政策分析レポート「金融・経済危機と今後の規制監督体制」 | 研究プログラム | 東京財団政策研究所

東京財団政策研究所

詳細検索

東京財団政策研究所

政策分析レポート「金融・経済危機と今後の規制監督体制」

March 12, 2009

金融・経済危機と今後の規制監督体制

東京財団上席研究員
慶應義塾大学経済学部
池尾 和人

今回の金融・経済危機の展開過程は、便宜的には3つのステージに区分して捉えることができる。第1のステージは、2007年3月から2008年3月までのサブプライム・ローン問題と呼ばれていた時期である。2006年になって米国住宅価格の上昇がとまり、それからしばらくして07年の春頃からサブプライム・ローン(とくに2006年ビンテージ)の延滞率悪化が広く表面化する。そして、07年7月に格付会社がサブプライム関連の証券化商品の大量格下げを開始したことを契機に、サブプライム関連の証券化商品市場の危機が顕在化する。この時期は、米国連邦準備制度の事実上の斡旋による、08年3月のベアー・スターンズのJPモルガンによる救済合併をもって終了する。

当時は、ベアー・スターンズが救済されたことで「最悪期を脱した」のではないかとの見方も有力であったけれども、実際には事態は一層悪化の一途を辿る。そして、全般的な信用市場の危機(クレジット・クライシス)に拡大した時期が、第2ステージである。クレジット・クライシスはいまだ完全には収束してはいないけれども、この第2ステージは2008年9月のリーマン・ブラザースの破綻までとする。というのは、それ以降は、金融資本市場の危機を超えて、実体経済の悪化を伴う経済危機の様相を呈するようになるからである。すなわち、第3ステージは、08年9月から現在に至る世界同時不況と呼ばれるようになった時期である。

すでに危機の発生からは、2年近い時間が経過しており、今回の金融・経済危機の発生原因については、おおよその共通理解が形成されつつあるとみられる。もちろん危機の発生原因は、単一ではなく、複合的なものである。指摘されている主な要因は、1. マクロ経済的な不均衡の拡大、2. 長期にわたる緩和的な金融政策運営、および3. 金融規制監督上の欠陥などであり、これらに加えて4. 金融機関側のリスク管理をはじめとした内部統制の体制に問題があったことは確実である。これらの要因のいずれにウェイトをおいて考えるかといった点においては、様々な論者ごとに見解の相違はみられるものの、これらの要因が複合的に作用したことに関しては、ほぼコンセンサスが成り立っているといえる。

本レポートにおいても、これらの要因に着目するかたちで、まず今回の金融・経済危機が発生した経緯について再確認しておくことにしたい。その上で、今後の規制監督体制のあり方を考える際の基本的な視点を提示する。


◆レポート全文は、こちらの PDFファイル 【120KB】をご覧ください

    • 元東京財団上席研究員/慶應義塾大学経済学部
    • 池尾 和人
    • 池尾 和人

注目コンテンツ

0%

INQUIRIES

お問合せ

取材のお申込みやお問合せは
こちらのフォームより送信してください。

お問合せフォーム