショナーのようなかたちで監査のしくみを整備する必要がある。その中でも,実態を暴いて国会に報告するというのが重要であり,単に事件が起きたときの救済というだけではなく会計検査院型の常時査察に入る仕組みが必要ではないか。この場合,監査の対象は政府に限られるが,昨今の年金問題のような無責任な管理体制による混乱を未然に防ぐことも可能になる。

3、阿部泰久日本経団連経済第二本部長「社会保障番号を活用した納税者番号の導入について」

日本経団連では,2008年10月に電子行政の実現に向けた推進体制と法制度のあり方について報告書を作成している。その中で,行政に関する番号を統一した「共通コード」の導入を提言した。これは,各省庁でバラバラのコードを作っている現在の体制には効率の面で問題があることを意識したものであり,枠を作ったうえで,効率化のために必要なものをきちんと結合できることが望ましいと考えているものである。多くの先進国ではセキュリティ管理やプライバシーの保護のために,情報管理やアクセスの監督を行う第三者機関を設立しており,そのような仕組みから学ぶところが多いのではないか。

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