タイプ
レポート
プロジェクト
日付
2009/3/12

2008年度第8回国連研究プロジェクト研究会 議事録概要 No.1

2008年度第8回国連研究プロジェクト研究会(議事録概要)
「安保理議長国としての日本の活動」
作成:都築正泰(東京大学大学院法学政治学研究科)

1.出席者
北岡伸一(主任研究員)、鶴岡公二(外務省国際法局長)、滝崎成樹(外務省大臣秘書官)、飯田慎一(外務省経済局サミット企画官)、久島直人(外務省国連政策課長)、紀谷昌彦(外務省国連企画調整課長)、岩沢雄司(東京大学大学院法学政治学研究科教授)、中谷和弘(東京大学大学院法学政治学研究科教授)、坂根徹(東京大学大学院法学政治学研究科、日本学術振興会特別研究員)、池田伸壹(朝日新聞記者)、蓮生郁代(大阪大学大学院国際公共政策研究科准教授)、福島安紀子(国際交流基金特別研究員)、大沼瑞穂(東京財団研究員)、都築正泰(東京大学大学院法学政治学研究科)

2.日時・場所: 2月27日18:30~21:00、東京財団A会議室

3.報告者: 久島直人氏(外務省国連政策課長)

2009年1月より、日本は非常任理事国として安保理に復帰しました。また早速2月には議長を務めています。第8回研究会では、冒頭、1月から2月までに採択された安保理決議を振り返り、その後、久島直人・外務省国連政策課長より「安保理議長国としての日本の活動」と題して報告頂きました。

以下では、1月と2月に採択された安保理決議8点の概要と投票結果、また研究会で議論になった日本の活動における注目ポイントをご案内します。その他に、安保理改革の議論の現状、3月の安保理における主要議題についてもお伝えします。


1.採択された決議(8点)
1月(議長国:フランス)
0108 中東問題(ガザ)決議(S/RES/1860)[賛成:14/反対:0/棄権:1(米)]。
・「イスラエル軍の完全撤退につながる即時かつ持続的、完全に尊重される停戦の緊急性を強調し(その実現を)要請する。」
0114 中央アフリカ・チャド決議(S/RES/1861)[全会一致]。
・MINURCAT、1年延長(~2010年3月15日)。EU派遣部隊(EUFOR)に代わり、3月15日以降はMINURCATの軍事要員を主体に活動。
0114 ジブチ・エリトリア決議(S/RES/1862)[全会一致]。
・エリトリアに対して国境対立地域から5週間以内に軍を撤退するよう要請。
0116 ソマリア決議(S/RES/1863)[全会一致]。
・AU平和維持部隊(AMISOM)の任期を6カ月延長。AUに部隊の増強を要請。
・AMISOMに代わる国連PKOを創設する意図を表明。しかし、その決定は6月1日までに行われる安保理の決定による。
0123 ネパール決議(S/RES/1864)[全会一致]。
・UNMIN、6カ月延長(~7月23日)。
・現行の監視措置を無制限に維持できないと言う事務総長の見解に同意。
0127 コートジボワール決議(S/RES/1865)[全会一致]。
・UNOCI、6カ月延長(~7月31日)。軍事要員数を削減。さらなる要員削減のため、事務総長が提案する評価基準の導入を是認。

2月(議長国:日本)
0213 グルジア決議(S/RES/1866)[全会一致]。
・UNOMIG、4か月延長(~6月15日)。その他に新たな要素として、難民・国内避難民の保護、ジュネーブ・プロセス支援を明記。
0227 東ティモール決議 (S/RES/1866)[全会一致]。
・UNMIT、1年延長(~2010年2月26日)。今年予定される地方選挙を支援。段階的な警察権限の委譲を支持。

