東京電力管内における震災後の電力需要減少の要因分析(1)

東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻
中谷 隼

1.東京電力管内の夏期の電力需要

まず、東京電力管内における夏期の電力需要について、2008~2011年度の7・8月の各日の最大電力需要 [1] の推移と、最大電力需要が発生した日時を、それぞれ 図1 に示した *1 2011年度の最大電力需要は4,922万kWにとどまり、過去3年と比較して大きく減少したことが分かる。 しかし、7月下旬には過去3年と比較して大きく最大電力需要が減少しているのに対して、7月上旬や8月中旬の最大電力需要は、過去3年と大きく変わっていない。
*1 本稿では、2008~2011年度を分析の対象期間とした。また、「夏期」とは7月1日から8月31日までを指すものとした。

図1 東京電力管内における夏期の最大電力需要 [1] の推移 *2

*2 電力需要は平日と休日で大きく異なることから、2008~2010年度の日付については、2011年度の相当日として示してある。すなわち、7月1日の欄に示された値は、いずれも7月の第1金曜(2008年度は7月4日、2009年度は7月3日、2010年度は7月2日)の最大電力需要である。また、8月31日の値は、2008年度は8月28日、2009年度は8月29日、2010年度は8月30日の欄に示されている。


夏期の電力需要が、冷房需要などのために、気温に依存することはよく知られている [2] 。2011年度の電力需要の減少が、こうした気象条件に起因するものか、それとも節電など人間活動に起因するものか、定量的に把握する必要がある。特に積極的な節電の効果であった場合、どの部門における電力需要削減の寄与が大きかったのか、次節以降で様々な角度から検証を進める。

2.夏期の気温と電力需要の関係

ここでは、2008~2011年度の7・8月の平日のうち夏日(最高気温が25℃以上になる日)について、平日の最大電力需要が発生することが多い14時の電力需要 [1] と、日最高気温(東京の日最高気温 [3] で代表させた)の関係を示した( 図2 *3, 4 。各年度について回帰直線を当てはめ、日最高気温xと電力需要yの関係式を求めた。図中に示したように、いずれの年についても決定係数R2は十分に高く、 夏期の気温と電力需要の間には有意な相関関係があると言える
*3 「○時の電力需要」または「電力需要(○時)」とは、○時台の電力需要の1時間平均を指すものとする。例えば、「14時の電力需要」とは、14時から15時の電力需要の平均を指す。

*4 本稿では,7月および8月のうち、土曜、日曜、祝日(海の日)および盆休み(8月12~15日とした)以外を「平日」とした。分析の対象期間は2008~2011年度であり、「夏期」7月1日から8月31日までとしている。

図2 東京電力管内における夏期の電力需要(14時) [1] と日最高気温(東京) [3] の関係


この図から、日最高気温への電力需要の感度(回帰直線の傾き)は、2011年度も過去3年と比べて特に変化はなく、日最高気温1℃の上昇に対して150万kW程度の増加であることが分かる。一方で、25℃を基準としたときの回帰直線の切片は、過去3年よりも900万kW程度の減少が見られる。夏日の14時の電力需要は、日最高気温によらず900万kW程度、過去3年よりも減少していると解釈できる。

このことから、 2011年度のピーク時間帯の電力需要は、夏期を通して一定の減少がなされており 、猛暑日や真夏日(それぞれ最高気温が35℃または30℃以上になる日)だけ減少幅が大きくなるといった傾向は見られない。

3.どの時間帯で電力需要が減少した?

前節では、ピーク時間帯の電力需要が気温に依存することを示した。比較を容易にするために、気象条件が近い平日(東京の日最高気温が34~35℃)を、 表1 に示したように各年について抽出して、それらの1日の電力需要 [1] の推移を比較した( 図3 )。棒グラフで示した「減少幅」は、特に気象条件の近い2008年度および2010年度の4日分の平均と2011年8月10日の差である。

表1 日最高気温34~35℃の平日の東京電力管内における電力需要 [1] と気温(東京) [3]

図3 東京電力管内における夏期の1日の電力需要 [1] の推移(平日)の比較


この図からは、 特に日中の10時台から18時台で電力需要の減少幅が大きく、900~1,000万kW程度であったことが分かる 。2011年7月1日から9月9日に実施された電気事業法に基づく電力使用制限では、大口需要家(契約電力500 kW以上)に対して、平日の9時から20時の時間帯での電力使用の昨年比15%削減が求められた [4, 5] 。このことは、電力需要の減少幅が大きかった時間帯と整合的である。

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中谷 隼

  • 東京大学大学院工学系研究科 都市工学専攻 助教