医療・介護制度改革の基本的な考え方~真の国民的議論を実現するために~

真の国民的議論を実現するために

日本の医療や介護に対する人々の不安は、高齢化の加速と、それにともなう国家財政の持続性への懸念から、かつてないほど高まっています。しかし、既存の制度は長年にわたって改変が加えられ非常に複雑な体系となっており、抜本的な見直しには、思い切ったビジョンが必要です。
東京財団「医療・介護・社会保障制度の将来推計」プロジェクトでは、そもそも年代別(介護保険など)や産業別(健康保険)を前提に組みあがっている現在の医療・介護制度が、来る超高齢化や財政不安の時代にも持続可能かどうかを2年に渡って検証し、このほど「国民の目線」にたった制度案を政策提言としてまとめました。

政策提言「医療・介護制度改革の基本的な考え方 ~真の国民的議論を実現するために~」(PDF:1.1MB)

提言の要旨


I.医療・介護政策のビジョンの必要性:新たな連帯の形成と政策決定の地方分権化
医療・介護政策の基盤は「連帯」にあるが、少子高齢化や非正規雇用の増加、社会の個人化など、これまでの連帯が減少しているため、新たな連帯の基盤を考えねばならない。また、これまで診療報酬・介護報酬体系に過度に依存し、複雑化してきた医療・介護政策を分権化し、生活圏をベースとした「地域」中心に形成されるべき。

II.インセンティブ設計の見直し:保険点数から住民のケアへの責任に対する報酬制度へ
個別の医療行為に対して医療費を支払うルール(保険点数)への過度な依存は、点数の積み上げを誘発し、「量」の医療へと負のインセンティブが発揮されてしまう。医療と介護が一体で住民に提供される「プライマリー・ケア・システム」を導入することにより、「量」ではなく「質」に対する新たな診療報酬インセンティブを構築する。

III.プライマリー・ケアを確立する「地域包括ケア・グループ」の提案
地域の中小病院、診療所、多職種がグループを形成し、住民に、包括的で継続したケアを提供できるような体制を構築する。また、患者(利用者)である住民と、医療施設等(ケア提供者)との間で契約を締結、住民一人ひとりを誰が責任をもってケアするのかを明確にすることで、医療・介護の切れ目のないケア・システムを目指す。

冨田 清行

  • 元東京財団研究員