アベノミクス「三本の矢」の経済政策が行われて3年以上が経過しました。しかし、アベノミクスが想定した「トリクルダウン」が生じておらず、むしろ所得・資産の格差が拡大しています。
所得格差・資産格差を縮めていくことが持続的な経済成長に役立つという観点に立てば、税と社会保障を一体的に改革していくことこそが最大の経済対策であり、少子高齢化対策でもあります。こうした問題意識のもと、今般、政策提言をとりまとめました。
提言の骨子
1.所得再分配機能を強化する所得税の課税ベースの拡大
- 累進課税において、高所得者ほど有利になる所得控除制度を改め、所得の多寡によらず一定に減税できる税額控除制度に移行する。
- 公的年金等控除の縮減や、主に富裕高齢者層に帰属する資産性所得の税率引き上げも視野に入れ、余裕のある高齢者からの負担を求める(必要に応じて、高齢低所得者対策を行う)。
→ 課税ベース拡大により、格差を是正して財源を確保する。
2.支援すべき世帯に控除・給付を重点化
- ワーキングプア対策として、税額控除制度を導入し、給付と連動させる。
- 女性の就労促進のため、税額控除と社会保険料割引を組み合わせて、130万円の壁を取り払う仕組みを導入する。
→ 税額控除をベースとした制度で、若者や女性の就労を支援する。
全文はこちら→ 政策提言「税と社会保障のグランドデザインを」2016年6月 (PDF、4.5MB)
執筆
- 「資産所得格差と税制のあり方」プロジェクト (2014 年度は「税制改革」プロジェクトの名称で実施)
- 森信茂樹 東京財団上席研究員/中央大学法科大学院教授 ※リーダー
- 小塩隆士 一橋大学経済学研究所教授
- 川出真清 東京財団上席研究員/日本大学経済学部教授
- 佐藤主光 一橋大学国際・公共政策研究部教授
- 田近栄治 成城大学経済学部特任教授
- 土居丈朗 慶應義塾大学経済学部教授
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