<その他2月の主要議題>
0209 シエラレオネ、公開協議(S/PV.6079)。
・シエラレオネ担当事務総長執行特別代表(ERSG)報告、平和構築委員会シエラレオネ国別会合議長報告。
0212 ソマリア、非公式協議。
・政務局事務次長(USG)、現場支援局事務次長(USG)報告。
0212 AU・アラブ連盟合同代表団との非公式対話。
・2月中に予想された、スーダン大統領に対するICC逮捕状発行の是非が議論に。AU・アラブ側、「(安保理がローマ条約16条に基づいて大統領の訴追延期を決議しても、)正義が危機に瀕することはない」と発言。
0212 アフガニスタン、安保理議長報道声明(SC/9535)。
・2月11日、首都カブールで発生した政府施設を狙ったテロを強く非難。
0220 ミャンマー、非公式協議。
・ガンバリ事務総長特別顧問、ミャンマー訪問(1月31日~2月3日)について報告。
0225 ソマリア、安保理議長報道声明(SC/9600)。
・2月22日、首都モガディシュで発生したAMISOM本部を狙った自爆テロを強く非難。

2.安保理改革の動向
0119 デコスト総会議長、安保理改革に関する政府間交渉を2月19日に開催する方針を提示。
0218 デコスト総会議長、政府間交渉の日程案を書簡で提示。次の5点の主要論点ごとに交渉を予定。
・0304: (1)理事国の区分(常任・非常任)。
・3月:(2)拒否権、(3)地理的配分。
・4月:(4)安保理の拡大規模と作業方法、(5)安保理と総会の関係。
・5月:「第二ラウンド」。
0219 総会非公式会合、上記議長日程案を協議。

「安保理議長国としての日本の活動」

日本の活動における注目ポイント
1月8日中東問題決議:安保理の「実効性」、「信頼性」、「一体性」を確認
・日本が安保理に復帰して最初に直面したガザ問題。本件から大きな示唆を受けた。リビアは、一方的な決議の採択を意図していた(1月6日決議案提示。すでに「ブルー」であるとして24時間以内の投票を要求)。しかし、仮にそれが採択されなかったり、採択されても実現性に乏しい内容であれば、安保理の信頼性は傷ついたであろう。日本は、アラブ側、米国などに対して、即時的かつ永続的解決、また安保理が一致した見解を示すことの重要性を説いた。結果として本決議は米国の棄権があったものの賛成多数で採択された。
・米国が本決議を棄権した背景として、投票直前にイスラエルのオルメルト首相が電話でブッシュ前大統領に賛成を回避するよう働きかけたと報道されている。もしこれが事実であるとすれば、安保理決議の「重み」が認識されていたのであろう。しかし決議採択後も攻撃が続けられたということは、決議の「軽さ」とも受け取られてしまった。しかし決議採択後も攻撃を続行した点から、イスラエルが本決議を「無視」したと言う見方が根強い。
・1月8日にガザ問題について安保理で決議が採択されたなかで、1月16日には総会でも本件について決議が採択されている(A/RES/ES-10/18)。これは1950年の「平和のための結集」決議に基づいて開催された緊急特別会期(第10会期)における決議。そもそも緊急特別会期は、常任理事国の意見が一致せず安保理で対応できない場合に、総会で審議して各加盟国に集団的措置を勧告する制度。そのため、総会での決議採択は「予想外」であった。現在のデスコト総会議長の「正面突破」の手法であった。しかし、16日に総会で採
択されたガザ決議は、8日の安保理の決議内容からそれほど違いはない。

1月16日ソマリア決議:「深刻な留保」を表明
・日本の主張は次の2点。
・(1)「二段階アプローチ」。まずはAMISOMの増強を重視し、その後、条件が整えば国連PKOを創設するアプローチ。これは英仏の主張と一致しており、またソマリアで国連PKOの創設を主張する米国からも理解を得た。実際の決議の内容もこのアプローチに沿ったもの。
・(2)本決議にはAMISOMを財政面で支援する措置が明記されている(二国間援助、基金の創設)。日本が「深刻な留保」を表明したのは、国連通常予算を安保理の決定によって特定のミッション、非国連主体に投入すること(憲章17条は、国連行財政の決定権限は総会にあると明記)。確かにスーダンにおけるAUとのハイブリット・ミッション(UNAMID)など、非国連主体への国連資金の投入に前例がないわけではないが、これは極めて異例の措置で注意が必要。
・スーダン、ソマリアの事例から、AUにPKOを委託する限界がみえているのではないか。
・安保理と総会の間の緊張関係に注意が必要。過去に安保理の決定事項を総会が覆し異なる決定をした事例がある(例:旧ユーゴ、ルワンダ各国際刑事裁判所設置の際、財政分担のあり方をめぐって)。

