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第3回 現代病理研究会('07年度)

October 29, 2007

10月24日開催の第3回現代病理研究会は、昨今問題になっている日本の自殺者の多さ(※)について、ゲストに長谷川眞理子氏(総合研究大学院大学教授)と首藤健治氏(前厚生労働省大臣官房統計情報部)を迎え議論を行いました。(※年間自殺者は9年連続3万人超、自殺死亡率は米国の約2倍、英国の約3倍)

はじめに、関連情報として殺人と自殺について基本的なデータと定説を確認したあと、首藤氏より「日本の自殺に関する統計について」と題して、厚生労働省の人口動態統計調査の最新データから発表頂きました。

そして、首藤氏の発表に基づき、長谷川眞理子氏を中心に、とくに以下のような点について議論を行いました。

  • 「総死亡率及び自殺死亡率の年次推移」のデータを見ると、1950年代以降、日本の自殺率は1950年代半ばと1980年代半ばの2つの時期にピークがあり、現在の高自殺率は第3のピークと言える。
  • 50年代、80年代はいずれも、おしなべて好景気の時期に自殺率が上昇し、経済が悪い時期に下降しているように見える。
  • 現在の自殺問題の解明のためには、この過去の2つのピークにおいて、何が自殺率を上昇させ、また何が下降させる要因となったのかを、解明する必要がある。
  • 現在、自殺率がとくに高いのは50代の男性。彼らが20代の頃、日本の殺人率は現在より高かった。殺人(他殺)と自殺の相関関係は一般に日本では認められないというが、この世代の殺人率・自殺率の関係の分析は必要なのではないか。
  • 過去の自殺率の上昇、高止まり、下降はおおよそ5年周期で起こっているようだ。そこから推測すると、現在の自殺率の高止まりも、そろそろ下降し始めるのではないか。
  • 自殺率には、自殺という行為に対する社会的評価や容認度も影響しているのではないか。日本は(かつての切腹や引責自殺に見られるように)自殺に対する罪や恥の意識が低く、社会的容認度が高いのではないか。その意味で、自殺と文化・宗教の関係についての詳しい分析も必要だろう。


こうした議論の結果、本研究会では、

  • 自殺は「現代社会の病理」ではなく、むしろ、文化、宗教、社会規範との関連性が高い。
  • 現代における「日本人の死に方」をより深く解明するためにも、厳密な自殺のデータ分析と研究が必要だ。


との結論に至りました。今後、本研究会では、(他のテーマと平行して)自殺に関する統計データを継続して収集・分析していく予定です。

(左手前から右回りで、安田喜憲、米本昌平、首藤健治、長谷川眞理子、松井孝典の各氏)

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