
採択プロジェクト
厳正なる審査の結果、10件の研究プロジェクトが採択されました。
※採択プロジェクトの詳細につきましては、諸手続きが済み次第順次公開いたします。
以下では、本研究プロジェクト公募の申請概況および講評を紹介いたします。
募集の趣旨
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公益財団法人東京財団では、中期経営計画「Vision 2029:原点回帰と変革の5か年計画」に基づき、人口減少社会における諸課題について研究プロジェクトを募集しました(2025年7月21日締切)。
民間・非営利・独立のシンクタンクとして、日本社会の持続的な発展に資する質の高い政策研究と研究成果に基づく政策提言・社会実装という目標に向けてさらに発展し、社会へ大きく貢献できるよう努めてまいります。 - ※本公募は、個人の研究への支援・助成ではありません。また、他の研究資金を併用する研究や、基礎的な学術論文の発表や学術書の刊行を主たる目的とする研究は採択いたしません。
申請状況概要
・申請総数:56件(倍率 5.6倍)
一次審査不採択:37件
二次審査不採択:9件
採択:10件
・申請書類に性別記入欄はないため、あくまで氏名などからの推測となりますが、男性41名に対して女性が15名と男女比は約8:3となりました。
・地域については、東京都を中心に各都府県から申請いただきました。中には国外で活動される方からの申請もありました。
・後述の所属組織が大学中心となっており、職階からの推測となりますが、若手(≒助教・専任講師レベル)・中堅(≒准教授レベル)とベテラン(≒教授レベル)が約2:3となりました。
・大学を本務先とされる申請者が約8割となりました。この他、シンクタンクやNPO/NGO、病院・診療所や官庁関係者の方々などにも申請いただきました。
・幅広い研究テーマでの申請がありましたが、主だったテーマとしては財政、医療、福祉、次いで労働・移民政策、教育が多くなりました。
審査講評
<一次審査講評>
一次審査においては、まず本研究プロジェクトの趣旨である「人口減少社会に対する政策提言と社会実装」を出発点とし、研究課題がその目的に的確に合致しているかを最初の基準としました。その上で、以下の3点を重視して審査を行いました。
- 問題意識が具体的かつ明確であること
- 解決策となる仮説や検証方法が実現可能で整合的であること
- 国会や各省庁など政策実行者の課題認識を踏まえており、申請者独自の視点に偏らないこと
その結果、課題の重要性が低いもの、人口減少との関連性が不明瞭なもの、あるいは解決仮説が問題意識の延長にとどまり具体的施策に至っていないものや、具体的施策を前提としたような解決仮説を立てているものは不採択としました。また、研究というより実践活動やNPO活動に近い内容、既存研究の延長に助成金を充てるように見受けられるもの、あるいは学術論文や海外出張を主目的とするものについても、政策提言や社会実装という本プロジェクトの趣旨に沿わないため不採択としました。
一方で、人口減少下における社会システムの構築という大きな課題に真正面から取り組み、かつその緊急性が高いテーマであり、解決策の仮説や検証の方法が明快で、成果の社会実装に向けた道筋が具体的に描かれている研究計画を高く評価しました。さらに、研究成果を広く社会に発信し、一般市民にもわかりやすく説明しようとする姿勢を重視し、専門家にしか理解できない難解な表現にとどまらず、社会的支持や認知の獲得につながる研究計画を高く評価しました。特に申請者の実績に裏打ちされ、政策提言の現実性と社会的効果が期待できる研究計画を中心に二次審査の対象へ選定しました。
<二次審査講評>
二次審査においては、一次審査で選定された案件をさらに精査し、問題意識の鮮明さとタイムリーさ、それを社会に発信することで政策形成に実際の影響を与える可能性を特に重視しました。具体的には、以下の4点について総合的に評価しました。
- 解決策の方向性の重要度や妥当性
- 提言先や対象の具体性
- スケジュールが政策日程を考慮した現実的なものであるか
- 申請者の研究実績や遂行力
審査の過程では、社会実装の現実性や研究プロセスの明確性、先行研究の分析の適切さを重視し、政策提言を確実に社会に届けられる見通しのあるものを優先しました。
不採択となった案件には、研究手法に目新しさが欠けるもの、政策日程を十分考慮したスケジュールが示されていないもの、または人口減少課題との関連性や緊急性が相対的に低いものが含まれました。特に1.5年という限られた研究期間内で成果を出すことが難しいと判断されるテーマ、特定分野の構造的課題に限定され政策提言への広がりが乏しいものは、優先度の観点から不採択としました。また、施策の具体性や分析手法の明確性を欠く案件も、必須条件を満たさないとして不採択となりました。
一方、採択された研究プロジェクトは、人口減少に伴う課題の中でも重要かつ緊急性の高いテーマに取り組み、東京財団が持つネットワークや発信力と結びつくことで政策立案に具体的な影響を及ぼす可能性が高いと評価されました。また、申請者の専門分野にとどまらず、人口減少社会に関わる幅広い課題に積極的に取り組もうとする意欲と能力も評価の対象としました。
採択案件については、現下の政府政策に一石を投じ、人口減少社会における具体的課題解決に資する成果が期待されます。