2月27日東ティモール決議:PKO「出口戦略」の模索
・日本は、アフガニスタン、東ティモールに関してリード国を務めている。本決議採択の過程では、決議案の作成、コア・グループ(関心国)や他の安保理理事国との調整を事務局と連携して主導した。
・議論の焦点となったのは、PKO撤収のタイミングの見極め方。2006年の治安悪化から早計な撤退は危険であるとの見方は共有されている。しかし、どのような状況になれば、マンデートを見直しミッションの規模を縮小するのかなど、評価基準やルールを設定する必要性が認識されている。今後とも無制限にPKOを創設することには限界があるとの見方が広がっている。
・さらに金融危機の影響により、先進国が資金と要員を提供することにより消極的になることが懸念される。世界的にみて、すでに派遣可能なPKO要員はすべて出払っているのではないかと言う見方もある。

2月19日、安保理改革に関する政府間交渉の開始
・昨年9月15日、前会期末の総会の決定により、安保理改革の議論の場が、事実上、これまでの作業部会(OEWG)から総会(非公式協議)に移った。この決定により、今年2月28日までに開始される政府間交渉の結果、総会で3分の2の支持が得られれば、安保理改革が実現することになった。
・現会期のデコスト総会議長(ニカラグア)の強いリーダー・シップ、2月19日から安保理改革に関する政府間交渉が開始。2月18日に議長が提示した日程案によると、5つの主要論点ごとの交渉を3月4日から行い、5月には「第2ラウンド」を行う予定。ちなみにデスコト議長は、昨年9月、現会期冒頭の議長演説で国連の「非民主性」を問題視。政府間交渉の主要論点(5)として「総会と安保理の関係」が挙げられている点が注目される。
・日本として重要なのは次の点。安保理の機能強化への貢献を通じて、常任理事国としての日本の適性を明示していくこと。前回と同様、日本は文書手続作業部会の議長を務めており、安保理の透明性や開放性の改善に向けてさらに努力することが必要。しかし、透明性、開放性が向上した結果として、ステイトメントの読み上げに終始するなど安保理の議論の形式化が指摘されている。透明性・開放性の向上とともに、実質的な議論を確保することが重要で、両者の間の良いバランスを模索することが課題。

3月の主要議題

3月の議長国はリビア。(なお、次回、日本が議長を務めるのは2010年5月。)
「安保理レポート」(Security Council Report)の月例予測(Monthly Forecast、2月26日発行)によると、3月の主要議題は次の9点。
・(1)ハイチ:安保理視察団(3月11日-14日)、3月19日視察報告。
・(2)AU平和維持活動支援に関するAU・国連共同パネルによる報告(3月18日)。この際の公開会合は、リビア外相が議長を務める予定。
・(3)アフガニスタン:UNAMA、3月23日マンデート期限。
・(4)ソマリア:総会で「AMISOMに対する後方支援パッケージ」(1月16日の安保理決議1863で決定)について協議。
・(5)コソボ:UNMIKに関する初めての報告書が事務総長から提出。
・(6)リベリア:非公式協議開催。UNMIL事務総長特別代表の報告(3月19日)。
・(7)レバノン:非公式協議開催。1701決議について協議(3月10日)。
・(8)エリトリア・ジブチ:非公式協議開催。
・(9)スーダン:制裁委員会報告(3月10日)。国際刑事裁・予審裁判部、バシル大統領逮捕状を発行(3月4日)。安保理による訴追延期決議の是非が議論の焦点に。